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涙は宝石になると知ったのは、春一番が歌いやまない三月の夜。

地面に崩れ落ちて泣きながら、藍色の空を仰ぐと

月がとても綺麗だった。

とめどなく溢れる涙は、その一粒一粒が小さな宝石になり

春の夜空に瞬き出して、

私ってこんな風に泣けるんだ、と思った。

痛くて苦しいのに、あたたかくて愛しかった。

忘れたくなかった。この夜の温度を、忘れたくなかった。

泣きながら原稿用紙に言葉を綴った。深夜二時を回った頃、小さな物語が出来た。それを丸めて口に入れると、小さな金平糖になった。

私はその甘い欠片を、ゆっくり飲み込んだ。

今晩、また新しい星が夜空に増えたことに、あなたが気づかなければいいと思った。あなただけに気づいてほしいとも思った。

いつかどこかですれ違う時、

また私はあなたを見つけたいと思った。見つけられるひとでありたいと思った。

三月、数多の出会いと別れが繰り返されるこの季節に、

私は中指を立てるふりをしてキスをして、

愛していたよ、愛しているよ、と

誰にも聞こえないように呟いた。


眠れない夜のための詩を、そっとつくります。