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それって本当にPRしてる?

世の中さまざまな広報活動があると思う。
その中で、『それ本当に良いプロモーションか?』と思ったものがあったのでなんとなくそれっぽく考えてみたいと思う。

それは同ジャンルに括られる新商品をトーナメント式に競わせ、投票や応援を促しながら知名度を上げていくというものだ。
なるほど、企画としては面白い、と思った。
けれど、トーナメントにノミネートされている品々を見て私は疑問を持った。

そこに並んでいたのは、大枠のジャンルこそ同じものの、全く別の性質を持つものばかりが組み合わせられていたのだ。
例えるならば『食べ物トーナメント』と銘打ってポテトチップスととんこつラーメンを競わせているような。
あるいは『おゆうぎトーナメント』と銘打ってお絵描きと囲碁を競わせているような。
なんともちぐはぐな組み合わせの印象を受けたのだ。

それは知名度を上げる以外の効果はあるのだろうか?
いや、それ以前に知名度を上げる効果も充分といえるのだろうか?
例えば先の例ならば、今食べたいものを、流行っているものを、自分がより知っているものを選んで終わりではないだろうか?
わざわざホームページへ飛んだり、自発的に調べて『ふーん、カルビーが焼肉味のポテトチップスを出したのか』などと思うだろうか。
囲碁のルールとお絵描きに便利な画材を調べて『今はこんな進化しているんだな、お絵描きに入れよう』と思う対象がどれだけいるだろうか。

つまり、これはトーナメントの組み合わせを発表した一瞬に「どれだけキャッチーなフレーズや画像を用意できるか」の勝負でしかない気がするのだ。
頼んでもいないのに勝手にノミネートしてそれはないだろう。
それに試合結果も五分五分の際どい勝負ならばまだマシだが、大差をつけての決着ならさらに切ないことになる。
大衆の感想は「こんな商品もあるのか、知れてよかったな」ではなく「負けた商品だ。同じ予算なら勝った方を選ぼうかな」となる可能性も大いにある。
そしてリベンジの機会なく、二度とトーナメントの部隊に上がることはないのだ。

そうしたら負けた方の製作者は楽しい気分でいられるだろうか。
どんなかたちでも注目してもらえてよかった、と混じり気なく思えるだろうか。
これから続いていくトーナメントに盛り上がる大衆の意識の中に残り続けられると信じられるだろうか。
そんなことを考えると、私はその企画自体が少し怖いものだなとすら思ってしまう。

『業界全体の盛り上がり』のためには有効な手段かもしれないが、個々の商品にとってはどうであろうか。
商品が、その奥にいる製作者が、そして選ばれすらしなかったものたちが顔を歪ませることがないことを祈りたい。
※性格が悪いことは承知の上だが、私はトーナメントに敗れた側の方が笑顔ではいられなかったことをすでに知っている。

トーナメントPR、それは製作者ではないからできる企画なのだろうなと思うし、消費者としてはなかなかない企画を楽しむことができるのだろう。
けれど、それは果たしてwin-winのPRなのだろうかと疑問を禁じ得ないのである。

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