読書ログ 『メンタル脳』
どんな本?
著者はスウェーデンの精神科医。気分が落ち込む理由やメンタルを好調に保つための秘訣を、脳科学や進化論に基づいて説明してくれる。巷のマインドセット系の本とは違って説明が科学的で、説得力がある。また、学生向けに書かれた本なだけあって非常に読みやすい。特に「運動をするとポジティブになれる」という定説の妥当性が科学的に理解できたのが良かった。自分の中での運動の優先順位が上がりそう。
この本の主張の根底にある「脳は人を生かすのが仕事なので、不安や辛さを感じることは当たり前」という考え方は、辛くなった時に自分を振り返るのに役立ちそう。タイトルは「メンタル脳」だが、「幸福」に関する考察が数多く含まれており、メンタルを脱するだけでなくそこから幸福になるまでの示唆を得られる点が良かった。
おすすめ度
★★★★⭐︎(とりあえず読んでおいて間違いない。スウェーデンでは学校に無償で配って20万人の中高生に読まれているらしい)
学びメモ
脳は生存者バイアスによって以下の特徴を持つ
脳は幸せなどどうでもいい。人を生き延びさせるのが仕事
なので幸せの持続時間は少ない(ずっと幸せだと注意散漫になって猛獣に食べられるから)
何かおかしい時はすぐに「不安」を引き起こし、人間に知らせてくる
人と繋がっていないと孤独感を感じる
物事をすぐに紐づけてストーリーにしたがる(真実はそうでないとしても)
ストレスと不安の違い
ストレスは体や心への負荷に対する反応。「闘争か逃走か」を選ぶ態勢が作られる。適度なストレスは良い刺激になる
不安は「事前のストレス」と言われ、「危険かもしれない・・・」という推測によって引きおこる。脳が「何かおかしい」ことを人間に伝える警告のこと。脳の扁桃体が、緊急地震速報を出しているようなもの(出さないよりは出す方がいいから、ちょっと過剰に出される)
不安は警告なので、「ポジティブに」「不安にならないで」といっても無駄はことが多い。逆に、不安を感じた時にこう考えれば落ち着ける
「脳は私たちがまだサバンナにいると思っているから、過剰に警告を発しているだけだ。警報器の誤作動だ」(実際そう)
「不安を感じるということは、むしろ人間として正常に機能している」
息を吐く量を多くして、副交感神経を活発にさせる
つらさを言葉にする。前頭葉はすぐ問題にフォーカスしてしまうので、客観的に言語化することで前頭葉の外側が活性化され、落ち着ける
辛いことを面白おかしく友達に話して笑い飛ばす、という行為を自分は無意識によくしている。これのことだった
なぜ運動がストレスを解消するのか?
脳を浸している「脳脊髄液」の状態が血圧・血糖値・血中脂質によって変わるので、運動によって脳の環境を安定させることができるから
肺が酸素を取り入れる能力が向上し、心臓や肝臓が強くなって脳に良いシグナルを与えるから
鬱の人は「コルチゾール」というストレスホルモンが過剰に出て逃走したくなっている(むしろエネルギーを出す時にはコルチゾールが少量必要だが、過剰に出過ぎると一気に鬱になる)。運動によってHPA軸の活動およびコルチゾールの分泌を抑制できる方
運動がドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンといった「シグナル伝達物質」やBDNF(脳由来神経栄養因子)のレベルを上げるから
ちなみに器官の炎症も鬱に影響する(だから病気や二日酔いの時は鬱っぽくなる)
「自分の身体は強くて健康だ」と自覚できれば、自己効力感が上がり、「自分で自分の未来の舵を取れる」という感覚も強まる
なので、心拍数をあげる運動をしよう!(人はもともと歩いて移動していたので、脳もそのくらいの刺激があった時に活性化するようになっている)
幸せ物質 エンドルフィンの出し方
肌に触れられると、脳下垂体で「エンドルフィン」という幸せ物質が出るので幸福になる
祖先が他の人と連帯することで生き延びてきたので、他人との連帯を感じるたびに脳が幸せな気分というご褒美をくれるようになっている
一緒に「笑う」「泣く」「踊ったり歌う」「トレーニングをする」などの連帯した行動によってエンドルフィンが出る
逆に、長時間孤独でいると脳が「誰も助けてくれない」という警報を発し、不安が増幅する。それによって疑心暗鬼になってさらに孤独・・・という負のループに陥ってしまう
孤独は相対的なもので、「一人でいたい時」には孤独を感じないし、孤独を感じない時間や人数も人によって異なる。そして人と少し話すだけで解消される
比較がメンタルを下げる
脳は連帯したグループから追い出されないよう、「私で大丈夫?」「私にはここにいられる価値はある?」「そのくらい賢い?面白い?かっこいい?」という問いかけを常にしてくる
現代は世界中の人との比較ができてしまうため、問いかけがよりしんどくなっている。これがSNSによるストレス増大の真相
★比較自体は脳の癖だからしょうがないけど、「過剰に比較してない?」「脳の悪戯じゃない?」くらいに思うことが重要
そして脳はすぐそれらしいストーリーを作りたがるので、鬱っぽい時には過度な一般化によって全てがダメなように感じてしまうことがある
★そういうバイアスがあることを自覚することで、戦える
幸せを追い求めると、幸せではなくなる
幸せとは相対的な感情で、「自分の理想」と「現実」のギャップからくる
したがって、理想が高いと幸せではなくなる。今はSNSの影響もあり、自分の理想が高くなりやすいので危険。むしろ不便で期待値の低かった昔の生活のほうが、今よりも幸せだった
★自分は自他共に認める「自分へのハードルが高い人」なので幸せになれにくいことを自覚するべき。
自分に多くを求めない、こんなもんでいいや、自分を許してあげる、ちょっとできたことで喜ぶ、が非常に重要
幸せになるコツは、「幸せなど気にしないこと」
幸せをゴールにするのではなく、「一緒にいて快適で、信用できる人たちに囲まれ」、「夢中になれて、意味を感じられることをする」ことで、自然と幸せになれる。
意味を感じられるために、「自分が主導権を握る」ことが重要。これができないと、「誘惑に負けた・・・」「やりたいことができなかった・・・」となってストレスが溜まる。
Next Steps
脳内環境の改善を意識して、ちょっとの運動を続けてみよう
幸せなゴールなど気にせず、「仲間との連帯」と「自分にとって意味のある行動」を最優先に動こう
もしそれが「自分を律する真面目ルール(そんなことしていいの?もっとやることが・・・)」などとconflictするとしても、幸せな方を選ぼう
家族の肌をもっと触って、エンドルフィンを出していこう
人と比較して凹んだときに、「祖先がコミュニティを大事にしたばっかりに、また脳が過剰に比較しているな」と思おう
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?