プロテインはなぜ不味そうなのか?
中年太りが気になりだす歳になってようやく重い腰を上げて日常的な筋トレに励むようになった私は、人生初めてのプロテインを飲んでみて、驚いた。
フツーに美味いじゃん、これ。
ココア味と書いてあるが、まさにココアそっくり。すっきりしたほのかな甘さで美味しい。
プロテインというのは、てっきり不味いものだとばかり思っていた。
なぜ私は、飲みもしないもののことを「不味そう」とイメージしていたのか。
ちょっと考えてみた。
1.ライバルに差をつけろ! 説
思えば学生時代、陸上部や野球部の同窓生がプロテインを飲みながら、
「うわー、マジいー。飲みたくねー」
と苦い顔で嘆いている光景を何度も見てきたことが「プロテイン=不味いもの」という図式を刷り込まれた一因だったのかもしれない。
もし、彼らが飲んでいたプロテインが美味しかったとしたら、いや、少なくとも顔を顰めるほど不味くはなかったとしたら。
ライバルを出し抜くために、わざと不味そうな演技をしていたということはないだろうか?
(ふっふっふ、不味いからお前らは飲むなよ。飲むなよ。俺はこいつを飲んで強くなる。コーナーで差をつけろ!)
とかなんとか、内心ほくそ笑みながら思っていたのかもしれない。
2.とにかく機能を追い求めていた説
プロテインで最も大事なのは、その機能だ。プロテインは、ひたすら筋力強化のために飲まれるものである。よくよく調べてみると疲労回復や、アスリートに不足しがちなタンパク質を補うといったさまざまなメリットがあるようだが、学生時代の私には知る由もない。
もし筋力強化が叶うのであれば、必ずしも飲みものという形態を取らなくてもよかったのだ。注射やら錠剤やら、方法はなんだってよかったのかもしれない。
とにかく味は二の次だったわけだ。
(ココア味? バニラ味? そんなの知ったこっちゃねぇ。俺はこいつを飲んで強くなる。味なんて感じている暇はねぇのさ! 無味。いっそ無味。無味の粉を混ぜた水。そりゃマズい!)
とかなんとか。
3.不味いの飲んでる俺カッコいい説
1と2の複合技。ライバルに先んじて差をつけるべく、周囲がタピオカミルクティーだのダークモカチップフラペチーノだのと騒いでいるなか、ストイックに機能だけを追い求める俺カッコいい……という、いかにも厨二病的な発想があったのかもしれない。
(愚かだな……肥え太った大衆というものは……。俺はこいつを飲んで強くなる。誰も俺には追いつけまい。へっ、お先に失礼するぜ)
とかなんとか。
4.我慢のふりもトレーニング
演技とはいえ痩せ我慢をしていると、なんだかそのぶん強くなったような気がする……ということはないだろうか。
トレーニングというのは、本質的にツラいものでなければならない。そんな思い込みが、プロテインを不味いと錯覚させていたとしたら。
(ああ……今日のトレーニングもキツかった……思いっきりコーラをガブ飲みしたい衝動を抑えて、俺は飲む……飲むぞ……プロテイン……。これもトレーニング、トレーニングなんだ……ぐぐぐ)
とかなんとか。
5.バリウム的ななにか
大人になるとなぜか上司に「健康診断でバリウムを飲んできた」と自慢されることがある。
「君はまだ若いから飲まなくていいだろうけど、不味いしツラいんだ、あれは本当に」
とかなんとか。
苦労話をしているはずなのに、上司はなぜあんなに自慢げに鼻の穴を膨らませていたのだろう。
プロテインも同じような心理で、先輩から代々伝承されてきたのではなかろうか。
(プロテインを飲まなくていい君たちが羨ましいよ、まったく。不味いしツラいんだ、こいつは本当に。できれば飲まずに生きていきたいね)
的な。
6.本当に昔は不味かった
と、ここまでバカみたいな憶測を書いてきたが、どうも昔のプロテインは本当に不味かったらしい。メーカーの企業努力によって、近年ようやく美味しくなってきたというのである。
おかげで今日も美味しくプロテインが飲める。
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