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『ルックバック』 #映画感想文

映画概要

引用:「ルックバック」公式サイト

 原作未読の方で、映画観る前にどんなもんやねんとお思いの方は、こちらの2021年に掲載された少年ジャンプ+での読み切りをどうぞ。

少年ジャンプ+「ルックバック」


読切のみを含めたあらすじと感想

 映画に触れて感じた感情は、これからの人生において大きな意味を成すのだろう。そう思わない方が少ないと感じるまでであった。私の小学生の頃と主人公である「藤野」が重なるのは、何も「絵」に限ったことじゃない。これは大多数の観た人たちがそうなるんだろうと考えた。受け皿が広い。「足の速さ」に変えて話をすると、学年で自分だけ足が速かったのにも関わらず、いきなり転校生が来て、学年1位の座を奪われた。なんて話や、大会に出たときに味わう格上と対峙したときの敗北感や焦り、技術の高さを目の当たりし、鼓動がはやくなる瞬間がまさにそれだった。「京本」の場合は4コマ漫画でその存在を語ってくる。

 「京本」最初は姿が分からないが、格上の存在。目の前に居ないものだから、なおさら厄介な存在であった。常にライバル心を燃やし「藤野」が技術を磨く場面は、過ごしてきた時間を圧倒的な絵で黙らす、黙らしたい。みんなに褒められたい、ちやほやされたいの一心。でも叶わなかった。


諦めて捨てたパズルを拾っていく

 ここまで「絵」にこだわって踏ん張ってきた経験値を、あるキッカケで「藤野」は捨てる。選択肢にはあったが、あえて選ばなかった道。分かりきった道を選ぶために捨てた。結果「京本」に影響される前の世界線に戻ったが、その世界線は「藤野」の影響力で揺り戻される。

 影響力とは?

 とある「藤野」の4コマ漫画が「京本」に届き、引きこもりだった「京本」が家を飛び出す。ひとりの人間の人生が変わったシーンだった。分かる。何か外的要因がないと外に出られないのは、誰しも経験あるはず。外は雨続きで家から出るのも面倒。なら傘や雨ガッパ、長靴で「雨」の問題をクリアするとか、何なら楽しむとこまで持っていきたい、なんてしたり。

 あの4コマ漫画が問題を解決する。

 「藤野」はライバルであった「京本」から、長年の4コマ漫画のファンであると告げる同時、嫉妬心を燃やし、屈辱な敗北感を味わったその当人から誰も掛けてくれなかった言葉をもらう。尊敬の眼差しで見つめられ、相手の妙な屈服感が背筋を通ったに違いない。目の前にあの4コマ漫画をひとつのコンテンツとして理解し、未だにファンとして居てくれているのは、この上ない恍惚感だろう。

 パズルのピースをはめなおす。

 他でもなく、あの「京本」が読者として待っているんだと。お互いの影響力が相互作用し「藤野」が再びペンを取るまでの、何とも言えない複雑な心情は、雨の中ぎこちないフォームで家まで走って帰るシーンで語られている。劇中屈指の名シーン。藤本タツキ先生の作画が余すことなく再現されてるのは言うまでもない。


君にしかできない創作

 原作も映画も読んで観た上で、投げかけられた気がした。一石を投じるじゃないが、水面に広がる波紋のように思考のいち部分に溶け込む。君にしかできないことがあると強く訴えかけられた。衝動に近いものだが、それは一時的な思考ではなく、持続性のある決意に思える。ファンがいる方なら、今より更に質を高めていける経験値を。出会えていない方は、未来のファンに向けた紙飛行機でも投げてみよう。よく飛んだら誰か拾ってくれるかもしれない。



白のかがやき

#映画感想文 #アニメ感想文 #ルックバック #藤本タツキ

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