顎変形症の手術をした④術後3日目

前回から更新がかなり空いてしまって申し訳ない。完全にサボってました。

現実の私はようやく白米をちょっとずつ食べられるようになってきたが、記事中の私はまだ水も飲めてないし鼻も塞がって苦しいのは隔世の感があるな。

前回までのあらすじ→雑談には人を元気にする力がある


入院7日目(術後3日目[4/25])

管からの解放

朝の回診の結果、この日でドレーンチューブ(口内の血を吸引する管)と尿道カテーテル(おしっこを排出させるための管)を取ることになった。

ドレーンチューブが取れるのは嬉しかったけど、尿道カテーテルは取ると自分でトイレに行かなくちゃいけなくなるから、3日で合計1時間くらいしか寝てないような体で大丈夫か不安だった。

まずドレーンチューブを外した。痛いかもとビビったけどそこまでではなくて良かった。外したからといって呼吸がしやすくなったかといえばそうではなかった。

次に尿道カテーテルを外す。尿道とか絶対痛いだろと思ってたら気づいたら外れていた。(男性は痛いと感じる人が多いらしい)
このときに「あー血が出てますね」と言われたんだが特に何か処置されるわけでもなくスルーされた。大丈夫なのか?

尿道カテーテルを外してすぐ尿意を催した。なんで今なんだよ。
点滴スタンドを支えにしてトイレに向かう。手術日以降初めて長距離を歩いた。

こんなに重力を感じるかね?ってくらい一歩を踏み出す足が鉛のように重たい。トイレの看板は見えてるのにいっこうに近づかなくて、50メートルくらいの道のりが果てしなく遠く感じた。

命の洗濯

ドレーンチューブと尿道カテーテルが外れたのでシャワーに入る許可が出た。

4/21の夜以降シャワーをしていなかったけど、つらくてそれどころじゃなかったから髪のベタつきとか全く気になっていなかった。ちょっと動くだけで疲れて大変なので正直面倒くさかったが、せっかくだし入ることにした。流石にまだフラフラだったから看護師さんの補助つき。

ノロノロとした動きで何分も掛かりながらやっとの思いで入院着を脱ぎシャワーをする。ずっと立っているのは体力が持たないので、ドラマで見るような介護用の風呂椅子に座って体を洗う。

引用:https://www.scrio.co.jp/fs/kaigo/gd14976

髪の毛を洗うも久しぶりすぎて1回じゃ泡が立たなかった。看護師さんに「泡……立たないね…」と言われた。どんだけ油ぎってたんだよ。
両鼻がまだ塞がっているので鼻や口に水が入ったら死んでしまう。なるべく顔にかからないように髪を洗い流すのが至難の業で、そこは唯一看護師さんにやってもらった。

入る前は面倒だなと思ってたけど、いざ入るとやっぱり気持ちいい。汗とかそんなに掻いてない気がしてたけどすごくさっぱりした。(術後は常に37.2℃くらいの微熱が出るのでそりゃ汗も掻いている)

エヴァンゲリオンでミサトさんが「風呂は命の洗濯よ」と言ってたけど本当にそう。体がさっぱりするのはもちろんだけど、気持ちのほうも心機一転というか、もう少し頑張るぞ!耐えるぞ!とハチマキをギュッっと締め直したような感じになった。病は気からというが、逆に気も身体から影響されるなぁと実感した。

食事に挑戦

口が自由になったことでようやく食事に挑戦してみようという気概が出てきた。

そして挑んだ昼食がこちら↓

上2つは蓋を開けてないから見えないけど3つとも全部スープ状になっている
蓋開いてるやつが重湯

重湯とはめちゃくちゃ大量の水で作ったお粥からお米を取り除いた上澄み液のこと。つまりお米の成分が染み出た汁みたいなもの。
元々米だからといってネチョネチョしているわけではなく水と同じでサラサラ。薄く塩味がついているらしいがほぼ無味だった。

これを写真の手前に写っている、注射器のようなスポイトで汁を吸い出しほぼ開かない口の脇の方から差しこんで食べる、というか飲む。

案の定噎せた。唾を飲むことも上手くできず、ここまで何も飲まずにきたのに急に液体を飲めるはずがなかった。

めげずにもう一度挑戦。口に流し込むところまではいいものの、飲み込もうとするとゲートがパタンと閉じるように喉が閉まって噎せてしまい、口から全て出てくる。

その後も何度か挑戦したけど結局何も食べられずに食事を下げてもらった。
食べてみるぞ!とようやく意気込んだのにこれだったからけっこう落ち込んだ。(シャワーで持ち直した気持ちがここでもう終わってる)

ここからは鼻の苦しさに、飲食が上手く出来ないという精神的なつらさが加わってくることになった。

三種の神器、水圧洗浄機登場

昼食を食べた後、看護師さんから水圧洗浄を教わった。

水圧洗浄とは勢いよく水が出るその水圧によって口内を綺麗にすること。家電量販店でもジェットウォッシャーという名前で売られていて、Panasonicのドルツなどが有名。

タンクに水を入れ、電動歯ブラシのようなノズルの先端から水が勢いよく出てくる。
指一本分開くか開かないかというくらいの口にノズルを入れて動かすからとにかくやりづらい。鏡を見ながらやるのは不可能なので感覚を頼りに口内を洗浄する。

血やら血痰やらが溜まっているのを少しでも取りたくて、慣れないながら必死に口内のあらゆるところに当てる。(あまり深くやると傷口に当たるので当たらないよう気をつける)

しばらく上顎に水を当て続けていると、MONO消しゴムくらいの大きさの血の塊が出てきた。

え?と思った。血の塊自体は生理のときにも見てるから見慣れてないわけではなかったけど、消しゴムくらいの大きさのものが口から出てきたから流石に驚いた。

白い洗面台に赤い円盤みたいな血の塊がドボっと落ちてるのを見て思わず「うわぁ……」と言ってしまった。それと同時に、「そりゃあこんなのが口の中にずっと鎮座してるんだから苦しいわな」と思った。よくぞ耐えてた自分。

水圧洗浄をしてドデカ血塊が取れたことより、口内のつっかえているような感覚が少しだけマシになって爽やかになった気がした。
鼻は苦しくても口の中がさっぱりするだけでこんなにも体が感じる不快度が変わるのか。

水圧洗浄の機械は退院まで貸してくれるそうで、自分の意思で口内を清潔にできるようになったのが嬉しかった。

点滴と圧

夕食。蓋が開いてるのが重湯。他は具なしの味噌汁など。

夕食の時間がやってきた。「頑張るぞ!」と再び挑戦してみるもののやはり上手く呑み込めず全てが口から出ていく。噎せるのがつらくて一口挑戦するのにかなり気合いを入れて臨まないといけない。

看護師さんに「明日には点滴が取れるから栄養とるために食べなきゃダメですよ」と言われ、食事どころか水もまだちゃんと飲めていないことに焦りを感じ始めていた。

食べられるようにならなきゃと分かっているけど上手く飲み込めないし、「何か飲むコツとかないですか?」と聞いても「うーん、頑張ってください」と言われるだけでアドバイスも何もない。

時折看護師さんが見回りに来て、その際に「(食べるのにかかる時間が)ゆっくりでいいですよ~」と言ってくれる。でも私は食べるスピードがゆっくりなことを気にしているわけじゃなく、食べられないことを気にしていたから、そこの認識に齟齬があることで孤立無援というか、とても孤独を感じてつらかった。

点滴がとれても食べれなかったら栄養不足とかで体調が悪化したりするのかなと、悪いほうに悪いほうに考えてしまう。「明日には点滴を外す」というのがかなりプレッシャーになりどんどん憂鬱になってしまった。

ブチ抜きウォッチパーティー

なんとかこの日も耐え抜いて消灯時間になった。でもここからが本番。
どうこの長い夜を耐えるか。吸引しながらまたカーテンのゆらめきを眺めているとDiscordに一件の通知が。

謎のワード、ブチ抜き

「ブチ抜きませんか?」この一言が送られてきたときの気持ちが皆さんに分かるだろうか。本当に嬉しかった。

フォロワーがDiscordの機能を使って一緒にYoutubeを見ようと誘ってくれたのだ。とにかく嬉しくて、靴の踵を踏んだまま急いで駆け出した子供のようにすぐさまウォッチパーティー会場に合流した。

4、5人が集まってトリプルファイヤー吉田のYoutubeチャンネル「ブチ抜く吉田」の動画を見た。
なんともいえない気まずい空気感の動画たちをみんなで見るのはなかなか面白かった。授業中に見させられる、面白いんだか面白くないんだかよく分からないビデオを見終わった後のクラスの雰囲気を思い出した。
そうこうする内いつの間にか日付変更線を越えていた。(本当になんともいえない動画なのでみんな見てみてください)

ちなみにブチ抜きの意味はみんなよく分かってません。

ウォッチパーティーもぼちぼち終了し、起床時間の6時までうがいなどで気を紛らわせながら過ごした。
この日もガッツリ長く寝るというのはできなくて、前日と同じく20分くらい寝るのが数回あっただけだった。

明日で術後4日目。先生が言っていた1番つらいとされる時期が終わる頃だ。明日こそは苦しいのがきっと良くなるはずと微かな期待を胸に朝を迎えた。


ここから下は前日(4/24)にあった出来事。つけていたメモの時系列が間違っていて前回の記事で書けなかったからここに書きます。

へー頑張るね事件

飲まず食わずで鼻の苦しさと船酔いのような気持ち悪さに朦朧としながら耐えていても、ご飯は毎回運ばれてくる。

夕食が来たけどやっぱり食べる気にはならなくてテーブルに置かれたのをただ見つめるだけだった。

しばらくして看護師さんが様子を見に来た。
食事に手がつけられてないのを見て「食べてないの?」と一言。

私は回らない口で「食べれない。まだ水も飲めてない」となんとか説明したら、看護師さんは「水も飲んでないの!?」とびっくりしていた。

そしてさらに「へー頑張るねー」と言われた。(ここの言い方のニュアンスを伝えるのが難しい。少なくとも私の感性では心配したりしてるようには聞こえなかった)

いや「頑張るね」って何?別に頑張りたくて水飲んでないわけじゃない。喉の渇きが気になるとかはなかったけど、飲めるもんなら水飲みたいよ。

朦朧としながらもこの言葉にはカチンときた。鼻の苦しさに必死に耐え、今まで出来ていたことが上手く出来ないだけなのに(それまで普通に出来てたことが出来ないのはそれだけで心にすごく負荷が掛かる)、なんでちょっと小馬鹿にしたようなことを言われなくちゃいけないんだろう。

このときは心が弱ってたからそう感じたのかなと思ったけど、退院する頃に思い返しても「なんでこんなこと言われなきゃいけないんだ」と思ったし、退院して2ヶ月半経った今でも全然ムカついてる。たぶん一生思ってる。(そのときの熱量でずっと怒れる人間)

この看護師さんとはなんとなく反りが合わなくて、その後も何度か担当になったけどそのたびに棘のあるようなことを言われ、毎回ちょっと嫌な気分になっていた。
看護師さんにも相性ってあるんだなと思った。



この日は水圧洗浄にシャワーに食事と出来事が盛り沢山の1日だった。なんとなく前進しているような気がするが、まだまだ苦しい。

そして飲食が出来ない&点滴外れるというプレッシャーに苛まれることになったが、果たして打ち勝てるのか!?ご期待ください。

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