見出し画像

【コラム】調剤薬局を上手に経営するための資金繰りとは?ポイントや注意点を解説!

コンビニエンスストアより多いといわれる調剤薬局は、2022年度の診療報酬改定で調剤報酬の見直しや各制度の変更もあり、経営が厳しくなっています。

また、今や従来の処方された薬を受け取る役割から、さまざまなサポートを得られる「健康サポート薬局」へと転換期を迎えており、経営の見直しが必要です。

今回は、そんな調剤薬局を上手に経営するための資金繰りのポイントや注意点について解説します。

1.調剤薬局の資金繰りの基本

そもそも、調剤薬局とは医療業界の形態の1つで、最も大きな特徴は、医薬分業により医師の処方箋をもとに調剤して薬を患者に渡すという業態にあります。

最近は、調剤併設ドラッグストアチェーンも存在しており、その多くは複数の店舗を運営する小中規模の調剤薬局です。

しかし、高額な医療品を取り扱うため資金力が大きく、多額の運転資金を必要とします。

まずは、調剤薬局の資金繰りの基本をしっかり押さえましょう。

1-1. 調剤薬局の資金繰りとは

調剤薬局の資金繰りは、クレジットカード決済の導入によって、これまでの患者や顧客との現金取引から変わりつつあります。

これは、大手ドラッグストアチェーンを見習い、競合関係にある比較的規模の小さい調剤薬局も導入せざるを得なくなったということでしょう。

クレジットカード決済により、患者や顧客が便利性を得られた一方、調剤薬局側は決済~入金までに約2週間~1ヶ月のタイムラグを強いられています。

特に、高額な医療品でクレジットカード決済の多い調剤薬局は、「常に手元に現金が不足する」状態が続くため、資金繰りは悪化するでしょう。

さらに、高齢化社会の進むなか、国や政府には医療費を削減する動きもあるようです。

実際、2年間隔で実施される調剤報酬改定では、薬局の調剤基本料や技術料などの報酬が減額傾向にあり、経営の悪化で閉鎖や売却を余儀なくされる薬局も少なくありません。

ただでさえ手元に現金を保持できない状況にあるなか、取り巻く環境も調剤薬局の資金繰りを厳しくしているのです。

1-2. 資金繰りの重要性とその影響

このような状況で経営を安定させるには、経営者が、資金繰りの重要性とその影響をしっかり理解する必要があります。

一般に、日本の健康保険制度では、調剤薬局で処方された薬の自己負担の割合は、3割が原則です。

残りの7割は、調剤薬局が調剤報酬明細書(レセプト)を作成・請求し、後で国から受け取る仕組みになっています。

つまり、毎月、調剤薬局が作成した前月分の調剤報酬明細書を実際に調剤報酬として受け取れるのは、調剤業務を提供した2ヶ月後ということです。

調剤薬局の経営者は、クレジットカード決済とレセプトにおけるタイムラグが資金繰り計画に及ぼす影響を考慮して策定する必要があります。

2.資金繰りの計画と管理

調剤薬局が安定した経営を維持するためには、資金繰りの計画と管理が大切です。

押さえるべきポイントは、大きく分けて2つあります。

2-1. 効果的な資金計画の策定

1つは、効果的は資金計画の策定です。

調剤薬局を運営するには、毎月、次の5項目の費用がかかります。

1. 店舗賃貸料
2. 設備費(消耗品費・通信機器・レジ等)
3. 医療品購入費(医薬品・薬袋等)
4. 固定費(光熱費・リース代・人件費等)
5. 営業諸経費(ガソリン代・交通費・通信費・広告宣伝費等)

ここで忘れてはならないのが、クレジットカード決済およびレセプト(調剤報酬請求書)作成後の入金までにかかる1~2ヶ月程度のタイムラグです。

特に、自立支援や特定疾患など公費の手続が多い場合は、調剤報酬の入金までのタイムラグがさらに長くなる傾向にあるため、注意しましょう。

この2つのタイムラグを考慮に入れて店舗レベルでキャッシュフローを意識しなければ、損益計算書上は黒字であるにもかかわらず、支出が収入を上回る「黒字倒産」に陥ります。

そこで、効果的な資金計画を策定するには、調剤報酬の約50~80%を占める薬剤料に着目するとよいでしょう。

具体的には、「月間処方薬材料(薬価ベース)」と「月間薬剤購入金額」の2つの流れを押さえ、「月間薬剤購入金額」が「月間処方薬剤料」を過度に超過しないよう調整します。

このとき、処方薬材料として入金されるキャッシュから薬剤を購入することがポイントです。

開店直後や近隣に新しく病院ができた場合は、一時的に「月間薬剤購入金額」が「月間処方薬材料」の2~3倍になることはあるかもしれません。

しかし、そのようなレアケースを除き、月間薬剤購入金額を月間処方薬材料(薬価ベース)の1.1~1.3倍程度に抑えておくと安心です。

資金ショートを回避するためにも、入金までのタイムラグを考慮に入れて効果的な資金計画を策定しましょう。

2-2. 日常の資金管理とキャッシュフローの最適化

2つ目のポイントは、日常の資金管理とキャッシュフローの最適化です。

厚生労働省の実施した、医薬分業による薬物療法の質的向上や服薬情報の一元化を目的とする「患者のための薬局ビジョン」では、調剤薬局業界のIT投資が推奨されています。

しかし、患者や顧客の情報を管理するにはセキュリティ対策を強化する必要もあり、より高機能なシステムの導入などの設備投資も検討すべきでしょう。

最近は、キャッシュフローを含め、レセプト・患者の入金情報などを一括管理できるシステムも市場に出回っています。

調剤薬局業界のIT化推奨の流れに沿って自社に適したツールを選び、システム化によって資金管理やキャッシュフローの作業効率を高めましょう。

3.資金調達の方法と選択

一般に、返済不要な自己資本比率の安定した経営の指標は30%とされており、キャッシュフローを担保するには、最低3~6ヶ月の運転資金が必要です。

従って、十分な運転資金が手元にあれば別ですが、そうでない場合は資金を調達しなければなりません。

調剤薬局を上手に経営するには、業界ならではの資金の流れを把握し、自社に見合った資金の調達方法を選択することが重要です。

3-1. 様々な資金調達方法とその特徴

資金調達には、いくつかの方法があります。

まずは、6つの資金調達の種類と特徴を理解し、どれを選択すべきか検討しましょう。

1. 日本政策金融公庫
薬局以外でも活用されており、開業の場合は、政府系の金融機関による「新創業融資制度」を活用すると、銀行以上の低金利での借入が可能です。

要件は、開業時に資金総額の10%の自己資金があることと、適切な事業計画書の提出の2点になります。

事業計画書をきちんと策定し、プレゼンテーションを成功させれば、少ない自己資金で最高2,000万円までの融資が可能です。

ただし、実際には、資金総額の30%の自己資金を保有しているほうが望ましいとされています。

2. 信用保証協会
薬局以外でも、開業や独立時に利用されています。

申請時は、担当者がオーナーの事業を譲渡する「薬局事業承継」などをよく知らない場合もあるため、プレゼン資料を事前に準備したほうが安全です。

「1」より審査期間が長いため、開業までの時間に余裕をもって相談しましょう。

3. 銀行ほか民間の金融機関
判断基準となる信用や実績がないため、開業時の審査は厳しい傾向です。

特に、調剤薬局業界の利益率の低下傾向は、銀行では返済減資の減少とみなされています。

コロナ関連の補助金を含めても利益率が横ばいの現状では、融資を受けづらいでしょう。

4. ファクタリング
ファクタリング業者と債権譲渡契約を締結し、調剤薬局の診療報酬・調剤報酬を支払期日前に買い取ってもらうサービスで、政府にも推奨されています。

審査も通りやすく速やかに現金化できるため、急な資金の不足時に便利です。

回収サイトを短縮して財務状況の改善を図り、資金繰りも安定させて金融機関からの融資につなげることもできるでしょう。

ただし、1~2年ほどの長期契約が必須で、資金繰りが悪化している場合は、審査に1~2週間を要することもあります。

5. ローン・ノンバンク
ローンは金利や手数料率が高いため、無担保ローンではなく不動産や調剤報酬を担保にするサービスを活用すべきです。また、金利が安いほど、審査は厳しくなります。

ノンバンクの場合は、金利が低くても、諸費用の上乗せや繰上返済で違約金が発生するケースもありますので、契約時は書類を事前に確認しましょう。

6. 親族などからの借入
関係性によっては、無利子ですぐに借り入れられます。

しかし、経営が悪化して返済できなくなった場合に絶縁となる可能性もあり、注意が必要です。

3-2. 調剤薬局に適した資金調達の選択基準

調剤薬局の調剤報酬は入金までに時間がかかるため、資金の調達方法を選択する際はスピードを優先すべきでしょう。

というのも、そもそも資金調達の目的は、不足分を調達して資金繰りショートを回避することにあるからです。

自社の経営状態をふまえ、先の6つから最適な方法を選択しましょう。

4.調剤薬局の経営を成功させるためには

調剤薬局の経営を成功させるには、売上に加えて運営費の削減を図りながら利益率を高めなければなりません。

特に、押さえるべきポイントは、次の2つです。

4-1. 薬価差益を増やすよう努める

まずは、薬価差益を増やすよう努めましょう。

薬価差益とは、薬価と実際に薬品を購入した際の仕入れ価格との差額のことです。

昨今は、薬価の改定で薬価は減少傾向にあり、大きな利益を得られていた30年前とは異なり、ほとんど差益を見込めません。

また、個人経営を含む小規模の調剤薬局は仕入れの数が少ないため、医薬品卸業者との交渉が容易ではありません。

そこで、規模が小さい調剤薬局は、次の2つのサービスを活用するよいでしょう。

1. 共同購入
連携・組織化するボランタリーチェーンに加盟すれば、複数の薬局の同時発注で大量の薬を購入して仕入れ価格を抑制できます。

なかには、ネットワークを活用し、自社のデッドストックを取引できるボランタリーチェーンもあるようです。

ただし、加盟料や月会費が発生する場合もあるため、加盟前に必ず確認しましょう。

2. 医薬品購入交渉代行
別企業が調剤薬局と卸業者との間に入り、医薬品の価格交渉を代行するサービスです。

一般的には、交渉が成立した時点で仲介企業に一定のマージンを支払います。

この2つの活用ポイントは、卸業者との関係性の維持に加え、発注システムの指定や月ごとに発生するコストを確認して利益を確実に出せるよう調整することです。

これまでの発注方法と並行しながらコストパフォーマンスのよいサービスを活用し、財務にかかる負担を減らしましょう。

4-2. 販促を強化する

2つ目のポイントは、販促の強化です。

最近は、かかりつけ薬局の推進もあり、門前薬局だけでなく調剤薬局の利用も多様化しています。

今後は、特定の医療機関からの処方箋に頼らず、地域密着型の調剤薬局を目指して販促を強化すべきでしょう。

たとえば、地域住民を対象とする無料の医療・健康イベントの実施、未就学児・小学生向けの薬局体験プログラムの主催、血圧・肌年齢・脳年齢の計測会などが考えられます。

薬局体験は、子供たちに薬剤師や薬局への興味を促すだけでなく、保護者の仕事やサービス内容に対する理解を深めることで利用頻度の向上を期待できるでしょう。

また、計測会の流れから、薬やサプリメントの飲み合わせや運動・食生活のカウンセリングなどを実施すれば、利用者の調剤薬局や薬剤師を活用する新たな気付きにもつながります。

5. まとめ

調剤薬局は、一般企業と業態が異なるため、資金計画を策定する際は入金までのタイムラグに留意する必要があります。

また、一時的な資金ショートによって黒字倒産にならないよう、薬価差益の向上や販促の強化によって利益率を高め、資金繰りやキャッシュフローの効率化を図ることも重要です。

資金繰りが悪化している場合は、自社に適した資金の調達方法を選択し、経営を改善していきましょう。


⭐️公式LINE登録で豪華プレゼント⭐️
Monolith Partners (monolith-partners.fun)
特典1:節税セミナー動画6本セット
特典2:市ノ澤監修【節税マニュアル】
特典3:銀行員が泣いて喜ぶ【資金繰表シート】

▼登録はこちらから▼
https://line.me/R/ti/p/@854agwjl

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?