見出し画像

話した言葉が勝手に広告に出るのは何故?広告代理店の立場で考えてみた

かまいたちさんが大好きでして、Youtubeチャンネルをよく見ています。すると自分の広告仕事とドンピシャな話題が出てきたので、noteで私見を述べることにしました。

動画では都市伝説として「会話内容に基づいて、広告が出てくる」ということについて語られています。例えば「車の中で知り合いとダーマペンについて話していたら、その直後にインスタでダーマペンの広告が表示された」という話です。

動画を見て思ったこと

直近ではTiktokでこんなニュースも出てくるくらいです。入力情報を収集しているなら、音声も拾ったりしているのではないか?という漠然とした疑いを広告に対して持たれるのも仕方がないことです。

ただ普段の会話をスマートフォンが勝手に収集して、広告のターゲティングに使われているという点については違うのではないかと考えています。理由はいくつかあります。

  1. Googleを始めとした各広告プラットフォームに「普段の会話をスマートフォンが認識してターゲティング広告に利用する」機能は、少なくとも公式には備わっていない。

  2. 会話を盗聴してターゲティングするような機能があったらプライバシーの問題で企業やサービスの存続が危うくなる。プライバシー保護の関心や規制が多方面から強まる今、そんなリスクを犯してまでターゲティング精度を高める会社はないと思う。

  3. スマートフォンの会話の音声データを収集して、インターネットと通信して、会話内容から直後にターゲティングをする処理は、データ通信量や技術的な意味で難しいのではないか。

かまいたちさんの動画の中ではスマートフォンに向かって連日「パンダ」と連呼して、パンダに関連する広告出るか検証にトライし失敗に終わっています。そもそもパンダに関する広告が稀なので、仮に音声が拾われても広告が出づらかったであろうとは思います。

それなら何故かまいたちさん達は会話したら関連する広告が出てきたと思ったのでしょうか。

これじゃないか?と思う4つの要因

会話をして端末で広告を見るまでに、ネット広告にターゲティングされるいずれかの行動をしたのではないかと考えています。

その1,言葉を聞いて検索した

その場で言葉を検索していた場合は、検索したキーワードに基づいて広告を出す機能が存在します。これは音声検索を行った場合も同様です。

サーチターゲティング
https://ads-promo.yahoo.co.jp/online/searchtarge_overview.html

近しい機能はYahoo!に限らず存在しており「検索行動をした」という時点で「キーワードに関連する広告を出すべき対象者」とカテゴライズされた可能性があります。

ただ動画内でかまいたち山内さんは「検索してないのに」と言っているので、これ以外の要因なのだと思います。

その2,LINEやメッセンジャー経由でURLを受け取ってアクセスした

会話の過程で相手にLINEでURLを送る、または送られてくるケースは多々あります。それでアクセスした場合は以下のリターゲティングという機能に該当し、広告が出る対象者となります。

リターゲティング
https://ads-promo.yahoo.co.jp/online/ydn/targeting/

上記はYahoo!の例ですが、Googleやfacebookをはじめとした主要広告プラットフォームには備わっている機能になります。とくにサイト訪問直後に出現が強まる傾向にあるので、会話の過程でウェブサイトにアクセスしていたら「検索していないのに広告が出てきた。会話を聞かれていたのか?」と感じやすいかもしれません。

上記のリターゲティングに限らず「ウェブサイトを見る」→「興味があると認識される」→「関連する広告が出てくる」という機能に知らないうちに巻き込まれている可能性はあると思いました。

その3、関連するSNSの投稿を閲覧しリアクションしていた

会話をきっかけにインスタグラムで関連する投稿を閲覧していいね、コメント、保存などをしていた場合は、そのインスタグラムのアカウントから広告配信をするときの対象者とすることができます。

その4,会話に関係なく広告が表示される対象だった

会話の有無に関わらず、自分は元々「その広告が配信されうる属性だった」可能性があります。

ネット広告の代表格のGoogle広告を例にとります。Googleのアカウントで広告のカスタマイズにアクセスすると、自分がGoogleどういう属性の人物だと推定されているかわかります。

主に検索行動、ウェブサイトの閲覧、Youtubeの視聴が考慮されて自分のデータが構成されます。ここまで綺麗に開示しているのはGoogleくらいですが、その他のプラットフォームでもこういった推定はされています。

対策

かまいたちさんの動画内ではアプリに対してマイクのアクセス許可をしない対策について言及されています。スマートフォンが普段の会話を収集しているかはともかくとして、可能性を絶つ意味では有効です。

しかし音声がなくても、前途の通り検索やコンテンツの閲覧といった行動が蓄積され、ターゲティングに使用されるため「会話していた内容の広告が出てきた」という感覚が拭えない方もいると思います。

ターゲティング広告を嫌う場合は、軽減する方法があります。

Google

広告のカスタマイズにアクセスし、広告のパーソナライズをオフにします。

以下の確認を行い無効にするを選択します。

Yahoo!

広告の最適化設定にアクセスし、最適化しないにチェック。

あとはLINEにしてもTiktokにしても「プライバシー設定」や「広告」関連の項目から、行動履歴が広告に利用されることを拒否することができます。これはほとんどの広告サービスに備わっています。

こういった対策は、あくまで自分の行動に基づいた広告の出現を制限するものであり、行動履歴に基づかない広告は引き続き出てきます。

行き過ぎるとCMトイレ発言になる?

話が変わりますが、テレビで「トイレはCM中にどうぞ行ってください」と言う人はいません。なぜならテレビ番組はCMで成り立っており、そういう発言をするリスクを出演者は知っているからです。

Youtuberが繁栄したのはGoogleがもたらす収益があるからです。収益はYoutubeの再生前などに出てくる広告の存在があるからで、それはターゲティング広告の1種です。「掲載面」となるYoutuberが広告を気持ち悪がったり否定することは、ある意味CMトイレの話に近い感覚を覚えたりします。

まとめ

「会話した言葉に基づいて勝手に広告は表示されるのか」という問いかけに対しては「会話の後の行動によるものか、元々広告が出る属性だったんだと思う」というアンサーで締めくくりたいと思います。

心理的に一度「会話を聞かれているかも」と気にした上でドンピシャな広告が出ててきたら「うわ!出た!!やっぱり会話がトリガーだ!」と記憶に残りやすいのかもしれません。気持ち悪さを覚えるほどに今の広告は精度が高いとも言えます。

余談ですが、Googleは以前GMAILの内容を読み取って広告を出すということをやっていました。広告のためにメールを読むくらいですから通話を読み取ろうとする検討や議論はしたのではないかと推測します。

企業が普段の通話や会話を勝手に収集すること自体は、技術的にありえない話ではないし、そのうちどこかの大きな企業がそういうことをやっていたとニュースになってもおかしくないとも思います。だけどそこまで踏み込んだら、きっと広告ではないもっと別の目的で行われることなのでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?