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「この地で働きたい」という気持ち | 株式会社シャフト 久保田社長インタビュー

数々のヒットアニメを世に送り出してきた株式会社シャフト。

同社の代表である久保田社長はどのような経緯でアニメ制作に関わるようになったのでしょうか。また、シャフトが求める人材の基準について伺いました。

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ベストを模索する中で生まれた“らしさ”

弊社のつくったアニメはよく「シャフトらしい映像ですね」と言われることがありますが、それは作品への向き合い方から偶然生まれた“らしさ”なんじゃないかなと思います。

作品ごとのスタイルに関しては、監督も含め、どういうディレクションが行われるかによって全然違います。シャフトらしいビジュアルを出すことに関しては、じつはあまり狙っていません。

たとえば、「化物語」という作品であれば、会話を中心とした小説が原作であり、ビジュアルのイメージが限られていました。それを「世界観を崩さずにどのように映像化しようか」と悩み、スタッフの出した答えが「文字をそのまま映像にしてしまおう」だったのだと思います。

結果として、場面と場面の転換に文字だけのカットを入れたり、カニの姿をした化け物を「蟹」の漢字を使って表現したりと、たしかに特徴的な映像になりました。

しかし、そういった制作のヒントは作品ごとに千差万別です。最初から用意してあった演出や効果があったわけではなく、僕らはただ、作品ごとのベスト、ディレクションを模索しているだけです。

「魔法少女まどか☆マギカ」のような、完全なオリジナル作品では、脚本、キャラクター設計、美術などを既存のアニメーションの原則にとらわれずに描いていくことで、「どうしたらみなさんに楽しんでもらえるか」を考えています。

それを「シャフトらしい」と捉えてくださるのは嬉しいことです。

静岡でアニメをつくりたい!

僕はもともとアニメをつくりに東京に行ったわけではありません。

「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」のブームがあって、映像制作に関われたらいいなとは漠然と思っていたけれど、自分はアニメや映像の専門的な知識を学んでいたわけではないので、「難しいんだろうな」と諦めていました。

ところが、たまたま知り合いがアニメーション制作の関係者を知っていて、その縁があって、アルバイトとして働かせてもらえることになりました。

最初に関わったのは「仕上」というセクションです。

セルに油性の絵の具で色を塗っていく仕事ですね。社内に踏ん張りの利く若い男性が少なかったこともあって、しばらくすると、メインのスタッフとして作品に参加するようになりました。

そこからずっと、楽しくて続けていたら40年経っていました。

とにかくきっかけは、「東京に出て働いてみたい」という、ぼんやりした感情です。当時の風潮というか、「とりあえず東京」みたいに思っている人たちがたくさんいた時代ですからね。

今でも過去の僕と同じように思う若い人たちはいるでしょう。ただ一方で「地元に残りたい」と強く思う方々もいる。静岡にだってたくさんいるはずです。

そういった方々にとって、アニメ制作も一つの選択肢になるかもしれないと考えています。

アニメーション制作というと、どうしても首都圏を思い浮かべてしまうかもしれませんが、「静岡にもシャフトのスタジオがあって、アニメをつくことができる」ということを多くの方々に知ってもらえるようにしていきたいですね。

ミーティングルーム

行動できる人は強い

僕が若い頃は、とくにやりたいこともなく、漠然と日々を過ごしていました。

外から情報がほとんど入ってこなかったから、「何かやりたいな」と思っても、どうすればいいのかわからない。エンターテイメントに関わりたくてもやり方がわかりませんでした。

でも、今は書籍があり、インターネットやSNSなどもあるので、ほとんどのことは調べられるし、勉強できる。アニメや映像のつくり方もわかります。やりたいことも探せるし、そこに挑戦していく方法も見つかるかもしれません。

課題を見つけ、一歩前に進むことがやりやすい時代になったんじゃないでしょうか。純粋に「羨ましいな」と思います。

「想いさえあればそこに行ける」とは思わないですけれども、自分一人ではできないことも、外に向けて発信していくと、周りの人にアドバイスをもらえたり、思いがけない縁に恵まれたりするかもしれません

いつの時代も、自分で目標を立てて想いを行動に移せる人は強いです。

採用の基準は画力だが……

来年度は、静岡スタジオにて、静岡市内の学生の方を2名採用しました。また、東京で採用した静岡県出身の方と、海外から応募してくれた方が静岡スタジオに来てくれることになりました。

今回は作画の応募だったので、専門学校出身の方を中心に採用しましたが、必ずしも専門学校で勉強してきた方を採用するわけではありません。

書籍やインターネットなどで調べて、独学でアニメの勉強をされてくる方も多くいます。そういった方々のスキルも、昨今では非常に高いです。

アニメーション制作に関わるスタッフは、みんな職人のような人たち。特別な技術を持った社員は会社にとって一番の財産です。しかし、そういった特殊なスキルを習得するにはとても時間がかかります。

必要としているわかりやすいスキルとして「画力」が挙げられます。

画力は作画として採用する際に、もっとも大切に考えている要素です。アニメ制作の専門的な知識に関しては、経験を積みながら学んでいくことになります。

だからといって、最初からプロのアニメーターの人たちのように描ける人はいません。むしろ画力の伸び代が大切だと考えます。

それと、やはりアニメーション制作は「個人作業だけではない」という部分をしっかり伝えています。小さなスタジオといえどチームで作品をつくっている限り、チームワークやコミュニケーションは不可欠です。

コミュニケーションにおいて、基本的に必要なスキルは他の企業や職種と変わらないと思います。

静岡のスタジオに関していえば、「この地で働きたい」という気持ちも汲んでいきたいです。ですから、アニメへの向き合い方、気持ちの有無という点では、専門の学校に通っていたかどうかは大きく影響しないかもしれません。

シャフト静岡スタジオAOIができたことで、静岡に住む方々に少しでもアニメーション制作にご興味を持っていただけたら幸いです。

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