ラムネ

夏だった
祭囃子が遠かった
提灯が藍色の空に映えた
汗ばむ浴衣とすれ違った
綿あめが髪にこびりついた

人いきれ発の臭気が頬を撫ぜて
迷子の泣き声が耳に溜まって
袋詰め金魚と目が合って
そして最後にラムネだった

瓶だ、アレは瓶だ
雑な水色が苛立ちを誘い
炭酸と共に衝動が湧き
アスファルトを頼った

ガラスが散って
醜く割れて
我に返って
顎が浮いた

転げ出た
ビー玉が  拾い上げた
私はビー玉が欲しかったのだと
奥歯を閉めたまま呟いた

指が切れた
血を舐めた
夏だった
祭囃子が遠かった

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