バッティングフォーム試論
目から鱗とは、まさにこのこと。
このほどYouTubeに公開された横浜DeNAベイスターズ前監督アレックス・ラミレスさん(以下ラミちゃん)の動画を見て、信じられない想いだった。
バットの握りかた。
知っていたようで、ぜんぜん知らなかった。
少なくとも、私の少年野球時代のコーチ(といっても、団員のお父さんたちなのだが)は誰ひとりとして、詳しく教えてくれなかった。
右打ちならば左手が下、右手が上。
すっぽ抜けないように深くしっかりと握り、左手主導で振り抜きなさい。
アッパースイングはよくないから、上から叩きつけるように。
それくらいしか教わらなかったような覚えがある。
それが、どうだ。
「バットは手のひらではなく指で支える」
「正しい握りは、指の第二関節を一直線にすることだ」
どうしてもっと早く、誰かが教えてくれなかったのだろう。
先週末の土日に早速、ティーバッティングで試してみて、この握りが最適解であることを痛感した。
これまで、据えもの斬りのティーバッティングであっても何回かに一回は必ずボールの上っ面を叩いてしまい弾道が上がらなかったド下手クソの私が、グリップを手のひらでなく指で支えてみるだけで、滅多に打ち損じなくなった。正面にライナー性の鋭い当たりが飛んでいくし、意識をすれば角度をつけて上げることも難しくなくなってきた。
ラミちゃん、本当にありがとう。
つい昨年までプロの監督を務めていた人の教えを無料で見ることができるのだから、本当に凄い時代になったものだ。信じられない。
ところで、なぜこの握りが凄いのか?
個人的な感触と推論を書き留めておきたいと思う。
なんといっても、左脇(右打者の場合)を締められるのが凄い。
実際にやってみるとわかるが、旧来どおり左の手のひらで深く握りすぎてしまうと、左脇の締まりが甘くなる。しかも右の手のひらまで深く握っていると、トップを作る瞬間に、右肘と左肘とが直角よりも鈍角に開いてしまいかねない。こうなると、ヘッドが下がって打ち損じる可能性が高くなる。
ここでラミちゃんが話していなかった理論の補足をしておくと、社会人になってから趣味で練習し始めた私のフォームは『バッティング メカニズム ブック』(ベースボールマガジン社)に多大な影響を受けている。
この本の要点のひとつが、バットを引いてトップに入る瞬間に「三つの直角を作れ」というもの。
すなわち、
・左肘とバットとの直角
・左肘と右肘との直角
・右肘とバットとの直角
を作れと。
これらの直角は三次元的に交わっている。
左肘がx軸だとしたら、右肘が直角に交わるy軸、そしてそれらと直角に交わるバットをz軸にしろというわけである。
この「三つの直角理論」と、ラミちゃんの教えてくれた「第二関節を揃えて指で支える握り」との相性が、すこぶるいいのだ。ラミちゃん流の握りで三次元的な直角のトップを作ると、身体の機構上の成りゆきなのだろう、左親指がキャッチャー側に引き込まれて左手の甲がピッチャー側に向けて少し立ち、自然と左脇の締まりが導出される。左脇がロックされれば左肩でエイミングがしやすいし、手振りにならず、腰の回転とともに身体の軸に巻きつけるようにバットを最短距離で出していくことができる。
さらに、この握りにすると操作性が格段に良くなったように感じる。
自然とレベルスイングに近くなり、ヘッドが下がりにくい。手のひらより指のほうが細かな調整もしやすいのだろう、思ったところにバットを通しやすくなったような気がする。ヘッドが寝ないから、打球は上がりやすい。
プロは凄い。
こんな単純なアドバイスひとつで、なにかコツを掴めそうな気配がある。
本当に、なぜ誰も教えてくれなかったのだろう。
前掲の書籍をパラパラと読み返してみても、握りに関する項目は見当たらなかった。読んだ記憶もない。
それとも、このことに驚いて興奮しているのは私だけで、本格的に野球に打ち込んできた人たちからすれば「なにをいまさら」と呆れられてしまうような常識なのだろうか。
……などと戸惑っていたら今度は山本昌さんが登場してピッチングフォームの指導を始めたので、もう脳の処理が追いつかない。とんでもない情報社会に突入してしまったものだ。
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