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真っ赤な頬

私が社員旅に行く日の朝にいなくなった母は

ひとりで近所の公園に行き
そこで転んで
顔の片側の頬全体をすりむいて
当分の間、通院が必要になった

歩いて15分ほどの
母が救急車で運ばれた病院までは
足元がおぼつかない母のために
行き帰りはタクシーを使った

病院にいくと
頬のガーゼをはがされ
傷がまだ乾いていない
真っ赤な頬があらわになる

消毒をして
薬をつける

どれだけの痛みに耐えているのか
小柄な母が辛そうに顔をゆがめる姿に
心が苦しくなる

代わってあげたい
そう思わずにはいられなくなる瞬間だ

そして治療を終えて
またガーゼをかぶせて
ホッとして家に帰る

そうやって
何度か通院を重ねるうちに

段々と頬のかさぶたも固まって
痛々しさが薄らいでいくと

次第に母の表情も
穏やかになっていった

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