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旦那にごはんを作らせる(ことができるかもしれない)ゲーム

 噂には聞いていたが、想像以上に素晴らしいゲームだった。

『天穂のサクナヒメ』である。
 どんなゲームか、そのジャンルをひと言で表現するのは難しい。
 このゲームには、大きく分けてふたつのパートが存在する。
「米は力だ」をコンセプトに、毎年の田起こしから収穫、精米までを行なうシミュレーションパート。
 そして、育てた米の出来によってレベルアップしていく主人公サクナヒメを動かして鬼を倒す横スクロールアクションパートである。
 ただ、公式の商品概要に「和風アクションRPG」と銘打たれているように、アイテムを収集して武器や技を強化していくRPG要素も多い。おまけに稲作や狩猟で得た食材で、毎晩の献立まで考える。
 要はいろんなジャンルの良いとこどりをしたゲームといえるだろう。

 潤沢な予算を使って大人数で開発に当たるブロックバスター的な、いわゆるAAAクラスのゲームではなく、なんとたったふたりのコアメンバーによって作られた同人ゲームだというから驚く。製品版が品薄で「令和の米騒動」なんて呼ばれていたのも面白い。
 昨年末は個人的にも楽しみにしていたAAAクラスの『スパイダーマン』や『ウォッチドッグス』の続編、あるいは『サイバーパンク2077』といった作品のユーザー評価が軒並み低すぎて購入を見合わせたことから、高評価しか聞こえてこない『サクナヒメ』とは対照的だった。予算と人数をかけるだけがモノづくりではない。秀逸なアイディアと受け手を楽しませる工夫、地道で丁寧な仕事さえすれば、メジャーな売れかたができる。そのことを証明したソフトでもあった。

 序盤は稗や粟で凌いでひもじい思いをしつつ、少しずつ米が獲れるようになってくると増水(雑炊)や粥でなんとか一年やりくりし、毎日白飯を食べられるようになったら、今度は加工品を増やして主菜や副菜、汁物を充実させていく。
 あまりにものめり込んで遊んでいたら、先日妻に、
「うちの食卓にもそれくらい積極的に興味を持ってくれていいのよ」
 と言われてしまった。
 恥ずかしい話、ひとり暮らししていたころから料理は苦手で、だいたいは妻に任せきりなのだ。

 以降、今週は柄にもなく2度も料理をしてしまった。1食目はカレー、2食目は鶏肉のトマト煮と、材料もレシピも似ていてシンプルなはずだったが、水気が多かったり少なかったり、下茹でしても人参がなかなか軟らかくならなかったりと、思い描いたようにはならなかった。ゲームのように、そう簡単にはいかないものである。

 旦那が料理をしてくれないとお悩みのそこの奥様、このゲームを買い与えれば、もしかすると作ってくれるようになるかもしれませんよ。少なくとも、日々の食事に自覚的にはなるはず。

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