パワハラを告発した落語家さんの動画

この騒動については
どうしても書いておきたくて、
動画が報告不要のリンクフリー
ということもあり、
今回ご紹介させていただきます。



僕が本業の落語家になりたくても
一歩が踏み出せなかった原因は、
自分自身の心が弱すぎると
客観的に思っていたからです。

徒弟制度が残っている落語家の世界。
師匠の厳しい一言でも
気にしてしまうでしょうし、
まして直情的に殴る蹴るの師匠を
選んでしまったらと想像しただけで、
背筋が寒くなります。



この動画を制作した三遊亭天歌さんは、
10年以上もその塗炭の苦しみを
受け続けました。

社会で生きづらい人、
はみ出してしまった人、
辛い現実を引き受けざるをえない人に、
落語はひと時の安らぎと
希望を与えます。

しかしその演者は、
親同然ともいえる
師匠から受けた心の傷を、
どこで癒したらよいのでしょう。



「そういう側面もある業界だから
 仕方がないだろう」
という意見もあるかもしれません。

しかし、
こうしたアフターケアーもない
ハラスメントの了見は、
果たして
(落語に必要な要素である)
「粋」でしょうか。
おそらく、最も真逆な
「野暮」「無粋」
でしょう。

社会常識からはみ出しているのが
落語ではないと思うのです。
まず社会のモラルという
「型」がきちんと守られて
いるからこそ、
そこを茶化したり、
逸脱することに
面白みが生まれるのです。



僕は、この方の師匠である
(ハラスメント加害者の)
四代目三遊亭圓歌の芸が
大好きでした。
鈴本演芸場まで
わざわざ聴きに行ったこともあります。
汗を流しながら全力投球で
会場を爆笑させる勢いと、
地噺のテクニックは
当代随一とさえ思っています。

あれだけたくさんの
観客を幸せにできる人が、
なぜ一人の弟子を
幸せにしてやれないのか。
それが立川談志師匠が言った
「人間の業」なのかもしれませんが、
とにかく僕は、
残念であり、
悔しくもあり、
ただただ悲しいです。



天歌さんは
(私のような軟弱な人間と違って)
感情的な恨み言は一切言わず、
冷静に師匠との関係を清算したうえで、
業界からハラスメントを根絶しようと
努力なさっています。
その強靭な精神と誠実なお人柄には
心から敬意を表します。



こんなことを書いている私ですが、
別に聖人君子でもなんでもありません。
セコく、臆病で、自己中な、
状況が変われば容易に人を
傷つけてしまうかもしれない人間です。

ですが、落語に人生を救われ、
落語という文化に
心の底から惚れております。
ですから、
落語を愛する者の一人として、
このような事件が
二度と起こらないよう、
心から祈っております。



「無粋な」長文になってしまい、
まことに失礼をいたしました。



三遊亭天歌さんは落語協会に
ハラスメント対策の徹底を求める
署名運動も行っていらっしゃいます
https://www.change.org/rakugo-no-harassment

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?