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ロケットや航空機開発にみる「統合化工学」の必要性。

最近の大きな話題のひとつが三菱航空機の撤退と昨日のH3ロケット打ち上げ失敗がある。

金沢工業大学にいると「統合化工学」の必要性を耳にする。
しかしGoogleで検索すると何故か金沢工業大学の「統合化工学 小特集号」しかヒットしてこない。金原勲先生の巻頭言は次にように始まる。
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「統合化工学」とは何か?金沢工業大学において,21世紀COE プログラム将来構想等調書作成にあたり,学内有志教員の議論の中で生まれてきた将来指向であり,その問題意識は以下のように集約される.

「科学技術は20世紀後半において,飛躍的に高度化・巨大化して,多くの人工物を提供することによって人類に快適性と利便性をもたらしてきたが,一方では,巨大システムや技術の脆弱性や非制御性に起因した事故等により,いわゆる負の側面も露呈してきている.この原因のひとつは,科学技術の複雑化・巨大化により,個々の技術者が自らの役割を明確に認識することがますます困難になっていることにあるのではなかろうか.人間に有用な人工物に集約される技術の流れにおいて,個々の要素技術に携わる技術者がこの技術の流れにおける自身の役割を常に意識することが重要であり,この技術の流れを社会環境,人間環境,自然環境,経済環境の中で認識できるような仕組みを作ることができないであろうか.技術者が「統合化」のプロセスの中で,常に自分の役割をとらえられる「しくみ」を方法論として構築できれば,これは要素技術の中に埋没している技術者の意識改革を促すとともに,技術者の復権にもつながるものとなるであろう.」

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なんと、金沢工業大学の有志の議論から生まれてきた将来志向の提言だったようだ。驚きである。

金沢工業大学の研究所が集積するやつかほリサキャンパス

「巨大システムや技術の脆弱性や非制御性に起因した事故等により,いわゆる負の側面も露呈してきている.この原因のひとつは,科学技術の複雑化・巨大化により,個々の技術者が自らの役割を明確に認識することがますます困難になっていることにあるのではなかろうか」

この言葉は今の日本の弱さそのものを象徴しているように思う。

今回の失敗が「要素技術の中に埋没している技術者の意識改革を促すとともに,技術者の復権にもつながる」いいタイミングになることを願わずにはいられない。


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