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本来の精密耐震診断とは?

耐震診断は、「精密」という言葉が一人歩きしています。

木造の耐震診断の主なものは、一般診断法(俗に言う一般診断)と、精密診断法1(俗に言う精密診断)の2種類があります。文字通り、一般より精密のほうが精密なんでしょうけど、果たして本当でしょうか?

あくまで計算上の話をすれば、一般診断も精密診断も壁のカウントの仕方は大差ありません。現地調査がしっかりしていれば、同じような評点になるはず・・・なのですが、実際は違います。

一般診断は、外見の劣化度を、耐震性に反映させるのに対し、精密診断は、外見などほとんど考慮する要素はありません。というわけで、塗装がはげていたり、床が斜めになっていたり、外壁にヒビなどがあった場合、一般診断は大幅に減点になるのに対し、精密診断は、あくまで構造材の診断となります。

何が言いたいか?というと、一般診断は非破壊を前提とし、精密診断は破壊調査を前提としているということです。一般診断は非破壊だからこそ、外見で破壊しないでもわかる事象を評点に加味します。一方、精密診断は、破壊して内部を見る(全部を破壊するわけではない。あくまで部分的)ので、構造材の劣化状況を確認できるので、精密に診断できる、ということなのです。

これを理解できないで、耐震診断ソフトが対応しているからといって、精密診断法で入力をデフォルトと考えてしまうと、おかしなことになります。正直、非破壊で行うなら、通常の住宅レベルなら一般診断も精密診断も同じくらいの時間で出来ます。もし非破壊で精密診断をやるというのなら、一般診断とは違う何かを付け加えて「精密」の名に恥じない診断をすべき、ということに気がつかなければなりません。ソフトウェアが精密診断法1に対応しているからというだけで、精密診断を行っては恥ずかしいのです。

とはいっても、ある程度の解体を行えるケースはそれほど多くありません。たいていは部分的な解体ができれば良い方です。そうなると非破壊でも精度を上げるために、訓練を重ねる、非破壊でもある程度調査ができる機械(サーモグラフィー、壁裏センサー、シュミットハンマー、ファイバースコープ等)を導入、多くの事例からなるデータベースの導入など、重要になってくると思います。

私も非破壊の診断に関しては、それなりの棟数をこなしてきているわけですが、まだ十分とは思っていませんし、機材の選定も実験段階だと思っています。しかし調査数と訓練、勉強に関しては相当積んできており、それなりに正確に診断できるようになったと感じております。もちろん一生勉強だと思っています。

診断する側も依頼する側も、精密診断という言葉に惑わされないようにしたいものです。

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