東京駅
東京駅にひとりで行くようなやつはみんな寂しいんだ、だから私もひとりで東京駅に行く。夕方から夜にかけて東京駅で空を眺める時間が、好きで嫌いで好きだ。こんなに寂しくなる予定じゃなかった。夕が藍に侵食されていく、誰を待っていたかわからなくなっていく、呼びたかった名前を思い出せなくなっていく。待っている間に壊れた私の欠片を誰かがヒールで踏んだ。音もなく砕け散って都会の喧騒に消えた。休日の予定はと聞かれて、東京駅で文学を探しに行きますと答える。嘘。嘘で塗り固められた孤独感を飼い慣らせないまま、ひとりで空を眺めている。おひとりですか、うっせぇあなたもひとりじゃん。ひとりぼっちが固められてできた美しい琥珀のような駅、東京
眠れない夜のための詩を、そっとつくります。