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【詩】棒アイス

目が覚めたら ぐぐぐぐぐ
ぴたぴたぴた 手で確かめると
アイスの棒がおでこに刺さっていた
びっくりして引っこ抜いたら
棒には赤い文字で「あたり」と書かれてあった
誰がそんなこと決めたんや
むしょうに腹が立ってくる

公営住宅当たれ
宝くじ当たれと
思って生きているけれど
誰か知らんやつに「あたり」とか言われる
筋合いはないような気がしてきて
舐めんなよ ひとこと言ったらぁと

長距離バス乗り継いで
おかあちゃんが生まれたおじいちゃんちの
今はもうない扉を開けて
今はもうない畳を踏み鳴らして
ニコニコ笑とるおばあちゃんに
「ケーキ食べるか?」と聞かれ
大声で「うん!食べる!」と言うと
出てきたのは棒アイスで
あぁそうやこの世代は
アイスのことケーキとか言いよるんよなぁと思いながら
しゃりしゃりのアイスにかじりつく夏休み
それからもう何十年も経ってしもうたんやね

やっぱり私は
おばあちゃんやおじいちゃんや
おかあちゃんみたいな生き方が
しとうなくて できなくて
ぐぐぐぐぐ どうにかこうにか
自力で当たりを引きとうて
棒に書かれた「あたり」を見ると
むしょうに腹が立ってきて
一人アパートに帰る 生きたらあ

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