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140字で唸らせる「超文章塾」【#イベントレポ】

こんにちは、ライターの豊福です。今回は編集者・作家の川崎昌平さん、文筆家・書評家の三宅香帆さんによる「超文章塾」に参加してきました。活字に魅せられ、その奥深さと魔力を知り尽くしたおふたりによる解説は、学びが多く、メモを取る手が止まりませんでした! 

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良い文章を書くコツ①「たくさん本を読む」

良い文章を書くには「とにかくたくさん本を読め!」というおふたり。その言葉通り、おふたりの読書量は圧倒的で、だからこそ「この本面白い!」という言葉には説得力があふれています。後日、オススメされていた本を書店で見つけて、思わず購入してしまいました。

▷三宅さん・川崎さんの本棚写真を公開!

超がつくほど読書家なおふたりの本棚を覗き見。「人格がわかるのは本棚、って言いますからね」と恥ずかしがりつつも、リアルな本棚写真を公開してくださいました。
・ 三宅さんの本棚
大好きだというジェーン・オースティンの『高慢と偏見』をはじめ、海外文学、新書、批評など様々なジャンルが並ぶ本棚。大学で文学を研究していたため、その時に集めた本が多いそうです。
「これは“生きてる本棚”ですね」と川崎さん。生きてる=頻繁に本が出し入れされている本棚は、見てすぐにわかるのだそうです。
川崎さんの指摘通り、三宅さんは上京の際にかなりの量を処分するなどして、厳選した本だけを持ってきたんだそう! 圧倒的読書量に裏付けされた選書だけに、魅力的な本がズラリと並んでいるのがわかります。ご自宅にお邪魔してもっとじっくり眺めていたくなるほどでした。
中でも一番の自慢は、谷川俊太郎さんの詩集。神保町の古本屋さんで購入したのだそうです。普段から古本屋さんで本を買うことが多いという三宅さん。「古本まつりは散財してしまうので危険です(笑)」と照れ笑いを浮かべていました。

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・ 川崎さんの本棚
一方の川崎さんの本棚も圧巻です。三宅さんの蔵書と被っていたのは竹宮惠子さんの『少年の名はジルベール』。「良い本ですよね。朝ドラになってほしい!」と盛り上がります。インタビュー集『ヒッチコック映画術』から漫画『裸一貫! つづ井さん』まで、ジャンルは多岐にわたります。
「古典と今の本が一緒に並んでいるのが良いですね」と興奮気味に話す三宅さん。

▷「書く」モチベーションを保ち続けられるワケ

川崎さんは執筆活動だけでなく、編集や漫画、大学での講義など様々な活動をされています。多忙な日々の中でも「書き続ける」秘訣はなんなのでしょうか。 

・その日にできる仕事をする
残業はせず、毎晩2時間は絶対に書くことに集中しているという川崎さん。「色々なものを書くので『ジャンルが定まってない』なんて言われることもあるけど、逆にいうとどんなジャンルでも楽しんで書けるんです」
疲れている日もあるけど、そういう日は多少疲れていてもできる仕事(デザインなど)をするそうです。これは多岐にわたる仕事をしている川崎さんだからこそですね。

・ 書くアイデアは書店で得る
川崎さんは書店に行くと、編集者目線で本を見るのだそうです。「面白い企画や丁寧に作られた本を見ると『負けていられないな』とやる気が出ます。企画から執筆まで全てに関わることで、どんどん本を好きになれる。本は未来永劫好き」と熱く語る川崎さん。本へのまっすぐな愛を感じて、聞いている私も熱くなります! 

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良い文章を書くコツ②「本を愛する」

良い文章を書こうとしすぎると、テクニックや型にとらわれてしまいがちです。しかし、「良い文章」の形は1つではありません。本を愛するがゆえのこだわりや独自性は、文章を書く上でとても大切にしたいこと。印象的かつわかりやすい文章を目指して、最初は好きな文章の真似から始めてみましょう。
おふたりだけでなく、受講者の皆さんの本への愛も爆発した添削タイム。その模様をお届けします。

▷受講者の課題を徹底添削! 

今回の講座では、課題として「面白かった本・漫画・雑誌についての140字レビュー」を受講生全員に義務づけていました。なんとその全てを三宅さんと川崎さんが添削してくれるという、贅沢すぎる企画です! 
140字レビューは私も挑戦したのですが、思った以上に難しい……。一言で表現するには少し長い、でもたくさんの情報は載せられない、という絶妙な文字数なのです。だからこそ、テクニック次第で劇的に良い文章になるのだとわかりました。特に興味深かったレビューと添削を抜粋してご紹介します。

・「紹介」と「レビュー」は違う
大友克洋『AKIRA』のレビューに対する添削。有名な作品だからこそ、内容の紹介よりも、個人の感想や熱い思いがききたくなります。
「紹介」はググればわかるフラットな説明。それに対して「レビュー」は自分にしか書けないことです。140字の中で、いかに「熱い思い」を落とし込むかが、人の心を動かす文章のポイントです。

・別トピックは1文にまとめるな! 
山田ヒツジ『デキる猫は今日も憂鬱』のレビュー。
添削前↓
正しくは彼氏ではなく「飼い猫」なのだけど、そんな彼との日々が綴られたショート漫画は、癒やしをくれる。
添削後↓
正しくは彼氏ではなく「飼い猫」なのだけど! そんな猫、いや、彼との日々が綴られたショート漫画。癒やされる。

実はこの文章、「彼氏ではなく飼い猫」という種明かしと、「癒される」という感想とでトピックが分かれています。添削前では2つを1文で書いていますが、添削後ではトピックごとに文を区切ったことで、抜群に読みやすくなっています! 

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・「」や句読点で注目やテンポを作る
板垣巴留『BEASTERS』のレビュー。
添削前↓
学園内で羊の生徒が食殺される。(中略)青春群像劇が今はじまる!
添削後↓
学園内で羊の生徒が「食殺」される。(中略)青春群像劇が、いま、はじまる!

「」と読点を入れただけなのに、すごく読みやすくなっています。「食殺」など普段見かけない単語は、突然出てくると頭に入って来づらいです。「」でワンクッション置くことで、一気に読みやすく、注目を集めることができます。
「〜今はじまる!」というのは、インパクトがあるようで意外とよくある文章。そこで読点でテンポをとることで、流し読みされなくなっています。

・一番読んでほしい文章を先頭に!/「ムダを削る」と「あえて入れる」
鶴谷香央理『メタモルフォーゼの縁側』のレビュー。
添削前↓
おばあちゃんミーツBL!? 初めてできたオタ友は老婦人でした。多感女子高生と未亡老婦人の交流がふたりの世界を変えていく! 趣味が広がる期待や相手に踏み込む緊張が愛おしい。
添削後↓
はじめてできたオタ友は老婦人でした。BLに出会ったおばあちゃんと、BL好きの女子高生の交流が、二人を変えていく。趣味が広がる期待や、相手に踏み込む緊張が、なんとも愛おしい。

140字だからこそ、文の順番は重要。短い文章は再読してもらえないので、わかりやすくて興味を引ける文章を先頭に持ってきましょう。
前半であらすじ紹介が続き、最後の文で「愛おしい」と作者の感想が入っているこの文章。実は文中で視点が変わると読みづらくなるので、「なんとも」「やっぱり」などワンクッション置くと、一気にわかりやすくなります。

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他にもたくさんのレビューがあり、どの添削もすごく勉強になりました。140字でもこんなに工夫できるなんて、文章の世界は奥が深すぎます……。

▷「書く」ときのお悩みQ&A

受講者の皆さんの、文章を書く上での様々な悩みに、おふたりがズバリ答えてくださいました。
Q.
炎上するのが怖くて、結局無難な文章になってしまいます。どんな塩梅で書けば良いでしょうか? 
A.
三宅さん:本当に思っていることなら、過激でも書いていいのではないかと思います。不思議とそういう文章って炎上しない。「ウケよう」とか、何か他の意図が入ると炎上する気がします。自分が本当にいいと思う文章を書くのが、一番炎上しないと思います。

Q.
「伝えたい!」という熱い愛が、自分にはあまりありません。発信にはやっぱりそういう気持ちが必要でしょうか? 
A.
三宅さん:私がTwitterやブログを書くときは「しばらく会っていない友達に話す距離感」で書いています。返信不要のLINEみたいなもの。他人を想像すると発信しやすくなるかもしれません。
川崎さん:それすごくいいですね。そんなに気負わずに、手紙みたいな気持ちになれるといいですね。

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Q.
つい文章が長くなってしまいます。どうすれば良いでしょうか? 
A.
川崎さん:僕の場合は、漢字に置き換えられるところは置き換えます。あとは「てにをは」を削ったり……。
三宅さん:書いてから一晩明けて読み返すと「ここいらないな」というのがわかったりします。
川崎さん:一発で短く書きたいなら「まだ書きたいことはあるけど今回は胸に秘めておこう」というふうに、「言い残し」を作りながら書くと良いですよ。


超文章塾の内容は以上です。おふたりの文章のテクニックや考え方、本当に勉強になることばかりでした。このレポートを書く最中も意識してみたのですが、すぐに実践するのは難しいですね……。今回の学びを活かして、とにかく本を読み、体得していきたいものです。

川崎さん、三宅さん、有意義な講義を本当にありがとうございました!

カルチャーライブ!今後のお知らせ

大好評につき、「超文章塾」の第二回を実施決定です!
2020年3月25日(水)19:30〜21:00
(※3/27から変更となりました)
詳細はカルチャーライブ!のHP、SNS(TwitterFacebookInstagram)にてご案内いたします。

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【亀山郁夫先生と『カラマーゾフの兄弟』「100分de名著」放送記念の読書会】
●日時:2020年2月28日(金)19:30~21:30
●受講料:2000円+税
●詳細・お申し込みはこちら

2月の読書会は、世界文学史上の最高傑作『カラマーゾフの兄弟』。
この物語を読み解くために、ドストエフスキー研究の第一人者で、NHK Eテレ「100分de 名著」『カラマーゾフの兄弟』回の講師である、名古屋外国語大学学長の亀山郁夫先生をゲストにお招きし、人生の根本的な問題を読書会を通して、みんなで考えます。
亀山先生に加え、スペシャルゲストを予定しています。当日をお楽しみに!

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みなさまのご受講をお待ちしております。

最後に、川崎昌平さん、三宅香帆さん、参加してくださったみなさま、このレポートを読んでくださったみなさま、本当にありがとうございました!!

撮影・編集/小川利奈子 文/豊福未波
2019.12.27 作成

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