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先輩がいなくなった夏。

「Fさん、今月末で辞めるんだって。もう最終出勤日終わっちゃったみたい」

不意に、上司から入ってきた情報は、私にショックと驚きを与えた。
私は情報網が広い方ではないから、こういう情報が入ってくるのはいつも遅い方だ。しばしば、情報が早い友人や上司の恩恵にあずかっている。

Fさん、辞めちゃうんだ。転職かな…

このご時世、最後に顔を合わせて会ったのはいつか、思い出せない。
静かに去って行かれたら、自然と気が付くのはずっとずっと後になっていただろう。

私はまだ繋がっているであろう職場のアドレス宛て、一文字一文字、文章をしたためる。

・・・

Fさんに初めて会ったのは、私が就職してすぐの頃だった。

なぜ会ったのか、もう覚えていない。何かの飲み会だっただろうか。
Fさんは、日に焼けて健康的で、バリバリの体育会系といった印象だった。

「若手でスポーツやってるから、興味あったら来てみたら」

まったくのインドア派に見える私にも、声を掛けてくれた。
就職して誰も知り合いがいなかった私は、そうして集まりに参加するようになり、だんだん人脈が広がっていった。

最初のきっかけをくれた面倒見の良い人たちのおかげで、私はなんとか生きていると思う。

・・・

「人生は1回しかないから、やりたいことに挑戦しようと思った」

数日後、返信のあったメールにはそうあった。さっぱりした物言いが、実にFさんらしかった。

直接伝えられなかったことを詫びるとともに、なるべく静かに去りたかったとも書かれていた。去り際が仰々しいよりも、爽やかで後腐れがない態度は、むしろ気持ちの良いものに映った。

もうFさんは、次のステップに向けて歩き出している。
そのことが、強く感じられた。
Fさんがいなくなることは残念だけれど、私まで勇気づけられるメッセージだった。

・・・

「人生は1回しかない」…そこに強く共感した。

挑戦して、失敗して・・・それを繰り返して学び続ける人は、素敵だと思う。

Fさんの言葉から、自分に問う。

私は、日々挑戦できているだろうか。


見上げた空には、夏のもくもくした雲と、秋の気配がする薄雲が混ざっていた。

夏休みの目標の振り返りみたいに、また夏の終わりにこの問いを、何度か繰り返すだろうか。


Schönen Tag noch! 😄