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【詩】病院の待合室で

病院の待合室でだらけた座り方の人
スマホ見ながらぶつぶつ言ってる
 
私は隣に座って読みかけの本を開いた
この人の隣にいると
まるで私がしっかりした人みたい
 
あっちの壁にかけられた絵は
誰が描いたものだろう
灰色のコンクリートに
色とりどりの鳥の糞がぶちまけられている
 
どこからか虫が飛んできて
そこらじゅうを回りはじめた
隣の人はスマホを置いて肘を掻いている
ずっとずっと掻いている
掻けば掻くほど漂ってくる
人間の汗と皮膚の臭いが
「誰のことも憎むなよ」と
鬼の形相で私に迫る
 
負けじと私は懐に手を入れ
短刀を鬼に振り回した
鬼が絶命することを祈りながら
2時間も待っている診察の
私の番はまだかしらと思った

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