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いとまん旅(3つのビーチめぐり)

私のひとり旅では、全行程だけでなく旅中の次の日ですら予定を決めることは基本的にない。いつも体調や気持ちとお天気次第で、何かしらの想いは馳せるが当日まで完全な「予定」にはしない。また「予約」というのも旅中はどうも苦手だったりする。強制力が極力働かないようにしたい。やりたければちゃんと起きられる。

けれど、何しよっかなぁ。。。と前の晩にぼんやり空想する時間はキライではない。その日は、前日の久高島帰りの日焼けと移動距離の長さを中和するため、壺屋のやちむん通りから雑貨屋巡りをし、海沿いの公園で猫に囲まれながらのんびり本を読んでいた。明日はレンタサイクルもいいなと思い、レンタサイクルの場所や料金、ちょっとしたコース紹介などをあてもなくネット検索する。ホテルのお姉さんに情報をもらうと、前日に予約が必要とのこと。そして赤嶺駅にステイしているので、走るなら南部がいいな、とさらに検索を進める(前記事の下リンクご参照ください)。約60キロで女性でも可能。標高差は意外とあるよう。

歴史巡りもいいな、出来れば人があまりいなさそうなところにいたい。そんな空想をしながら、今度はMapアプリで指を動かしながらぐるぐる南部を移動してみる。しかし、レンタサイクルだと観光ポイントが多すぎて、効率のよいコースや、あそこもここもと欲が出てしまい、一つの場所に長く時間を使えない気がしてきたので、今回はレンタサイクル案は却下し、南部の「東」とエリアを限定して、私のトレイルをしようと考えた。

これまで、富士山一周の一部、東海道の宿場町歩き、ノルウェーで登ったトレッキング、オーストラリアのニューカッスル付近、などなどウォーキングやトレイル旅の経験がある。整備されていようがいまいが、自分の足でしっかり歩くことで感じる距離感、というのが一番大切のように感じている。なのでオリジナルのトレイルをしてみようと思ったわけである。

翌日は、天気も気分もすごく穏やか。のんびり気ままな朝を過ごし、まずは「白銀堂」までバスで移動した。朝9時すぎに着いたそこは「石」のエネルギーに満ちていた。石が多い場所にくると、北欧の街で感じたちょっとした寒さのような、なんというか歯の奥と踵の中がヒヤッとする感覚がある。神社のような場所かと思ったが、荒々しさが逆に空気に神聖さをもたらしているような「祈る」場所としての空間だった。なぜここにこんなに荒々しい石や巨大な岩があるのかとすごく不思議だった。地図を見ると、海岸までまだ距離がある。だけど海抜はそんなに高くなさそうだ。2Dマップでは分からないがこの裏は丘のようである。不思議だったので、メモをして後程ゆっくり調べることにした。

昼食までまだ時間があるので、「塩崎ビーチ」まで歩いてみることにする。大きなコンクリートと屋根の建物に出くわし驚いた。なんの建物だろう。

土曜日の朝のビーチ。犬の散歩をする人がいれば、海に下る階段と東屋の下でファストフードを食べながらはしゃぐご家族がいた。そんな地元の人の自由な朝に混ぜてもらいながら、ぼーっとする。朝からこんなに綺麗な海が、というより日常の全てなのかもしれない。そして驚いたのは、海の反対側に立つ、「しおざきタウン」と呼ばれる、真っ白な壁の新しい家々が綺麗に立ち並ぶエリアだった。コンクリートに色が塗られている。家々はとても素敵でモダンだが、本土のようなインスタント感はないようだ。家々のこだわりが垣間見える。合間の整備された小道を歩くと、庭のデッキのような場所でくつろぐ人やペットと遊ぶ人がいた。また「しおざきタウン」とメモを残す。

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一度行ってみたかった「南部そば」で11:00の開店を待ち、行きつけにしているような多くの家族連れと同じ食を口にして満たされる。

次は「北中城ビーチ」を目指す。案外近いものである。背よりも高いサトウキビ畑に入り込むとその奥の道に青い海の線が見えてくる。いい景色だ。幸せだ。どうビーチに出ようかな、と考えながら歩いていると車の気配を感じたので、左に寄った。すると日焼けしたおじいちゃんが、「あんたどこ行く?」と声をかけてくれた。「今からワシもそこに行くから乗っていき」(正確な沖縄弁は記憶にない)と言ってくれたので、やったー!地元の人!と嬉しくなり、お言葉に甘えてその軽自動車に乗せていただいた。ここがうちの畑だ、と海の目の前の畑を見せてくれ、これからお昼ご飯だから畑仕事をしているばあさんを迎えにきたとのこと。こういう生活感全開の時間が大好きだ。声をかけていただいたことに感謝。

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2つ目のビーチに到着。浅瀬の青に引き寄せられるように歩く。ビーサンになる。砂浜というよりゴツゴツした場所も多い。雲と風が、一つの風景に変化を生み出す。太陽が出てきたときに魅せられる青の色の美しさにはドキッとするほどだ。

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干潮時間のお昼なのでどんどん浅瀬を進めて、朝夕は埋もれているだろう場所も歩ける。目の前の離島にも行けそうだ(エージナ島という名前だそう)。そのまま、裸足になりあてもなく砂浜を南下する。泳いで日焼けした高校生くらいの男の子、岩場で釣りをする子、車にタープを張ってる人たちも多かった。きっと地元の人の多いビーチなのだろう。今は11月。やっぱり沖縄の海と気候ってすごい。
ひたすら歩く右側の海の上には、ひっきりなしに那覇空港への飛行機が通過する。まだまだ日差しは強い。

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そのままサンゴ道を進んでたどり着いたのは3つ目のビーチ、「名城ビーチ」。今は地図には載っていないが、少し前までは遊泳場所として開放されていたようだ。反対側は大規模な工事をしている。何ができるのだろう(リゾートホテルだそう)。誰一人いないビーチ。目の前にはすごく綺麗な秋の海。よし。木々を見つけ日陰があったので、そこに腰掛けて一人だけの海の時間に身を浸した。強い風のおかげで、目の前の景色が瞬く間に変わる。

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しばしの豊かな時間を過ごし、元来た海岸沿いを戻る。真後ろから強い日差しを浴びる。まだ先ほどの二人の高校生男子もいた。またサトウキビの道を戻ってもよかったが、同じ道を歩くなら、違う道を行ってみたい気持ちは普段からあるので、地図に道はないがそのまま砂浜を北上してみることにした。満潮の時刻が近づく波が迫る細い砂浜を歩き、多少の不安の中見つけた階段を登るとそこは、


…なんと先ほどの「しおざきタウン」の一角だった。

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この冒険勘と発見の楽しさは、何にも代えられない。ここに続いてたのかー!と裏道を発見したかのような喜び。このエリアの人たちはこちらのビーチにも易々と出てこれるのかと。さっきも同じところを歩い時は、これら防風林と思われる木々の向こうに海があるとは全く思っていなかったからなおさら驚いた。そういえば、沖縄って潮の香りがあまりしないし波の音も近くに行かないと聞こえない気がする。

まだ脚は元気だ。すごく歩きやすい町だ。331号線を北上し、疲れたらバスに乗ることにした。先ほどのコンクリの建物は市役所だと知った時は意外すぎて驚いた。そこを通り過ぎ、港をまたぐいくつかの橋を渡ることになった。
久しぶりの高所のゾワゾワする感覚があったのは、糸満漁港の橋の上だった。真下の海の色に吸いこまれそうで、足が少しすくんだ。そんな私を横目に学生が頑張って自転車で通り過ぎていく。彼らは毎日見ている景色なのだろうか。景色に感動しながらも強風に煽られ、フワフワした気持ちで橋を越えた。

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小さな公園を目標に歩く途中、大きな交差点で信号待ちをしているときだった。高架下の反対車線に「道の駅」ののぼりが見えた。もう少し歩けると思ったが、喉も乾きいたので、ローカルマーケットも見てみようと方向転換した。それが、偶然にも「2019トリップアドバイザー第一位」の「道の駅いとまん」だったのである。

テンションが一気に上がる。ひとつ300円ほどの様々な新鮮な魚介が並ぶ中、レモンを絞った生ガキをクっといただく。たまらない。そして、いつぞやかに調べたことがあった、生の「アセロラの実」を発見する。アセロラの実は、日本では沖縄でしか栽培されておらず、2,3日で傷み始めるため市場に出ることはほとんどないらしい。その土地にしかない「恵み」に巡り合わせていただき頭が垂れる思いがした。一度ジャムやジュースを作ってみたい気持ちに駆られた。そして海鮮はいつか家族や大切な人と来た時に、いろんな種類を頼んだりして、ゆっくりシェアしながら食べたいなと空想しながら、満たされた思いのままさらに北へと進むことにした。

地図を見ると、前回の台風で身動きが取れなくなったときに来た「アウトレットモールあしびなー」がもう近い。よし、そこまで歩いてバスに乗って帰ろう。まさか二回目があるとは思わなかったが、これで今日の旅の終わりが見えてきた。すごく心もお腹もいっぱいで、いい一日だった。

それが私の3つのビーチを歩いてまわった糸満市のたび。

糸満市に限らず、南部の町にとても興味がある。歴史、史跡、伝統、祭り、自然とともに生きる、人々の生活。もっともっとリアルに時の流れを感じてみたい。

次は「つれづれ」と私にとっての糸満市について書いてみようと思う。


静水庭🌿


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