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生徒より先に帰る教員

私の勤務校では「夕課外」という正課の授業とは別に、放課後に授業を行っています。

「夕課外」は16時半~17時半で実施されるため、16時半までを勤務時間とする職員の時間外に相当します。

もちろん、この時間の授業には手当がつくため、自分の授業がある日は「残業代」がつくことになります。

しかし、自分の担任クラスの「夕課外」の授業はあるが、自分の授業は無い、という日があります。
(あるいは、教科によっては「夕課外」の授業が設定されていないものもある)

「夕課外」後の帰りのホームルーム

数年前までは、担任の教員は自クラスの夕課外が終わった17時半に帰りのホームルームを行っていました。

その時に、自分の「夕課外」の授業がない場合、勤務時間外であるのに手当もつかず残ってホームルームの時間を待っていました。

もちろん、やるべき仕事自体は存在するため、決して無駄な時間にはなっていませんでしたが、そうしたコンプライアンス違反が半ば強制的に行われていました。

しかも、こうした教員界隈の慣習の多くは、管理職の命令ではなく、職員同士の申し合わせとして行っていました。

生徒より早く帰ることの罪悪感

かつては生徒より早く帰ることに罪悪感を感じていました。

学生時代の塾講師の経験からも、生徒が帰り着く時間までは電話対応ができるように待機する、という習慣が染みついていたのもあるのかもしれません。

また、自クラスの生徒や保護者からの問い合わせや対応を誰かに任せるということに対する申し訳なさや、自クラスのことは自分で対応したいという無駄なプライドがそうした罪悪感の原因だったかもしれません。

しかし、子供が生まれて自分の時間が家族の共有財産であることを意識するようになってから変化しました。

帰りのホームルームの時間を繰り上げた

時を同じくして、私の職場では同じ時期に子育てに入った同僚が複数いたこともあり、帰りのホームルームを繰り上げ、「夕課外」の前に行うことを提案し、実行することにしました。

基本的にはこの提案に反対する同僚もいましたが、労働法規上はその時間に行うのがむしろ正しいために、決定したのが数年前です。

現在も16時半に帰りのホームルームを行い、早く帰れる日は可能な限り早く帰って家族との時間を増やすようにしています。

教員を縛っている多くは法律でも管理職でもない

教員の世界ではこうした自縄自縛に陥っているケースが多いように思います。

時間外の面談や部活動など、業務外や時間外のものを行う法的義務は存在しません。

実際には、自分たちの職業規範や罪悪感といった業務とは離れたところで無意識に縛られているだけなのです。

これは私のような私学勤務の人間だけでなく、公立学校の教員でも同様です。

かつてはそうした教員の働き方が推奨されていましたし、その引き換えに社会的地位を保証されていました。

しかし、時代は変わり教員もまた多くの職業の一つでしかなくなりました。

聖職者ではなく、一労働者でしかないのです。

だから、今日も私は先に帰るのです。



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