紫月海/oinorihakuai

紫月海/oinorihakuai

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2022年10月 自選十首

 2022年10月 自選十首   紫月 海 ありがとう夢に来てくれてありがとう船をめっちゃくちゃにしてくれて /日経歌壇穂村弘選2022年10月1日 ぬひぐるみパンチはだかで交はす夜に二人して見る滅亡の夢 /うたの日2022年10月25日『交』改作 いつしよにこはれてしまはうなんて簡単に言ふなよ、倫理、凪ぎすぎの海。 /うたの日2022年10月17日『倫』 傘立てに梅干しのたねが詰まつてるみたいなずれで救はれような /Twitter 連作「かがよふ」2022年10月0

    • おほいなる手

       おほいなる手   紫月 海 おほいなる手が咲きます。咲かせる、 あなたを 咲く、 咲くsuck... おほいなる手は 臨月 に咲くんだよ、 虫さん (みごもらせて、あげませうか?) ころして、 あげませうか? 性の死を 生の詩を塩…… あげたくて 壁一面にあなたの 標本を ならべたいのです……展翅 天使 添死しても いいですか? あゝ、行かないで (烏賊) 以下、 凪いで…… 骨を持つてゐますか? 骨を、 持つてきてくれ ましたか? いつ死んだつていいのです すりきり

      • 紫月海短歌生命半年間の四首自選 2022/4/30-

        絵の上に展翅せらるる蛾の右のはねはかすれてぱあ すぺく、てぃぶ /うたの日07月08日『絵』 花の名と重力をもつ少年の退院ののちのしろたへの朝 /うたの日08月27日『院』改作 水の満つる小さき花瓶のさえざえと 触るればみづの硝子を抱く /アイドルマスターシャイニーカラーズ 幽谷霧子誕生日記念09月23日 ありがとう夢に来てくれてありがとう船をめっちゃくちゃにしてくれて /日経歌壇 穂村弘選 2022年10月1日

        • 短歌十首連作「誕生石」

           誕生石   紫月 海 こんなにも危ふい日にはジャムを塗りこんがり焼いた部首になりたい 生活を詩にすることの仄暗さ空の美術館のごと積もり 草原の比喩においての「燃やす」とは心に城を建ててゆくこと 数学は青で国語は赤といふ感じで塗り分けられた労働 カンヴァスは偽悪で満ちてゆくけれど命令形を授けてあげる どちらかといへば羊のメエであり下から見てもきみの革命 SAVE MONEYはあまりにも些事アスパラを明日会ふひとのために焼いても 仮分数のごと秋雨の降りやまぬこと

        2022年10月 自選十首

          短歌連作「Nuance Couleur」

           Nuance Couleur  待つ歩む寝る待つ覚める歌う待つ東京にあって待つもまた (こい) ***     結い髪をゆらりゆるがせ電線と影踏むきみは誰を待つのか かきごほり 染まれる舌にあかねさす重ぬる色を希ふべきかは     きみが廻っていてくれるなら何色の風でもかまわない かざぐるま しづごころ揺るるバスにてとなりをり不理解さへも伝へあふ肩     くれないのフードコートの造花さえ萌え出すようにきみを見ていて 秋しぐれのぬくき匂ひに想ひ出づるきみよわが

          短歌連作「Nuance Couleur」

          短歌十首連作「管制室」

           管制室   紫月 海 ゆきすぎた空を戻つてゆく鳥が一瞬レンズのやうにふくらむ 教会を色で覚える ラブコメディ コンピュータから進化を教はる 放棄された島の名前で思ひ出す給食 手のひらの味だつた ビブラフォンのたうつやうな夕暮れが狭義のあいまいさで始まつて 吐く方から煙草を咥へさうになる 管制室 きな粉が空に舞ふ 脚韻を踏んでぐだぐだ叱られる/市長の中学時代の恋 抱きしめるキュウリの謎と白波をクリアファイルで遮つた 餓死 CiNiiにきみの名前を問ひかける0秒で夜空が

          短歌十首連作「管制室」

          詩「peak out」

           peak out   紫月 海 私たちは彼らに 恭順服従隷従 します 優先席 ピーク時には三人の 胡蝶蘭 がここを訪れます 寛解 ピーク時には三十億人のアルファ・ケンタウリがここを訪れます ピーク時にはnull人のびしょ うじょがここを訪れます 人生五十年 ピーク時には三千人の観光客を こころ おと ずれます ピーク時には三千兆人の〈あしびきのやまどりのをのしだりをのながながしよをひとりかもねむ〉がここを訪れます 私たちは彼らを恭順服従隷従 し ます

          シャニマス詩歌部第十二回歌会解題

          「服」 Attraction 夕の微風をふくませて制服ふわり追いかけてゆけ [付記]芹沢あさひ あさひの新規 PSSR カード「光は光へ」モチーフです。Attraction は詩歌部 Discord 評チャンネルの椋鳥さんのご指摘通り「引きつける魅力」と「見せ物・アトラクション」の両義を持たせています。 あさひの世界をアトラクションのように捉えている感覚と、あさひ自身の人を引き付ける魅力とを示す枕詞的な使い方です。 「ふ」の重なりで浮遊・高揚感を演出したかったのです

          シャニマス詩歌部第十二回歌会解題

          2022年08月・09月 自選十首

           2022年08月・09月 自選十首   紫月 海 だつてきみから生まれたかつた秋の日にフーセンガムで海へ都庁へ /Twitter 09月28日 たれにとつても恋はnuance こみつくの十色のこひに恋ふる吾も居れ 杜野凛世/シャニマス詩歌部第十二会歌会『十』 09月25日 「安楽」の語を思ひけり馬酔木なすひとにけものに等しきねむり 幽谷霧子/シャニマス詩歌部第十二会歌会『酔』 09月25日 水の満つる小さき花瓶のさえざえと 触るればみづの硝子を抱く /アイド

          2022年08月・09月 自選十首

          2022年07月 自選十首

          ハイコンシャス・ゴリマッチョらに連れ去られゴリ宮殿に着いてしまった /日経歌壇 穂村弘選 07月09日 あの「きみ」はわたしのことじゃないらしいぜんぶお食べよバカケルベロス /うたの日07月27日『想像上の生物』 イノセンス/ノンセンス 踏む、夏の雪 意味ならあとで降ってくるから 七草にちか(アイドルマスターシャイニーカラーズ) /七草にちか誕生日記念 07月26日 シロクマが暑がっている自販機に冬の動詞をうち込んでいく /うたの日07月02日『暑』首席 水の名の歌を

          2022年07月 自選十首

          川柳 7/11

          幼児期は人類であるほうがよい あ行に蚊 座布団と元座布団のラグビー部 本物の落雁として銃火器が 頭頂部ではアニマルおかし 先生はクルンテープじゃありません ミミズから大膨張の末のLAN 沁みてくるCaps Lockの朗詠の ファームウェアふりさけ見れば教養部 点と線と面と時間と毛むくじゃら 一族郎党POS対応 下を向くことをアリスにゆるされて

          短歌 2022/06 自選十首

          ホモサピエンス展示せられる街中に踊りてけものの孤独を思ふ 芹沢あさひ/シャニマス詩歌部第十一回歌会題詠『独』首席(改作) かき氷夏色の舌を見せあへば夢見てしまふ混ざる紫 /うたの日6/16テーマ「赤/青」 あな遠や がたんごとんに別たれてわがはつこひはわれにかへりぬ /うたの日6/5テーマ「遠」 待つ歩む寝る待つ覚める歌う待つ東京にあって待つもまた (こい) 杜野凛世/シャニマス詩歌部第十一回歌会題詠『覚』首席 野良猫の喧嘩は綺麗 言い訳のいらない場所で花になりたい

          短歌 2022/06 自選十首

          シャニマス詩歌部第十一回歌会解題

          書 夕景は草虫たちの箴言集 僕らの息がかたどる書影 ノクチル 「箴言」アフォリズム。いわゆる格言、いましめとなることば。偉い人が教訓めいたことを言い切る、堅苦しいイメージもあるかもしれない。主体にとって草虫たちがうごめく夕景はしかし、どこかユーモラスな箴言たちの集積のように感じられた。「僕ら」はその光景に立ち、呼吸している。その呼吸は箴言たちを閉じ込め、一冊の本の書影に綴じてゆく。 ノクチルの閉じたイメージを持つ関係性と、箴言集を綴じ、閉じ込める書影とを重ねた歌。 結 ビ

          シャニマス詩歌部第十一回歌会解題

          短歌 2022/04,05 自選十首

          紫のライターはよく燃える 夜 捨てないでいて消さないでいて Wちやんは飛んぢやつた Alexa 天使はいづこにうどん食ひをる 人類愛囁かれをりホモ・ネアンデルターレンシス東京を喰ふ 徒長せる枝も手折らぬその指に想像せらるるいと痛き自慰 例ふれば踏切待てる数分に不言花(いはぬがはな)の徒花ぞ散る 細やかに下駄の歩みを進めゆく赤子のきみのはだしを想ふ 結婚の決め手はポケモンのあだ名「あほちゃん」愛すきみがすべてだ この歌に私も君も出てこない ばらばらになる 花弁 恒

          短歌 2022/04,05 自選十首

          無明

          カルテジアン無明は痛む カルテジアン無明は痛む 痛い 瞬間を偽装する 透明な 動作を偽装する ()番目の 色彩を偽造する 忘れたままの道理がある 忘れたままでいてもいい道理がある それは駆け上がる 喃語 それは駆け上がる 極彩色 の コエ という字が カケ ないウテ ない (カルテジアン無明は) 痛む 暗闇を偽装する ()回目 する 瞬間が動作したことはある 瞬間が動作したことはあると仮定せよ 瞬間が動作したことはあると仮定した()回目した 自壊 痛い が()色す

          短歌 N(5)

          薬旅 海辺の街が終着地 とどのつまりは果てのある庇護 夜の蝶 たましい抜けてゆくようにまざりあう色 肌の稜線 黒山羊の涙のうつす荒野さえ我がこころには草満ちて見ゆる 内言の海には絶えて貝あらず 黙するままに溺れ死ぬわれ 貸し畑のととのいていて僕は僕 きみにはきみの吐き気あるべし 人類の始まりし場は徒歩二分 あなたさまにも開かれています