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暗闇稽古

 ずいぶん陽が短くなった。

 朝から家族で外出していて、帰宅したのが午後5時少し前。予報によれば日没時間は4時半ごろだというから、辺りはかなり暗くなっていた。

 が、もはやボールを投げないでいると収まりが悪い身体になってしまった私は、軟らかいキャッチボール練習球だけを持って庭に出て、ネットスローを試してみた。頼りなのは月明かりと、庭とは逆向きに照らしている街灯1本から漏れる光だけ。
 いつものように10メートル先のバッティングティースタンドに白球を置き、狙って投げる。
 最初はさっぱりコントロールが定まらず、難渋した。頭ではわかっていても、球が浮いてしまうのだ。いかに普段、視覚から得ている情報が大きいかが実感できる。
 それでも肩ができてくるにつれて、自然とコントロールが定まっていくから不思議だった。あまりに暗すぎて変化球の動きはまったく見えなかったが、ツーシーム、スライダー、カッターは何度ずつか的に当てることができた。
 暗闇では視覚情報が大きく減じるぶん、身体の動きに自覚的になりやすいのかもしれない。とくに感覚が伴わない日にはまったく決まらないシンカーが、暗闇ではなぜか調子が良く、低めに決まったから不思議だった。

 たまには暗闇稽古も悪くない。

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