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相模国準八十八か所 その3 湘南に残された最後の酒蔵

江戸時代の文政2年から4年、鵠沼村(現藤沢市鵠沼海岸)の浅場太郎右衛門親子が発起して、四国八十八か所に倣い横浜市(1か所)、鎌倉市、藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町に弘法大師像を設置し巡礼地としました

インターネットで調べてみると、2009年に「鵠沼を語る会」の皆さんが詳細に調査した記録(以下「調査記録」)が見つかりました。四国の八十八か所巡りは遠くて行くのがなかなか大変ですが、神奈川県内にあるこの八十八か所ならばと、私もこの調査記録を参考に訪ねてみることにしました。

noteに掲載する第4回目は、茅ヶ崎市北部の3か所の寺院等を訪問、ただし、その前に「湘南に残された最後の酒蔵」で腹ごしらえです。2021年4月

このnoteを書いている人:
おやちょう
日本の歴史・文化・自然・世界遺産、国宝、(続)100名城、日本遺産、建築、町並み、旧街道、映画、日本酒などに興味があります。京都/奈良/横浜/鎌倉/江の島などなど…。

■湘南に残された最後の酒蔵 熊澤酒造

今回はまず茅ヶ崎駅で相模線に乗り換えます。相模線は神奈川県を代表するローカル線で、電化はされているもの単線であり、ドア開閉ボタンも設置されていてのんびりとした雰囲気を味わえる路線です。

茅ヶ崎駅の相模線ホームの先には、茅ヶ崎の名所である烏帽子岩のレプリカもあります。

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茅ヶ崎から二つ目の駅、香川で下車します。駅前のサクラは散り始めていますがそれでもまだ花びらをたくさんつけています。

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駅を出たらすぐに踏切を渡り、そのまま道なりに歩きます。やがて畑の前に熊澤酒造の案内看板が現れます。ここを右に曲がって暫く歩くと熊澤酒造に到着します。

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熊澤酒造は明治5年にこの地に創業した「湘南に残された、ただひとつの酒蔵」(同社公式サイトより)で、「天青」や「かっぱシリーズ」などの日本酒や「湘南ビール」などを醸造する蔵元です。

敷地内には、「蔵元料理 天青」やカフェなどの設備があり、この日も大勢のお客さんで賑わっていました。私は迷わずイタリアンレストラ「MOKICHI TRATTORIA」に入りました。

イタリアンレストランですが、入口はまるで神社か寺院のような雰囲気です。

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最初にサラダとビールを頼み、続いてかっぱ伝説にちなんだ日本酒を注文、昼飲みを堪能しました。

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お腹を満たしたところで店外にでます。敷地内は写真撮影の題材には事欠かず、建物その他いろいろなものをカメラに収めました。

■弘法大師像を求めて住宅街を歩く

熊澤酒造を出たら、住宅街を歩きます。途中、撮影ポイントはこれといってありません。ただひたする地図を頼りに住宅街を歩き、やがて玄珊寺に到着します。

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ここは相模国準八十八か所の第55番所であり、目指す弘法大師像は境内に入ってすぐ左手にあります。

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最初に目に飛び込んできたのは小さなお堂で、弘法大師像はこのお堂の中にあるのかと思いきやそうではなく、その隣に露座で鎮座しています。

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お堂の中にあるのはお姫子育て地蔵といい、小さな案内板に由来が書いてありました。

お姫子育て地蔵(現地案内板より)
元文3年(1738年)当時の領主、本間家十代季元忠左衛門が、早世した娘の菩提を弔うために造立したもので、当時よりお姫地蔵と呼ばれていました。いつしか子供を守る子育て地蔵としても親しまれ、現在に至っております。

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玄珊寺を出たらまたも住宅街を歩きます。途中、教会などもありましたがほとんどが住宅街、これといった撮影ポイントもなく仕方がないので自分の影を撮影して先に進みます(笑)。

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やがて成就院に到着しました。最初に迎えてくれたのは2体の象の像、本堂横にはわんこがお昼寝中です。

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第35番所となるこのお寺の弘法大師像は「南無一言大師」と書かれたのぼりの一角の小さなお堂の中に鎮座しています。

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このお寺は境内のあちらこちらにたくさんの花が植えられています。本堂脇のシダレザクラもやや盛りを過ぎたもののまだまだ見頃でした。

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■大岡越前ゆかりの寺 浄見寺

成就院を出たら、トンネルをくぐり、ゴルフ場の間の道を歩きます。成就院側から歩くとゆるやかな上り坂となっていて、運動のために歩いている地元の方も多く見られます。

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ゴルフ場の間の道を抜けたら右に曲がると、まずは満開のシバザクラが目に入ります。

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その先の左手に古民家が見えてきました。これは茅ヶ崎市郷土資料館の旧和田家住宅。元茅ヶ崎萩園にあったものを移築保存し一般公開していますが、開場時刻が午前9時30分から午後2時30分と短く、私が訪れた時は既に午後4時近くになっていたため内部に入ることはできませんでした。

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すぐ近くにある旧三橋家住宅は、2021年4月現在整備保存のために休館中です。

旧和田家向かいにある浄見寺は大岡越前をはじめとする大岡家の菩提寺で、初代忠勝から13代まで一族の墓碑58基が並んでいます。この日はお寺の方が不在のため墓所には入れず、柵の外からの撮影となりました。

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浄見寺を出たら、大岡越前通りを歩いて脇道へ入ります。寺院や道祖神などもあるので恐らく古くからある道なのでしょう。

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間もなく道路脇にお堂が現れます。堂内ではお地蔵さまと一緒に弘法大師像が仲良く並んでいます

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元は茅ヶ崎市堤地区にあった正覚院のものだったが現在はそのお寺は廃寺となり、この場所で個人の方が管理をされています。

■最後に

茅ヶ崎というと、加山雄三氏やサザンの桑田佳祐氏、烏帽子岩といったところから海のイメージが強いですが、北部の丘陵地帯には里山風景と豊かな自然が残されています。おいしいお酒と歴史に彩られたこの地区をのんびり歩いてみてはいかがでしょうか。

さて、相模線の香川駅に戻るにはかなり遠いところまで来ました。本日最後の弘法大師像を見学した後は、堤坂下バス停からバスに乗り茅ヶ崎駅に戻りました。

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訪問済みの番所
前回まで:1番、12番、17番、20番、23番、29番、35番、40番、43番、50番、58番、60番、63番、74番
今回追加:20番、35番、55番
「鵠沼を語る会」による調査記録↓(PDF)


ありがとうございます!ホッピーを買おうと思います。