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夢の時間

 すんなり眠りにつけたためしがない。
 夜、布団に横になると、いつも決まって10分後くらいに目が覚めるのだ。
 起きる直前は夢を見ているか、金縛りに遭っているかのどちらか。
 夢や金縛りというのは眠りが浅い「レム睡眠」のときに現われるというから、うまく休めていないのだろう。
 しかも不思議なことに、寝入りばなの夢は大長編だったように感じられる。内容はさっぱり覚えていないのだが、毎回、わずか10分のうちに見たとは思えないくらい、長い長い濃密な時間を過ごした実感と疲れがあるのだ。場合によると、連夜でシリーズもののように続いているデジャヴ感まである。そして目覚めて枕元の時計を見て、まだ10分しか経っていないことに毎度ながら驚く。そんな夜を繰り返している。
 10分という時間は短いようで、じつは相当長いのだと思う。物理的に秒針が10回転するあいだに、意識のうえでは何日も、いや何年もに相当する濃密な時間を想像、体験することができるのだろう。たとえば10分で読める短編小説に流れる時間のリアリティーは、現実における秒針の10回転と等価ではないかもしれない。あっという間に感じることもあれば、まだるっこしく感じることだってあるだろう。
 寝入りばなの夢は気が休まらないからまったく喜べたものではないが、うまく眠れずに過ごす10分間の濃密な夢は、ある意味、創作の理想形でもある。いつか、ああいうものを書いてみたいものだ。内容はさっぱり覚えていないのだが。

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