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【題未定】県人寮の話題で思い出す大学時代の女傑の話【エッセイ】

 県人寮の半数が男子のみを対象としていることへの批判の声が上がっているという。男子のみを受け入れる施設が、公費の援助を受けて運営されているということへの批判は、現代社会においては至極当然のことのようにも思われる。

 そもそも県人寮とはどんな施設だろうか。Wikipediaによれば『その道府県の出身者限定の学生寮。その都道府県の育英会が運営・管理している場合が多い。「県民寮」ともいう。』とのことだ。要は県民限定で主に首都圏に進学する若者に住居を安価で提供する施設、ということになるだろう。

 こうした施設に女子が入ることができない、ということは一見すると差別的待遇であるように見える。首都圏住民からすれば、地方の男女差別、女子は進学する必要がない、という意識がこうした施設の運営に現れていると受け止める向きもあるのかもしれない。

 しかし実態はそうでもないようだ。おそらく、かつては男子のみを対象とした施設であったため、設備その他で女子用のものを準備できないということが女子を受け入れられない大きな理由ということだ。仮に個室であっても、浴室、トイレなどは共同であることを考えると女子用に改築する費用の捻出は難しいのだろう。ゾーニングなども考えると、入居者が一定数見込めなければ、改築する余力は見込めないはずだ。

 この手の共同住居の利用者は減少の傾向にある。プライバシーを重視する現代の若者の中でこの手の住居を好むものは少数派だろう。逆に共同生活を好む場合はシェアハウスなどの選択肢もあり、そちらの方がより濃密な関係性を構築することができるだろう。加えて女子の場合、親の希望でドーミーなど民間企業の運営する女子寮に入居するケースも多い。こうした寮は設備も整っていて築浅であったり改修が一定期間ごとに行われておりニーズとマッチしているようだ。どう考えても県人寮に住みたいと思う学生が今後増える見込みは少ないだろう。

 事実、佐賀県の県人寮、久敬社はもとももとは佐賀県唐津市の出身者を対象にしていた寮だったが、2010年以降は出身地に関わらず受け入れをしているという。県民だけで募集枠が満たされているならば、こうした対応を行うこともないだろう。

 私自身は大学時代も地元の大学に実家から通っていたこともあり、寮生活の経験はない。しかし仲の良い友人は大学寮で生活していた。何度かその部屋を訪れたことがあるが、風呂、トイレだけでなくキッチンも共同。個室ではあるが誰彼訪ねてきてプライバシーという概念とは程遠い環境だった。挙句に旧制高校時代からの伝統で、寮祭では赤いふんどし一丁で市街地から走って帰るというしきたりもあって、決して万人受けする環境ではなかった。

 ちなみにその友人はその後、下宿へと住まいを移す。そこは一軒家を改築し、それぞれの部屋に下宿人が一人ずつ住むという場所だった。驚くべきはそこには女性の下宿人もいたということだ。聞くところによると、風呂やトイレは共同だが使用中の札を掛ける習慣となっているため問題ない、とのことではあったが、その方の女傑ぶりには感心したものだった。

 仮に県人寮を完全に男女分け隔てなく入居可、ということになれば当然ながら大がかりな改築の費用が捻出できない施設が多数発生するだろう。そうした場合、最低限の男女施設の改築だけでどの程度の人達が入居を希望するだろうか。件の女傑さながらでなければ中々に難しいのではないだろうかと思うのだ。

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