即席お嬢さま、現る。
自分は言葉遣いが悪い、という自覚がある。
なぜかというと、意図的に悪くしてきた時期があるからだ。
その時期とは小学校高学年の頃。
私はいじめられていた。
具体的な内容について、ここでは記載しないが、ひとつだけお伝えすると、
「頌は男子にモテようとしている、ぶりっ子だ」
と言われていた。
ぶりっ子しているつもりはなかった。
”普通”に喋っているだけなのに、どこがぶりっ子なのか自分ではわからない。
そもそも”普通”の喋り方とはなんだ?
わからないなりに、小学生の私は考えた。
”男の子のように振る舞えば良いのでは?”と。
急に態度を変えることは出来なかったので、いじめを何とか耐えて小学校を卒業し、中学校に入学。
チャンスはここしかないと思った。
自分をいじめていた中心人物とクラスが離れたので、私はそこから意図的に汚い言葉を使い始めた。
ぶりっ子だと思われたらまたいじめられてしまう。
男の子を観察して、真似た。
おい、つーかさぁ、〜だよな、〜じゃねぇの?クソだりぃ、うぜぇ、ありえねぇ、等。
私のその振る舞いで、きっとたくさんの人を不快にしたり、傷付けたりしてしまったと思う。
乱暴な言葉を3年間使い続け、私は高校生になった。
クラスメイトのほとんどが初対面。
小学校、中学校と比べると穏やかな方が多く、「あいつはぶりっ子だ!」なんて言ってくる人はいなかった。
ここでは、言葉遣いを悪くする必要はないと思った。
しかし油断は出来ない。
周りの様子を伺い、広く浅く満遍なく、笑顔を心掛けてコミュニケーションを取った。
そのおかげか、充実した高校生活を過ごすことが出来たのだが、数年間使い続けた汚い言葉は、気を付けていても不意に溢れてしまうようになった。
高校を卒業した私は就職した。
敬語は話せるものの、尊敬語や謙譲語を正しく使いこなせているのかというと、自信がない。
しかも、うっかりしていると口の悪さがポロッと出てしまう。
どうしたものかと悩んでいた頃、こちらの書籍をおすすめするツイートが流れてきた。
読んでみたい!と思い購入したものの、私は買って満足してしまうタイプだったので、悩みは何も解決していないのに解決した気になって、そのままそっと本棚に仕舞ってしまった。
時が流れ、本当にとんでもなかった汚部屋を大掃除した現在、こちらを見つけ、当時の気持ちを思い出しながら読んでみることに。
結論からお伝えすると、この本は何度も読み返したい1冊になったので、おすすめしたい。
冒頭にこのような記載がある。
楽しく学びたい私にとっては相性抜群だった。
まず、著者は読者のことを”あなたさま”と呼ぶが、稀に変化するのが面白い。
”お嬢さまを目指すあなたさま”
”お嬢さまことば見習い生のあなたさま”
”インスタントお嬢さま”
”インスタントお嬢さま”という言い回しには痺れてしまった。
そして、それを前提とした痺れるフレーズがあちらこちらに散らばっている。
”お里が知れてしまいます”
”地が出ておしまいになる”
”馬脚を現してしまわれる”
いくらこの本でお嬢さまとは何たるかを勉強しても、不測の事態が発生すると本性があっという間にバレてしまう、ということを見抜かれていた。
このような表現に魅了され、読んでいる最中何度も口元が緩んだ。
さぁもう少しで半分…というところで衝撃を受けたのがこのページ。
紅茶好きでよかった!と、こんなに喜んだ日はない。
まだ私にもお嬢さまチャンスがあるのだ。
読み進める手は止まらず、あと数十ページというところ。
読み終えたら振り返って、取り入れたいことばをメモしよう!と考えていたのだが、何と親切なことに、
”お嬢さまらしい○○リスト”
"最低限おさえておきたい敬語リスト”
これらが140ページから160ページまでに纏められていた!
インスタントお嬢さま大歓喜である。
さらにさらに、”卒業考査”と題したミニテストもついてくる!
これが結構難しい。
さて、まもなく読み終えてしまう。
寂しさを感じながら目を通していたところ、とても心に残る一文を見つけた。
癖になってしまった言葉遣いの荒さ。
汚い言葉を発している時の私はそれ相応の表情をしていたのかも知れない、と気付かされた。
反対に、美しいことばを使っている自分を想像すると、柔らかく微笑んでいる姿が浮かんでくる。
せっかく素敵な本に出会えたのだ。
私は美しいことばを使いこなせる人になりたい。
お読みいただきまことにありがとう存じます。
それでは、ごきげんよろしゅう。
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