13℃
涙は宝石になると知ったのは、春一番が歌いやまない三月の夜。
地面に崩れ落ちて泣きながら、藍色の空を仰ぐと
月がとても綺麗だった。
とめどなく溢れる涙は、その一粒一粒が小さな宝石になり
春の夜空に瞬き出して、
私ってこんな風に泣けるんだ、と思った。
痛くて苦しいのに、あたたかくて愛しかった。
忘れたくなかった。この夜の温度を、忘れたくなかった。
泣きながら原稿用紙に言葉を綴った。深夜二時を回った頃、小さな物語が出来た。それを丸めて口に入れると、小さな金平糖になった。
私はその甘い欠片を、ゆっくり飲み込んだ。
今晩、また新しい星が夜空に増えたことに、あなたが気づかなければいいと思った。あなただけに気づいてほしいとも思った。
いつかどこかですれ違う時、
また私はあなたを見つけたいと思った。見つけられるひとでありたいと思った。
三月、数多の出会いと別れが繰り返されるこの季節に、
私は中指を立てるふりをしてキスをして、
愛していたよ、愛しているよ、と
誰にも聞こえないように呟いた。
眠れない夜のための詩を、そっとつくります。