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最後に会いたいよね

 昨年の今頃から新型コロナウイルスの話題が出てきたと記憶している。約1年が経過して、私の周りで変化したことがある。自宅療養が増えたことだ。

 私の住んでいる地域に限って話をするが、病院に入院して、死が近づくと、家族は、入院している方(祖父母や両親など)に会いたい人を聞いたり、生前の付き合いを考えて、「最後に会って欲しい」と連絡をする。そして、死を迎える前に最後に面会する。通常であれば、このようなケースが多く、病院で死を迎える方がほとんどだと思う。

 しかし、現在は、新型コロナウイルスの影響で入院した場合に、ほぼ面会できない状態となっている。これは、病院に限った話ではなく、介護施設なども同様のようだ。そうなると、どれだけ入所・入院している人が会いたいと思う相手がいても、それは家族であってもなかなか会うことはなかなかできない。ただ、病院に入院している場合には、「もう数日でしょう」と言われてからなんとか会うことができたという話も聞いている。しかし、誰でもが会えるかというとそうではなくて、近隣に住む家族以外は、ほぼ無理なのが私の住んでいる地域の状態のようだ。

 このような状況を考えて、意識がはっきりしている場合に、病院では会いたい人に会えないから、自宅療養に切り替えて、死を迎える前に会いたい人と面会するケースが増えているようだ。

 実は、ここ二ヶ月でこのようなケースの方が二人いた。二人とも「私に会いたい」と連絡をくださったので、面会してきた。そして、会った数日後には亡くなられている。

 亡くなられた方を考えた時に、二人とも病院で近代医療を受けたら、たぶん、もう少し長生きできたように思う。しかし、誰にも会えず、入院生活を送るというのは、本人にとってどうなのだろうか、ということを思ってしまう。というのも、親しくしている方が、がん治療のため入院して闘病生活を送っている。たまに電話するのだが、本当に嬉しそうにいろいろ話してくれる。そして、最後にきまり文句のように「治療しているけど、元気な時は暇でしかたない。誰かがいてくれることって本当に心強いことだって今まで気づかないものだったよ」と言うのだ。

 私には新型コロナウイルスで誰にも会うことができずに死を迎える人と闘病している方が重なって見えてくるのだ。

 私の拙い想像力ではあるが、はたしてどうなのだろうかな、と思う。これは、どちらが正解なのか、ということではなく、それぞれの家族と本人が判断することであり、それを尊重するしかないんだろう。

 先述したようにここ二ヶ月で最後に会いたいと二人の方の親族から声をかけていただいた。悲しいのだけれども、その反面、最後に会うことができたことがよかったなという気持ちもある。

 自分の家族が同じような状況になったらどうしようか、と考えると家庭環境的に難しいかもしれないが、可能であれば、自宅に連れてきてあげたいと思うのであった。

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