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語彙力をなくす空間

つい最近、日々の積み重ねで全部がすごく嫌になった時期があった
すきな仕事も猛烈に嫌で笑えない
プライベートでも何もしたいと思わない
何考えてもわくわくしない
「時間を無駄にしている」そう表現する以外ない状態になっていた

一回きちんと立ち止まろう
自分が何をこんなにも嫌で辛いのか
どうせ気分だろ、
ホルモンバランスだろ、と蔑ろにせず向き合ってあげようと
なんの計画もせずに2週間のお休みをとった
気持ちを立て直すにはどうすればいいのか考え
Googleマップに行きたい場所として立てていた旗を回収しに行くことにした

乗り換えがちょっとめんどくさくて駅からちょっと歩く、馴染みのない場所にある(本当はそういうのもすきなはずなんだけど)
ずっと行きたかったカフェを選んだ

とれぽ珈琲

人気店なのだがその日は天気が不安定だったせいか、すんなりとお店に入れた
私が入店するちょっと前から降り出した雨が映し出される大きなガラス窓、吹き抜けで天井が高く、大正時代から受け継がれたその建物は、長く沢山の人の心の中で生きてきたことを感じさせる空気を纏っていた

笑顔が素敵な店員さんに、ラテとぷりんとフィナンシェをオーダーし、席に着く
ハンドドリップのコーヒーのいい香りに包まれ、大粒の雨に打たれて揺れる木々の葉を見ながらオーダーしたものが運ばれてくるを待つ時間

そして運ばれてきたぷりんの上に乗っていたのは缶のチェリーではなく、さくらんぼ
こういうこだわりに気付く瞬間は私にとって、人の情熱に出会う最高の瞬間だった

人が気付くかどうかじゃない、人がどう反応するかじゃない、
自分がどうしたいか、何を良いと思っていて、それをどう表現するか
こだわっていることを押し付けず共感を求めず、ただ自分の良いと思うものに誠実に、こだわりは誰かに渡すものではなく自分のものなんだと
そして同じ価値観の人がそれに気付いて傍にいてくれれば充分なんだと

日々少しずついろんな思いが生まれ絡まっていくことに焦って、解こうとがむしゃらに引っ張って引きちぎれそうになっていた心の糸が解けていく

日々に追われて自分が何を大事にしててどう生きたいかわからなくなっていた、それを思い出せた瞬間だった

雨が上がってから店の外に猫が現れた
窓が大きいからどこをうろうろしてるか見える
かわいい、
ぷりんも、ラテも、フィナンシェも、おいしい、
空間、最高、猫、かわいい、しあわせ、
(バカっぽいけど頭の中本当にこれだけ)

店員さんにありがとうを伝えたい
人は心から満たされると感謝の気持ちを伝えずにはいられないんだな
そう思った時、自分が働いていて私の目を見てお礼を伝えながら退店していくお客さんの顔が浮かんだ

「言う」 と 「伝える」 には大きな差がある
お礼を言う のは人によっては最低限のモラルでただの挨拶かもしれないけど
お礼を伝える のは心からの感謝を届けたいと言う意思の表明だと
私は思う

Googleマップの旗を「行ってみたい場所」から「お気に入り」に保存し直す

仕事したくなってきた
おかえり自分。

いろんなことを気付かせながらも、緩む時間を提供してくれた
とれぽ珈琲さんに感謝。




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