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私の感傷的百物語

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昔、自費出版した本を一話ずつリメイクしています。
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#エッセイ

【私の感傷的百物語】第三十三話 黒瀬

沼津市を流れる狩野川に、「黒瀬」と呼ばれる場所があります。沼津警察署の前辺りにあって、文…

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【私の感傷的百物語】第三十二話 蜘蛛の巣天井

我が実家の隣は、車一台がやっと通れる程度の下り坂になっています。この道に沿って何軒か家が…

後藤師珠馬
2か月前
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【私の感傷的百物語】第三十一話 開かずの間

「開かずの間」という言葉にそそられます。長い間閉ざされている場所には、果たして何があるか…

後藤師珠馬
4か月前
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【私の感傷的百物語】第三十話 黒い球体

子供の頃、実家で黒い球体を見たことがありました。ちょうど僕がトイレへ行こうと、一階の畳敷…

後藤師珠馬
5か月前
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【私の感傷的百物語】第二十九話 隙間

隙間が怖いのです。常に、ではありませんが、時々、隙間がものすごく恐ろしく感じる時があるの…

後藤師珠馬
5か月前
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【私の感傷的百物語】第二十八話 雨漏り

「仄(ほの)暗い水の底から」という恐怖映画があります。離婚調停中の母と娘に、水に関わる様…

後藤師珠馬
5か月前
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【私の感傷的百物語】第二十七話 クラスメイトの諍(いさか)い

高校時代の話です。授業の後、教科書を忘れたことを思い出し、教室へと戻りました。入り口のドアを開けた瞬間、僕は激しく狼狽(ろうばい)してしまいました。教室内には、同じクラスの女子生徒が二人残っていたのですが、そのうち一人が、机に突っ伏して嗚咽(おえつ)しているのです。もう一人の女子は、その隣で必死に泣いている彼女を慰めているのでした。僕は、どうしてよいか分からなくなってしまって、 「いや、教科書を忘れちゃって……」 などとブツブツ呟きながら、そそくさと机の中から教科書を取っ

【私の感傷的百物語】第二十六話 夜桜

夜桜は美しいものです。この美しい花が咲き誇った樹の下を歩くのは、春における至上のよろこび…

後藤師珠馬
7か月前
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【私の感傷的百物語】第二十五話 霧

映画化もされた人気ホラーゲーム、「サイレントヒル」。湖畔の霧に包まれた町で、主人公に未曾…

後藤師珠馬
9か月前
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【私の感傷的百物語】第二十四話 学校のトイレ

小学校、中学校、高校と、校舎にあるトイレを利用したことが一度もない、という人はまずいない…

後藤師珠馬
9か月前
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【私の感傷的百物語】第二十三話 豚の胎児を埋めに行く

高校時代、自然科学部に所属していた僕は、一応の「部室」である生物準備室に入り浸っていまし…

後藤師珠馬
9か月前
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【私の感傷的百物語】第二十二話 ネクロフィリア

だいぶ前に、心理学ゲームの本を読んだ時、その娯楽性の強い本から、僕は「ネクロフィリア度上…

後藤師珠馬
10か月前
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【私の感傷的百物語】第二十一話 天井裏の毛物

僕の実家の一階と二階の間、つまり一階の天井裏には、よく獣が忍び込んできます。初めてその気…

後藤師珠馬
10か月前
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【私の感傷的百物語】第二十話 ザトウムシ

これまでにも何度か、釣りにまつわる怖かった体験をご紹介しましたが、これも釣りの話です。ただ、今回は昼間に起こったことです。 大学生時代、静岡市は清水にある庵原川(いはらがわ)の河口に、友人と釣りに行きました。以前、夜釣りから逃げ帰った興津川の隣にある川です。両岸はなだらかな石垣の傾斜で、僕はそこに腰掛けてウキ釣りをしていました。クロダイの若魚や、ギンガメアジなどが釣れて、自分には珍しく、好釣果でした。 しばらくすると潮が満ち、足元まで水が迫ってきます。ふと足元を見ると、石