無益な喫茶店
「あのひとことが なければ……。」
通いつづけていたであろう喫茶店。ふだんは笑って受けながす。季節や体調によりカチンときたら、いかなくなるもの喫茶店。
(969文字)
土曜日の儀式
オットにかぎらず、男子たるもの平日は仕事ざんまい。サラリーマン、いやビジネスパーソンは、超いそがしい。
待ちに待った週末がやってきた。
土曜は半ドン(お昼まで)。そして隔週やすみ、いまや週休二日制。
土曜日の変遷をたどるオットの世代。
昭和のオジサンの週末だ。
気分よろしく喫茶店。
オットの花金ならぬ「花土」
土曜のモーニングは至福の時間。
おともする、わたし。
(のんびりできないけど)
喫茶店のカウンター
マスター渾身・1杯だての贅沢コーヒー。
ゆっくりあじわうオジサンがいる。
1週間、正確には月〜金の5日ぶん。
暑くなってもホットコーヒー。
じぶんのスタイルかたくなに。
オットはメガネをずらす。
ほんまもんのミルクをすこし。
スプーンでくりくり。
垂直にひきあげシルバーのひかりを確かめる。
茶道の先生みたいなルーティーン。
パンをもぐもぐ。
たまごをペリペリ。
たまごのカラを一挙2個むく。
おなじことがだいすきオット。
変えれないもの、代えれないもの。トシをとると。
「 優しいですねぇ 」
マスターの声がカララと響く。
いや、これは。わたしがあとで、パラパラとたまごのカラをはずすのが耳ざわり。
ペリペリでないとダメらしい。
だからさきに2個ともむくのだ。
決して、ツマにご奉仕……ではない。
アレがでると
さては2杯め。オットはパンとたまごをたいらげると、コーヒーのおかわりをする。仕事で疲れがピークのときにアレがでる。
コーヒーのアレ。
あちゃあ、アレが出た。疲労の披露。すこしオロオロするわたし。今週末は、面倒終太郎。確定。
マスターは仕事にかかる。
そして渾身の1杯をオットへ。
「 いやぁ、作っといて出すボクが言うコトじゃないですけど
こんな暑い日に飲むもん違いますよね 」
ゲイシャ。
この一杯をたのしみに。
これを飲むのだけを、たのしみに。
オットは芸者を飲みこんだ。
妖艶なかおりとあじわいを。
無言でのみほす芸の者。
さいごの指名となりました。
あのひとことがなかったら。
いつも こころに うるおいを
水分補給もわすれずに
さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。