見出し画像

プレカット図よりも構造計算すると梁サイズが大きくなるのはナゼ?

木造2階建ては、基本的に構造計算していません。本来なら設計者(=建築士)が伏図まで書いて設計するのが筋なのですが、現在はプレカットという便利なものがあって、間取り等を送ると伏図を作ってくれます。

悪しき風習で若手建築士のなかでは、伏図が書けないどころかチェックもできない方もいます。分業とはいうものの悲しいものです。

さて、我々もプレカットを先に出して貰うことは多いのですが、その図面に書かれている通り構造計算すると、ほとんどの場合NGが出ます(構造計算を一緒にプレカット屋に頼んでいる場合は違いますが)。これはナゼでしょう。

実はプレカットも適当に入れているのではなく、長期間梁が健全で基準よりたわまないように設計しています。なので木造2階建ての場合そのまま頼んでも大丈夫なことが多いのです。そのような建物がたくさん日本には建っています。なら大丈夫なのでは・・・と思ってしまいます。

しかし、重大な観点が欠落しています。これはプレカット業者が悪いわけでも何でもありません。基本的に木造2階建ては構造計算されていませんが、壁量計算やN値計算されています。ここで耐力壁という要素が入ってくるのですが、プレカットではこの耐力壁の計算をしていません。耐力壁が梁の上に載っかるとその柱脚部に踏ん張る力が働きます。そのためただ重さが載っかっている柱とは違う挙動をするのです。耐力壁の倍率が大きいほどその踏ん張る力は強くなり、必要梁せいが大きくなります。耐力壁の配置が正確に定まっていないときに、プレカット図は作るわけですし、最終的に建築士が責任を負うのが設計ですから、プレカット屋が悪いわけではありません。

構造計算すると、同じように柱の強度が足りなくなることもあります。これも耐力壁が影響しています。その前に建物の地震力や風圧力を出してその力を耐力壁が支えるために必要な部材性能を構造計算で出すのです。よって木造2階建てといえども構造計算が必要だと思います。別に耐震等級2とか3でなくても、きちんと検証が必要だと思います。

さて、それでもプレカット図通りで建築していて、それほどそれが問題にならないのは、もちろんプレカットでもある程度の余力は見込んでいるためです。計算によってギリギリまで梁せいなどをそぎ落とすと、むしろしっぺ返しを食らうかもしれません。木造は構造計算によって安全は確認しても、必要以上に梁せいは落とさないほうが良いです。節約のために構造計算を利用するのはどうかと思います。実際、最近の木造3階建ては構造計算が精緻になった反面、揺れやすくなっているようです(相談が増えました)。地震や風というより、階段の上り下りや交通振動の相談が増えています。詳しいデータはありませんが、最近の構造図を見ると私からすると細すぎるのでは?と思ってしまいます。その結果が将来悪い影響が出ないことを願います。

サポートしてくださると嬉しいです。 部分的に気に入ってくださったら、気軽にシェアかコメントをお願いします♪