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やはり俺の青春ラブコメを書くのは難しい。

 試しに見切り発車で原稿用紙五枚ほど書き始めてみたラブコメを、たったいま全消ししました。

 私の場合、一時間や二時間かけた原稿でも納得いかなければ全消しするのは大して珍しいことではありませんし、むしろ消した分だけ勲章みたいに思っているふしがあるので痛くも痒くもないのですが、それにしたって今日は疲れました。

 ラブコメ、やたらと難しい。

 なにが難しいといって、主人公の造型が難しすぎるんですよ。

 男性向けにヒロインを立てるラブコメって、基本的に主人公は読み手に共感されやすい存在――つまり、どちらかというとイケメンではなく、クラスの人気者ではなく、爽やかスポーツマンではなく、底抜けに明るく快活ではなく、お金に恵まれた富裕層でもない――言ってしまえば、勉強はそれなりにできるかもしれないけれど、根暗で地味で朴訥でわりと貧乏、スクールカーストにおいては下位に属する、いわゆる「陰キャ」が王道とされているわけです。
 ひと昔前のラブコメ漫画では、これを満たす要素として「浪人」が都合よく使われていました。『めぞん一刻』とか『ラブひな』とか。

 考えてみれば当たり前の話で、イケメンが美女と両想いになって付き合うなんて道理も道理で、誰も読みたいとは思わないでしょう。
 平均並み、いやそれ以下のどこにでもいそうな男子が、信じられないほど高嶺の花の美女を手に入れるからこそ、読者はしばし現実を忘れるエンターテインメントとして楽しめるのです。

 しかし、ここでひとつの問題が生じます。
 主人公を魅力的に描けなければ、ヒロインが彼に惚れる必然性が出てこないのです。
 この矛盾が、書いていてどうにも堪え難い。

 割り切ってしまえば、街角で突然ぶつかった女の子でも空から降ってくる女の子でもいいのですが、主人公に「都合のいい」ヒロインを作ること自体は可能ではあります。
 実際、見ていて「男性に都合よすぎだろう」と感じるラブコメ作品は、世の中にたくさんあります。

 しかし、そうなるとあとは「いかに可愛いか、萌えるか」というヒロインの類型だけで他作品との差別化を図らなければならなくなりますから、道はますます険しくなります。

 リアリティーを求めるならば、やはり女の子が主人公に恋をすることに説得力を持たせなければなりません。
 もちろん、そのためには作者が女心を理解できている必要があります。
 これは相当のジレンマです。

 たとえば『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』では、詭弁を弄することによって、これを笑いに変えて力技でねじ伏せていますし、ヒロインたちが主人公に心を寄せていく過程も丁寧に丁寧に描かれています。
 これはやったもん勝ちの発明でしょう。

 たぶん、別のアプローチで新たな力技を発明することが、次世代のラブコメで他作品と差別化を図っていく活路となるのかもしれません。

 ああ、そんなことで悩まなくていいくらいのイケメンになりたい。

 

 

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