見出し画像

意匠設計事務所の木造構造計算ソフトの選び方

 木造の個人住宅の設計に慣れてくると、木造の構造計算もできたらいいな、と思う方が増えてきます。建築設計をやっている方は、構造設計が苦手・・・であることも多いのですが、挑戦している方も多いようです。

木造構造計算ソフト紹介(2023) ソフトを網羅的に紹介しています。

 数年前までは、木造構造計算は、構造屋に任せるべき、と思っていたのですが、今では考え方が変わっています。確認申請における木造構造計算の高度化が進み、難易度が高まっている反面、現場レベルでのトラブルが増えてきており、現場や木造の納まりを良く知らない構造屋さんでは対応が難しくなってきています。また現場監督などの質も以前に比べて下がってきており、今までは任せていて大丈夫だった内容も建築士が指示しなければならないことが増えてきています。

 このことは、意匠設計者が構造を良く知り、計算まで対応することが必要になってきていることを意味します。もちろん建売のような比較的定型なものは、大量に計算を行っている構造屋さんでいいと思います。しかし注文住宅などは、イレギュラーな対応も多く、構造屋さんに任せておけば大丈夫というケースは減っています。もちろんプレカット屋も同様です。

 また、今までは多機能で、設計者の技量を補う構造計算ソフトが重宝されてきましたが、現在は、基本的な構造を知らないと対応は不可能で、入力したら計算書から構造図が出るようなソフトに慣れてしまうと、ちょっと難しい形になると対応ができず、お手上げということも多くなっています。

 そこで、ある程度しっかり学習して、意匠と構造を分けて考えずに、対応してくことが必要と考えます。入力したら計算書がでてくる素敵なソフトはそもそもありません。そのように宣伝しているものも、入力に慣れるまで大変ですし、個別検討が出てくるので、できるだけプレーンな計算ができるソフトをお勧めします。

 そのような環境で2021年8月現在で、お勧めできるのは、HOUSE-ST1(株式会社構造システム)です。初心者向けというイメージがあったのですが、近年のバージョンアップで、先行他社にかなり追いついた感じです。(注:私はHOUSE-ST1のユーザーでもあり、販売者でもあります。公平さが若干欠ける内容であることをご理解ください。)初心者にお勧めしやすい理由は、

・3Dで入力部材を確認できる
 これは大きいです。リアルタイムで3Dで確認でき、3D画面でもクリックでその部材を確認できます。初心者は梁掛けだけでも苦戦します。思わぬミスをしてしまう可能性があります。見ながらなら安心です。

HOUSE-ST1は右下にパースが出てきますが、この部材をクリックしたら、伏図のほうでもこのように連動して選択できます。どこがどの部材か?わからなくなることがない秀逸なUIです。もちろんそのままプロパティを開いて編集できます。

・木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2017年版)に準拠
 他のソフトも同じなのですが、高機能なソフトは、この書籍を拡大解釈して機能搭載している部分が多いです。HOUSE-ST1は比較的プレーンに機能搭載しているため理解しやすいです。計算結果もわかりやすいため、その内容から他の検討を行ったりも比較的容易です。

・初心者のマスターできる率が高い
 ソフトの特性上、HOUSE-ST1は初心者が利用する率が高いのですが、初心者がマスターする率が高いです。意匠設計者、工務店、不動産屋・・・様々な方が習得に成功しています。もちろん挫折する方もいますが、マスターしやすいソフトであるのは間違いありません。

・価格が比較的やすい
 木造構造計算ソフトは、実売40万円以上が多い中、30万円前半で購入することができます。また年間サポート代金もありません。販売している商社やショップも多いので、購入しやすいです。

・4号建物の壁量計算や、長期優良住宅、耐震等級3の計算もできる
 どのソフトでも工夫次第ではできますが、HOUSE-ST1は特に意識することなく設計できます。耐震等級3の需要は増えていますから、木造構造計算にチャレンジするなら、ぜひ耐震等級3確保を目指してみてください。

 さて、最初にも書きましたが、役所等の審査が厳しくなってきています。ある程度入力すれば計算書が出てくるソフトで、更に便利なソフトは他にもあります。しかしHOUSE-ST1も含めて基本的なことをマスターしていないといずれ行き詰まることになります。しかしながら木造構造計算は難しいですが、決して選ばれた人しかできないものではありません。文系の方でもマスターしている人が多くいます。操作性が良く、操作で躓くことが少ない、HOUSE-ST1は現在も最適といえます。

見つけ面積も入力データを下地に、CAD入力できるので、間違いにくく手軽に作成できます。

 さて、用途や目的によっては、他にも良いソフトがあります。大量の建売住宅の構造計算や3階建てのペントハウス付きの構造設計やるなら、KIZUKURIを選んだ方が良いでしょう。シェアも高く、確認検査機関も見慣れています。ただ、斜め方向の壁の対応が甘く、アンドゥなどもないなどソフトの仕様が古めです。図面まで構造計算ソフトで完成させたいなら、STRDESIGNをお勧めします。反面、入力が多くて難解との声もあります。他にも、良いソフトはあります。

 最近はラーメン構造などにも対応したソフトも出ていますが、初心者にはかなり難しいので、最初は木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2017年版)に準拠したソフトをお勧めします。

 このnoteでは、これからHOUSE-ST1を中心に使い方、木造構造計算のテクニックを紹介していこうと思っております。お楽しみに!

↑ 木造構造計算ソフトHOUSE-ST1の初期設定について解説しています(全5回)。

↑2023年夏に公開した、HOUSE-ST1を使った短期講座。夏休みが終わっても公開しています。

↑建築士試験レベルで理解できる木造構造計算の解説です

サポートしてくださると嬉しいです。 部分的に気に入ってくださったら、気軽にシェアかコメントをお願いします♪