万年筆、正統進化としての水性ボールペン

 水性ボールペン。感圧紙に書くには向かず、安いコピー用紙に書こうものなら滲んでしまうこともしばしばである。しかしこいつは書き心地がいいのだ。インクが水性であるから筆圧をかけなくても筆跡は濃く、そのおかげでトメハネハライがきれいに表現できる。

 そもそも万年筆より便利な道具としてのボールペンが発明されて、その後ボールペンはどのように進化してきたか。インクが改良され油性ボールペンのボダつきなんかを解消したりと進歩したわけだ。ただしこれは実用面であり、ゲルインクを筆頭に滑らかさが書き心地という芸術性の面で追及されてきたわけである。それは昨今の低粘度油性インクの発明、台頭を見れば明らかなのだ。問題は油性インクの場合ペン先に力を入れてやらないと紙の上をツルツル滑ってしまうのが問題である。水性インクのペン先には滑りつつ適度な摩擦がある、あくまで体感の問題であるが。

 前述の通り水性ボールペンは実用の面で油性ボールペンに劣る。しかし万年筆の正統進化としては水性ボールペンがそれを担うべきだと思う。ただ水性ボールペンは普及に際して筆記される紙のほうが問題であり、これからもその書き心地が好きな人たちのためにマイナーな立ち位置を保持し続けるだろう。いわゆる高級軸、高級な水性ボールペンの数が少ないことからも、ボールペンの中ではマイナー種であることが推し量られる。残念な限りである。

 しかしその筆跡の明瞭さは我々物書きには心強い。多くの場合パソコンで書くことが増えたが、草稿なんかを書くときには大活躍である。書きやすく見やすい。キャップ式(嵌合式)の高級水性ボールペンZOOM505を愛用しているのだが、水性ノック式の国産高級軸が発売されることを願ってやまない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?