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大学だから長期的な研究ができた。神経活動を非侵襲で可視化、その実用化に前進。

勤め先の金沢工業大学の附置研究所の一つ、先端電子技術応用研究所では、非常に高感度かつ高時間分解能のSQUID(Superconducting QUantum Interference Device:超伝導量子干渉素子)センサーを開発している。
要するに量子力学を応用して、地磁気の10億の1といった微弱な磁場を数十マイクロ秒単位で計測可能なセンサを開発しているのだ。

と言っても全然ピンとこないかもしれないが、中高校生で習う範囲で言えば、電気が発生する場所には電場が、磁気が発生する場所には磁場が生まれる。

この論理で言えば、人間の神経活動も電気信号の伝達なので、そこには磁場が発生するわけだ。

この神経活動を磁場の動きを通じて数十マイクロ秒単位で計測し、画像化できれば、高次脳機能の解明や、抹消神経が途中、どこで損傷しているのかも非侵襲で判るようになる。

この画像は手の末梢神経の神経活動に伴って生れる磁場を画像化したもので、従来捉えるのが困難だった手足の痺れや腰痛がどの部位でおきているのか特定でき、診断に活かせれば、多くの人に役立つ。

こうしたセンサ技術や画像化技術などを組みあわせた「脊磁計」と呼ばれる機器の開発に、金沢工業大学と東京医科歯科大学、リコーの三者が共同で取り組んでいる。

【2019年末梢神経活動の可視化成功】https://www.kanazawa-it.ac.jp/kitnews/2019/0725_magnetospinography.html

そして今年度、三者は診断技術の確立に向けて新たに一歩踏み出した。

というのが今日の話題の前振りなのだが、実はこの構想は金沢工業大学教授で当時、研究所の所長として研究を牽引されていた故賀戸先生から20年ほど前にお聴きしていた、先生の夢でもあった。

当時お聴きしていたのは、片麻痺が脊髄のどの部位の損傷でおきているのか調べるには、脊髄に電極を刺し、電気信号がどこで遮断されているのか調べる必要があり、それは国内でも限られたは病院でしかできず、また身体的な負担も大きい。
もし高感度磁気センサが応用できれば、電極を刺さなくとも(要するに非侵襲で)部位が特定できるかもしれない、と。

私が知るだけでも既にニ十年近く経っている。このような長期的な基礎から応用、実用化に至る研究はビジョンが無いと続かないし、また大学だからできることでもある。
その意味で、今回、実用化に向けて大きく前進したことに、ちょっと感慨深いものを感じでしまうのだ。

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