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動物だらけの江戸の町へようこそ!

かわいい!おもしろい!ちょっとヘン!?
浮世絵に描かれた動物たちを1冊に大集結させたビジュアルブック『浮世絵動物園』の紹介です。

じつはすごい、江戸時代の動物絵画

動物を描いた江戸絵画をまとめた書籍は、じつはこれまでにも多く刊行されています。伊藤若冲の鶏、円山応挙の子犬、長沢芦雪の虎など、1人、いや1匹立ちしている作品がたくさんあるのです。主役の座はボク!といわんばかりの堂々たる動物たちに比べて、浮世絵の動物はどうでしょうか?

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そう、浮世絵の中の動物たちは、画面の中でも割と控えめ。どちらかというと脇役的な存在。でも、ちょっと待ってください。江戸庶民たちに受け入れられ、その日常や憧れを描いた浮世絵のなかに動物がいるということは、人々の暮らしに動物がいかに身近であったかを物語っているのではないでしょうか。さらに詳しく読み解いていけば、江戸の人々と動物の関係性ーーペットとして、家畜として生活を共にする様子、招福・厄除けなどその力を崇拝する様子などーーが見えてくるのではないでしょうか。入口は「かわいい」「おもしろい」というワクワク感から始まって、読み終わるころには、日本人と動物の関係への理解が深まっている、そんな本にできるに違いない。そんな想いから、本書の企画はスタートしました。

浮世絵動物園の見どころ案内

ここでは、担当編集が独断で選ぶおススメ作品3点を紹介します!

その1
月岡芳年(つきおかよしとし)「風俗三十二相」うるささう 寛政年間処女之風俗

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猫を飼っていた方には「分かる~」と共感の嵐必至な1枚。この、猫に顔をうずめる感じ、愛猫家なら一度はやったことがあるでしょう。ちょっと迷惑そうな顔をしながらもそばを離れない猫の様子も絶妙です。

その2
歌川広重(うたがわひろしげ)
「名所江戸百景」高輪うしまち

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猫に続いて犬。草履のひもをくわえて遊ぶ途中、空にかかる虹に気を取られているかのようなワンシーンです。しっぽがぷりっとした後ろ姿も可愛い。そして、ここにはもう1種、犬以外の動物の存在が描かれています。それは「牛」。画面左にかかる木製の車輪は、牛車(うしぐるま)という牛を使った荷車の一部。画面にこそ描かれていませんが、すぐそばには牛もいたことでしょう。スイカの皮や、子犬があそぶ草履は運搬業の人足がうち捨てたものでしょうか。この1枚に、江戸の人の生活や共に暮らす動物の様子がギュッと詰め込まれています。

その3
歌川芳藤(うたがわよしふじ)
しん板猫のたまむれ踊のをさらゐ

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こども向けに作られた「玩具絵(おもちゃえ)」と呼ばれる浮世絵です。こどもにとって馴染みのある場所やシチュエーションを、猫が演じるという趣向は大変人気だったらしく、本書でも本作のほか、習字をする猫、商売をする猫の玩具絵を掲載しています。画面全体がフロアや部屋ごとに仕切られていて、その中でちまちまと人間ごっこをする猫たちを見ていると、ドールハウスで遊んでいた童心に帰るような気持ちになります。
画面の中に小さくいる猫の先生を拡大して掲載するために、高解像度で新撮させてもらったことも思い出です。

掲載作品、約160点! 一体動物は何匹登場するの!?

上記3点、見返してみると猫と犬のみになってしまいましたが、本書に掲載された作品は約160点! 動物園というタイトルに嘘偽りなく、象、虎、猿、豹、兎、牛、馬等々、バラエティに富んだ動物たちが登場します。見開きごとにワンテーマで2~4作品をまとめていますので、気になるテーマから読んでいただくのもおすすめです! 見れば見るほど、目の前にいきいきと動物たちが立ち現れてくることでしょう。

書誌情報

『浮世絵動物園 江戸の動物 大集合!』
太田記念美術館・監修 赤木美智、渡邉晃、日野原健司・著
定価:2,640円(税込) B5判並製 128ページ
2021年5月19日発売 小学館
ISBN978-4-09-682360-6
https://www.shogakukan.co.jp/books/09682360

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