歯ブラシを持った救世主

こうめが毎日必ず泣く瞬間がある。歯磨きの仕上げだ。羽交い締めにしてでも磨くのは大事だが、こうめも、カカも、トトも、できることなら避けたい時間。でも、こうめは最近、泣かなくなった。ある救世主のおかげで。

「泣かれても歯を磨くことは徹底してしてくだ
さい。将来虫歯になりやすいかなりにくいか
は幼少期の歯磨きで決まります」

こうめの1歳半検診、
保健センターのおばちゃんに、

「歯が汚い！
泣かれてもなんでも
とにかく磨いてください！」

と指摘されてしまいました。。、

いつも基本的にヘラヘラ笑ってるこうめ。
でも、この歯ブラシの時間だけは、
号泣が止まりません。

言葉を覚えてきた最近は、

「いたーい！いたーい！」

と涙の訴え。。
トトとカカは耐えられなかったわけです。。
どうしても、あの号泣を前にすると、

「はい！分かった！

** もうやめるからごめんね！」**

と、「断末魔の叫び」を
避けてしまっていたわけです。

でも、ある日を境にぱったり
泣かなくなりました。

こうめのお友達が

歯医者さんになってから。

1ヶ月前、こうめが最も爆笑してくれていたのが、しまじろうの手人形遊びでした。

カカはあまり恥ずかしがって
やってくれないけど、
トトの「マペットしまじろう」はいつも本気。

いつしか、こうめのお友達になっていました。

トトとカカはあの涙の訴えが
自分たちに向けられることを
なんとか避けたい。

その一心で、このお友達に、
歯医者さんというコマンドを追加しました。

しまじろう
「ねーねー、こうめちゃん！
しまじろうは歯を磨くのが大好き。
だからこうめちゃんの歯を
ゴシゴシしてみたいんだけどいい？」

歯ブラシを持たせたマペットしまじろうを手にトトとしてはダメ元で、こうめに相談してみたわけです。

すると、

こうめ
「いいーよっ！」

トト&カカ
「！？！？！？」

初めてみたパターン。
これはいけるかもしれない。
でも、この瞬間痛い思いをさせたら、
このコマンドを使えなくなるかもしれない。

しまじろう
「あーのお口できるかな？」

トトの手はいつも以上に、
そっと歯ブラシをこうめの口に投入しました。

しまじろう
「お口のなかにさっきいっちょに食べた
お魚さんがいるねー。
ゴシゴシしてもいい？」

こうめ
「いいーよっ！！」

親には見せない、
お友達だけに向けられた表情。。。

さらに、お友達による
歯医者コマンドには、
ある特典も付けていました。

しまじろう
「歯磨き頑張れたの？
ちゃんと最後まで我慢してくれてありがとう。
僕に歯磨きさせてくれたお礼に
これあげるね」

普段あまりご褒美をあげたりしない
トトとカカ。

しまじろうがあげたことにするなら
いいかと、
試しにあげてみることにしました。

こうめ
「なにーー！！！
あーーーーとっ！！(ありがとう)」

口に入った初めての味。

こうめ
「あまーーーい！！あーーーとっ！！」

トト&カカ
「・・・」

いや、嬉しいんですよ！
初めてちゃんと歯磨きの仕上げまで泣かずにできたので！

ただ、

ちょっと切なくなっちゃって。。

こうめが寝た後、トトとカカは、
どちらが言うでもなく、冷蔵庫を開けました。

出産以来初めての、二人だけの晩酌でした。
まぁ、キャラものに負けたグチも、
酒のツマミとしては、いい味出してました。

この日からおよそ2週間。
あの涙の訴えは懐かしい思い出に
変わりましたとさ。

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