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木造住宅は金物を付けただけでは補強になりません

長年、耐震診断の業務を行っていると、様々な補強を目にします。中には目を疑うようなものがあります。ただ一般の方でも勘違いがるようで、通常の古い木造住宅は金物を付けただけで強くなると思っている人がいるようです。それで金物を付けてと依頼することがあるようです。

戦後の木造住宅のほとんどは、在来軸組工法という工法で建てられています。程度の差こそあれ、耐震性は耐力壁といわれる地震に対抗する壁で地震の被害を防いでいます。しかし古い建物では、耐力壁の仕様が不十分だったり数が少なかったりで、耐震性が不足しています。これらを解消するためには、「きちんとした耐力壁を適正な数施工する」のが大原則です。

さて、金物は何の役割を果たすのでしょうか?一般的に耐震に影響する建築金物は、木と木を接合するために使います。接合すれば建物は強くなりますが、耐震性が上がることはそれほどありません。なぜなら木と木の接合が外れなくても建物は倒れるからです。

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この写真は、阪神大震災で倒壊寸前の木造住宅の写真です。この建物はこの面に耐力壁がありません。そのためこのように倒れています。ただし耐力壁がないので、菱形にゆがんでしまっています。柱が抜けていなくてもこのように壊れてしまっています。つまりこの建物は柱頭柱脚に金物があっても同じように倒れたと想定されます。

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この写真も阪神大震災ですが、建物が比較的新しく耐震性がある程度あったのに倒れた写真です。柱が基礎・土台から抜けて倒れています。このケースでは柱を基礎土台にきちんと留めつけておけば倒れなかった可能性があります。一般的に耐力壁が強いほど、建物強度が強いほど、金物は必要になります。弱い建物では補強金物はあまり効果がないです。補強金物はある程度強い建物こそ効果を発揮するのです。

古い地震に弱い建物は、基礎だけ補強したり、金物補強だけしたりは、ほぼ無意味なケースがあります。若干は強くなるかもしれませんが、費用対効果で考えたら、やらないほうが良いケースが多いです。耐震補強するには、まずは耐震診断で弱点を洗い出し、必要な耐力壁を施工し、その耐力壁に見合う金物補強、場合により基礎補強を行うというのが正しい方法です。診断の費用をケチって、金物だけ補強して「安物買いの銭失い」にならないように注意したいものです。

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