【ドイツサッカー】3季ぶりに全日程を消化できた2021/22シーズンを振り返る(U23編)
今季だけでなく昨季(2020/2021シーズン)の出来事も含めながら、色々なことがあったU23のシーズンを振り返る。
ドイツの5部リーグに所属しているU23では、去年の2020/2021シーズンから研修に近い形で指導スタッフとして帯同させてもらっていた。だが、ドイツ全土が2020年11月からロックダウンに入ったことで全く活動ができなくなり、結果的にシーズン自体が打ち切りになってしまったため、実質今シーズンが成人カテゴリーを担当する最初のシーズンのような感じだった。
幸いというか何というか、チーム始動からロックダウンまでの短い期間ではあったが、仕事や取り組みに関して監督とクラブが認めてくれて2021/2022シーズンからは正式にアシスタントコーチとして契約させてもらえることになった。
ロックダウン中に監督の退任が決定
2022年に入り引き続きコーチングスタッフは全員が残るということで話は進み、ロックダウンが解除されるのを待つ…という状況が続く。
暫くして練習再開の目途が立ちそうな状況になったので新シーズンの進め方について監督ともう1人のアシスタントコーチと自分の3人で打ち合わせをしたが、なんとその翌日に監督の退任が急遽決まってしまう。
我々コーチングスタッフと打ち合わせした直後に監督はクラブとミーティングを行ったそうなのだが、新シーズンのU23の練習日や活動時間と監督の家族との時間etc. の折り合いがつかないことが判明したらしく、“家族と過ごせる時間をもっと大切にしたい“という理由で監督はチームを離れることになった。
その3~4週間後、クラブから何の連絡・説明もないことに不満を募らせたアシスタントコーチから、「悪い。俺もクラブには残らないことにした」と電話をもらい、彼も離れることに。
結局監督とアシスタントコーチの2人がチームを去り、そのためロックダウン後の練習再開も状況的にできないということになって2020/2021シーズンは中途半端なまま終わってしまった。
監督もアシスタントコーチもすごく良い人で、この2人と来季も仕事がしたいと思っていたのもあり、個人的には非常に残念に感じている。
シーズン開幕、苦戦した前期
比較的若いが他のクラブからの評価も高く、理論家の監督とその相棒が新監督・新アシスタントコーチとして就任。
新監督の下、プレシーズン期間は質・量ともそれなりに手応えを感じられるものだったが、リーグ戦が開幕してからは全く結果が出ずに苦しんだ。
所属している5部リーグは18チーム中5チームが降格するというレギュレーションの中、我々も含めて恐らく残留争いをするであろうと思われる2つのクラブに敗れ、開幕4連敗。5試合目でようやく勝ち点3を獲得したがその後9月中旬に監督が体調を崩したため、暫くトレーニング及び試合には帯同できないと連絡を受けた。
2週間後に一度チームに復帰したが、体調が完全に快復していないため年内いっぱいは治療にあて、年明けからチームに合流することが発表された。
もう1人のアシスタントコーチと「俺たちで頑張っていかないと!」と話していたが、クラブ側としてもあまりに急な“監督不在“だったこともあり、特に我々に説明がないまま(恐らくドイツA級指導者ライセンスを保持しているという理由で)育成統括が監督代行を務めることが決まったのだが、元々の監督と別のクラブでもペアを組んできて、志向するサッカーも理解しているアシスタントコーチからしたら納得いかない部分も多々あったよう。直接口には出していなかったがモチベーション的な部分が下がってしまっているのが感じられた。
その後の試合は1勝4分7敗という散々な成績で冬季中断に入ることに。
監督退任と暫定監督としての経験
年が明けて監督は復帰したがもう1人のアシスタントコーチが中断期間中にチームを離れてしまったため、コーチングスタッフは2名で残りのシーズンを戦っていく事になった。
数回のトレーニングをこなし、年明け1発目にバイヤー・レバークーゼンU19との練習試合を行った2日後に監督から「ドクターストップがかかった。今シーズンは指導者としての活動はもうできないことになった…」という連絡をもらった。
復帰してからも監督の体調が万全な印象は一切なかったとはいえ、この短いスパンでの監督とアシスタントコーチの退任に関しては多少動揺があったのは否めないかな。
クラブとしてU23カテゴリーはA級ライセンス以上の監督を置くべきとの意向もあり、新監督が決まるまではまた育成統括が引き継ぐのかと思っていたが、クラブから「今新しい監督を探している。それまでどうする?監督が決まるまでの期間、お前が暫定的な監督として引き継いでくれるか?」と聞かれた。
単なる代行監督とはいえ、ドイツで成人カテゴリーの5部リーグのチームで監督の役割を担える経験は簡単にできるものではないと思い、二つ返事で承諾することに。
コーチングスタッフが自分以外いない状況なのでトレーニングから試合まで全て1人で対応、同時にU12の監督を務めていることもあって多少ハードだったが、選手も協力的に振舞ってくれたことでこなすことができた。
短い期間ではあったが、いい緊張感の中で新たな経験を積むことができたし、自分自身にとってプラスになったと思う。
ただ、全くいい流れに乗れなかった前期から何かを変えないといけないと感じつつも次の監督にスムーズにバトンを渡すことが必要なだけに、新しいシステムや戦い方を提示する訳にもいかず、「代行監督」としての業務と立場の難しさに触れた期間でもあった。
新監督就任とチームのリーグ残留決定
ケルン界隈の地域のB級ライセンス講師を務め、UEFAのプロコーチライセンスを持つ人が監督に就任した。
彼は積極的にユース・ブンデスリーガで戦うU19の選手を起用して新しい刺激をチームに与えたり、トレーニングでは大きめのピッチサイズでのゲーム形式を重要視し、“フルサイズのピッチに近い状況での空間認識“を養うことにまずは着手していたのが印象的。
3月に後期が開幕してからの5戦は3勝1分1敗とまずまずのスタート。その後は調子を崩し勝ち点を思うように積み上げることができず、勝ったり負けたりを繰り返すことに。
シーズンも終盤に向かい、残り4試合で残留圏のチームとは勝ち点10差という相当厳しい状況になった。
ライバルとなる2チームがともに勝ち点を落としてくれることを願うのと同時に、こちらも残りの上位勢との試合に全勝する必要があり、ハードルはなかなかに高い。
かなり難しい状況だったが、4-1、6-2、8-0で上位勢相手に3連勝し、残留争いをしている他のチームは勝ち点を拾えずに足踏み。最終節に望みを繋ぐことになった。
迎えた最終節では2位のチーム相手に決定的なシーンを何度も作られるが耐え抜く展開が続く。速報でライバルチームが両方とも0-2でリードされているという情報は入って来ていたが、こちらは0-0のままでは降格が決まる状況であるため何としても1点が欲しい。が、時間は刻一刻と過ぎていく。
攻撃的な選手を次々と投入し、迎えた89分。ゴール前でのルーズボールを途中出場の選手が頭で押し込んで、終了間際の土壇場で先制。
正直その瞬間のことはあまり覚えていない。
ただただ興奮して、選手・スタッフがピッチになだれ込んだことだけは覚えている。
そのまま試合は終わり、大逆転で5部リーグ残留が決まった。
本当に「いいもん見させてもらったわ」という感じ。これに尽きる。
苦しいスタートから様々なことがあった今季のU23だったが、貴重な経験をさせてもらった、印象深いシーズンになった。
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