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この家どうするの?(56)ゴミ出しのオキテ


なんの参考にもならない実家の片づけを書いています。
空き家になった父の家。
不用品を事務的に捨てていく作業から。
夏用ペラペラふとんをゴミ袋に押しこむ。広告紙なども入れ、カモフラージュ。普通ゴミ回収日(無料)に出した……。
つもりが、ご近所リーダー・Sさんが持っているではないか!
(2291文字)



小一時間の移動

父の孤独死。当時、賃貸マンションに、夫婦ふたり(わたしとオット)で住んでいました。父の持ち家がぽつんとのこる。とうぶんはゴミ出し作業、電車に乗って。


ガタンゴトン、小一時間ほど。
父もわたしも、おなじ大阪市内に住んでいたので助かった。これが遠方なら、どうなっていただろうか……。


帰省は遠いほど、お金と時間がかかる。母は鹿児島県の出身だった。大阪からは、お盆に帰るのが精いっぱいだった。


寝台車・西鹿児島いき。
何度か母の帰省についていく。
どんなルートだったのか。
列車の名前すら思い出せない。
車掌さんは魔法つかい。
ベッドに変わる、パタンパタンの座席の呪文とともに。


母は、しかくい「お茶」を買っていた。
キレイなみどりいろ。
半透明のちいさな水筒。
持ち手はハリガネ。コップをふせた。


いまは、ぜんぶ消えてしまった。
寝台車ばかりか西鹿児島駅も。
ハリガネのちいさいお茶も。
父も母も。なぜかいまごろポロポロとおもいだす。
ポロポロ、ガタンゴトン。電車の規則的で単調な振動だからか。
わたしは50代後半で家族の記憶すら、なくしていた。さっぱりと。


普通電車の減速。
アミに入った「冷凍みかん」まで思い出したところで、もより駅に着いた。父の持ち家の。
おもに片付けのため週2回。ゴミの日にあわせて通うことにしたのです。




洗礼・ゴミのチェック


独居老人・87歳の父。衣類・生活雑貨の品目・種類は、すくなかった。はんたいに、おなじモノが、たくさんストックしてあった。


たぶんに忘れたのだろう。
よくある年齢的なもの。
もらえるものは、もらいます。
きれい好きの父、ゴミ袋のストックがすごかった。


それで先週、うすい夏ぶとんをギュウギュウ押しこんだのだが。
普通ゴミ(無料回収)に捨てた。
広告の紙ゴミにくるんだはずなのに、見つけられてしまった!


下町のゴミ出し。管理人さんがゴミ袋を開けてチェックなんて、テレビや雑誌の中だけのはず。
これが一軒家か!


季節はずれの夏ふとん。
たしかに、手に持ったら化繊の重さ。
ふにゃふにゃゴミ袋。
不審きわまりない。
うちしか考えられない。逃げれない。
悪いことはできないものだ。 




電話番号おしえとってや

地域のリーダー、Sさんに連絡先を聞かれる。いたしかたなし。
「ふとんは、普通ゴミと違うねん。
有料で200円やさかい、申し込んでウチで出しとこか?」


なんと、有料回収の金額まで。


「最近な、このへん外国人が増えてな、ようけ(たくさん)住んでんねん。
ゴミの曜日も知らんし。」


それでゴミに敏感になるのか。
申しわけない。すみません。
そういえば公園の前に、ゴミ袋やらカバンやらが散乱していた。


「200円ですね、わかりました。しぶんで責任もって処分します。
ご迷惑おかけしました。」


「ほな、よろしゅう(よろしく)。
せやせや(そうだ)、お宅の電話番号おしえとってや」


電話番号と引き換えに、夏ぶとんのゴミ袋を受け取りました。
Sさんに、ペコペコあやまって父の持ち家に入る。
もしかしたら、父もゴミ出しの曜日とか、分別をまちがえていたかも。Sさんは外国人といってたけれど。
ご近所さんに迷惑かけてたかもしれない。




細心の注意を

二度と失敗は、すまい。
ハサミでヂョキヂョキ、夏ぶとん。
中身の綿は化繊なのでラク。
カットして原型を、とどめずに。


とにかく、家にはふとん類がおおい。
押し入れに「客用ふとん」が何組も。
父は、コミュ障だったのに。
おまけに「客用ざぶとん」も。
とりあえず押し入れから出しておく。


そして夏ぶとんを、ハサミやカッターナイフで、ギタギタに切りきざむ。
手が疲れるまで。
ヂョキヂョキ。ギタギタ。
単純作業は電車の音のように。
なにかを思いだす。


そうだ。寝台車の、お水コーナー。
お年玉袋みたいな「紙コップ」があった。ゴクゴク、すぐ飲めた。
ものすごく冷たかった。
なんでだろう。
クーラーが、きいてなかったのかな。
トイレの横かな。中かな?
いや、冷房ってあったっけ……。


ハァ、ハァ。重い。
夏ぶとんは化繊で、うすかったが「客用ふとん」は、ズッシリあつい。
昭和の真綿。よくいえば、コットン。
たしか平成からは「羽根ふとん」が主流。ふとんも軽くなったものだ。



「客用ふとん」の古さと押し入れの空気で部屋が暑い。
西向きの、ちいさな一軒家。
ここに通って、自分の手で「重いふとん」をこまかく分解した。



何週も、何週も。電車に乗って通う。
お金を払って【粗大ゴミ】に出せば、一回でスッキリ、しかも数千円ですむのに。


原型をとどめない「客用ふとん」をゴミ袋にザクザク入れる。
そして無料回収のゴミ、不用品も。


紙ゴミ・丹頂チック半ダース・ショルダーバッグ・インクの出ないボールペンの束・電気コード・ビデオ類……。 
(自治体により分別いろいろです)




混ぜこぜのゴミ袋、これで大丈夫。


まずゴミ出しで、つまづいた。


これでは電気・水道は止められない。
「ざぶとん」も、みんなちいさくなって無料回収されていった。


ちいさくして捨てる。
まだまだスッキリしないが。


あらかたゴミ回収が終わった。
つぎは「お金関係」にとりかかる。


帰りの電車で右手をさする。
裁ちバサミの重さに。


(つづきます)

金曜日の投稿は
「親の持ち家」


いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに


さいごまで お読みくださり
ありがとうございます。




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