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ほねつぎ

大きな看板。ひらがなで「ほねつぎ」
ピカピカの小学1年生の、わたし。
読めた、ニンマリ。
「ほねつぎ」とは何でしょう。


ほねつぎ屋さん

「ほねつぎ」とは、
「骨をぐ」ので「ほねつぎ」です。
と、いうより「昭和時代の整骨院・整体院」と言ったらイメージしやすいかも。
けっこう街のあちこちで見かけましたよ「ほねつぎ」
いまなら、誇大広告、誇大表現、ありえない。まぁ、おおらかな時代でした。

わたしが育ったところでは多かったような気がします。家族は「ほねつぎ屋さん」と、言っていた。
肉屋さんや、お風呂屋さんのように、お店の「屋」をつけていました。
ご丁寧に「さん」づけなのは、親しみを込めて呼ぶのと商売への尊敬。これは大阪だけかもしれません。


「お店や会社に、さんづけしなくてもいいんじゃない、ヘンなの」
他府県の人に言われたことがあります。
えぇっ、呼び捨て? ちょっと……。
わたしは、あたふた。


これは、お互いさまですね。地域性もあるでしょうし。もしかして、子どもっぽいと思われたかも……。
「さん」づけに違和感があったら、
何とぞ、ご容赦ください。


当たらずしも遠からず

わたしは幼稚園に通っていたころ、覚えがないのですが「腕をはずした」らしいのです。
骨折か脱臼でしょうか?
「ほねつぎ屋さんに行こ」
祖母に2回ほど連れていかれました。


ほねつぎ屋さんは、お医者さまではない。
だから、お店に近い存在。
それで、うちでは「屋さん」をつけていたのかも。


子どもごころに白衣を着ている先生は、み~んな、お医者さまに見えました。



あんま・はり・きゅう

ほねつぎ屋さんの看板には、もれなく
【あんま・はり・きゅう】
と、セットで併記されていた。
ほねつぎ屋さんの子分みたいなものかな。
みんな、ひらがな。読めるのが嬉しかった。


あんま。身体をモミモミしたり押したり。
番組名は忘れたが、むかしテレビ放送されていた。
「指圧の心、母ごころ」
番組のエンディングに。
たしかこんなフレーズで。
おじいちゃんの先生が指で、患者さん(モデルさん)の肩を押していた。
漢字で按摩あんま。いまならこのフレーズが身と目に沁みる。


はり。針だと思って怖かったが、中高生になって、テレビ時代劇で鍼を使う仕事人を観た。
いや、あれはかんざしか?
漫画で、盲目のスキンヘッドのキャラが武器にも使っていたと思う。捕物控。江戸時代の、二人組刑事物。


いまなら「美容鍼びようはり
顔に打つ。刺すというのか? 何本も顔面に刺さった画像が流れてくる。老化防止。
タルミに効果があるらしい。

きゅう。これはかくれファン多数の、お灸だ。
いまは、簡易型というか、カジュアルお灸がある。火を使わないタイプもある。
わたしも火をつけて、じんわり、むふ~と、やっていた時もある。
ひいおばあちゃんを、思い出しながら……


やいと(お灸)をえる

子どものころの衝撃。
ひいおばあちゃんが着物の後ろをはだけ、背中を出していた。夕暮れ時の毎日のこと。
そしてうつ伏せになる。
「やいと(お灸)すえてや」


暗号の言葉が出た、と同時に祖母(おばあちゃん)が、乾いた葉っぱを手のひらで丸めて、さくらんぼ大にした。
ひいおばあちゃんの肩や背中にポンポン2列に並べで、マッチで線香に点火。
線香の先に火をつけて、乾いたさくらんぼに落とす。
毎日のことなので、やいとの跡が、くっきり。やいとのマーキングだ。


じゅっ……焦げるような音。
ふわぁ……さくらんぼが燃える。


きもちよさそうな……ひいおばあちゃんの顔。
お灸と銭湯に行った時は、いつも、こんな顔になっていた。
肌にはいつも、2列の丸い茶色い跡。


「やいと」熱くないのか?
しかし方言なのか、なんで「やいと」と言っていたのか。
「焼いと」「焼いとる」みたいなものかしら。


やいとの原料・モグサは、すうっとした香りの草。ヨモギの仲間。干してある。
ささくれた、とろろ昆布のようだった。
お医者さまの白い「おくすり袋」のようなのに、もっこりと入っていた。


ツボのくぼみとモグサ。
大人は、おばあちゃんたちは、ヘンなことをするなぁ。



もうひとつの、やいと

「悪さをしたら、やいと(お灸)をすえるぞ」
「お灸を、すえてやった」


らしめ。重い説教。罰。
おおきなモグサを丸めて、
「悪い子は、熱いお灸でお仕置きをするぞ!!」
なんて、祖母によく言われましたよ。
こんな言いまわしも、ありました。
しつけを通り越したこの行為、いまではNGです。

きっとわたしは、「お灸で、おしおき」の、最後の世代だ。
親分の「ほねつぎ」を知ってる最後の世代だ。

骨を折る、骨を砕く。
時間を割いて、苦労しての行動。しごと。


骨折り損のくたびれもうけ。
徒労。


「ほねつぎ」の文字。
骨を継ぐとか拾うとか……
骨を埋めるとか……


「ほねつぎ」の四文字と子分たち。
懐かしくて、せつない。
もう……そんな歳になった。



毎週日曜日は
「自由エッセイ」の日


いつも こころに うるおいを。
水分補給も わすれずに。



最後までお読みくださり、
ありがとうございます。

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