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肥満で過ごした学生時代 2

 そんな中、なにもデブで悩んでいるのは、私だけではなく中学校で知り合ったH君もポッチャリ仲間の一人だったが、ある日事件が起きた。

 ポッチャリだったH君が激やせしたという噂を聞きつけ、別クラスまで見に行ったらなんとH君が…シュッとしていたのだ…(シュッとする:関西用語で細身でかっこいい様)いつも来ていた制服が少しだぼっと感じるくらいの激やせだ。

 今となってはこのH君の短期間の激やせは危険行為だとわかるが、当時の私はふっくらした顔つきが二回りは小顔になったH君にすがる思いでどのように痩せたかを、超低姿勢で教えを乞うた。

 H君は得意げに教えてくれた激やせの魔法。それは「三日間の絶食」だったのだ。

 H君が言うには、水は幾ら飲んでもいいが食事は一切取らない。それを三日間続けるだけであった。
 私はそれだけ?と少し拍子抜けしたが三日耐えるだけで二回りシュッとするなら安いもんだと思い、試す価値は十分にあった。
 
 しかしその当時の私は中学二年生。親の庇護のもと生活しており、私の母は絶食など許さなかった。

 私は出された食事に手を付けなければよいだけと作戦を変更しプチ断食を試みるが志半ばどころか初めの初めからおいしく全て平らげてしまったのだ。
 デブの食欲侮りがたし。

 中学生の時に行っていたダイエット法は、ジョグもどきと他には腹筋である!!!
 
 皆さんも試したことがあるであろうこの腹筋はデブの醜いお腹の脂肪を燃焼し燃やし尽くしたうえでセクシーなシックスパックが露わになると頑なに信じ続けトライしては挫折し、挑戦しては奈落に突き落とされ断念を繰り返したのではないだろうか?
 
 私ももれなく腹筋運動に幻想を抱いていたデブ種の一人であるため例にたがわず腹筋で痩せると思っていたし、正直な話信じて止まなかった。

 というのも当時クラスの人気者?調子者?で野球部のY君がいたのだがその子はもちろん、調子者だが私と違って野球はきちんとしておりもちろん筋トレも練習メニューに含まれ腹筋運動もバリバリこなしていた。
 
 さらに言うと彼は意識も高く、その当時一世を風靡したスレンダーストーンというお腹に巻き付け電気の力で腹筋をぴくぴく刺激させ「一度の使用で腹筋運動○○回分の効果!」をうたい文句に世のデブたちを魅了していた今でいうSIX PAT的な商品でY君も使っていたのだ。

 私は、愚かにもY君の腹筋はスレンダーストーンによって作り上げられた体だと思い込んでしまったのだ。

 デブにありがちな楽して痩せたいの最先端思考を行くため、あの手この手で母を誘惑し、家族みんなで痩せようを合言葉に我が家の財務省を陥落させついにスレンダーストーンを手に入れたのである。
 
 使用感としてはなんだか貼りつけた皮の部分がジワーッとピリピリしたり、電力を上げていくと、腹筋が攣りそうになるくらいの痛みを感じ私は「これは…イケる…」と何かの手ごたえを感じ確信したのである。まさにその時の表情を例えるなら夜神月さながらのしたり顔だったに違いない。

 結果として私はどこにも行けず相変わらずのポッチャリデブのままであったが、この神器の効果を信じ約数か月の間、毎日30分間だか1時間だか使用し続けた。

 楽して痩せたいを信条に通販番組のマッチョとY君を信じ続けた数か月の忍耐力は我ながら褒めてあげたいところだが現実はそう甘くはなく一向に成長しない腹筋に対し、「自分には腹筋自体が無いんだ」とも思いだし、通販ダイエット器具のなかで超絶楽チンなスレンダーストーンダイエットは劣化していくジェルパットの交換が面倒になり静かに幕を閉じていった。
 こうして私は、自分がホモサピエンス科ヒト目デブ種であることを再確認し、中学時代の恋愛ごとを棒に振り、灰色の中学生生活に終了を迎えることにした。