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木造3階建ての耐震診断

私が、ライフワーク的に数多く行っている耐震診断は、木造3階建ての耐震診断です。木造2階建てに比べて構造計算されて強いイメージですが、古い木造3階建ては計算通りになっていないことが多く、危険なものが多いです。また風や自動車の通行で揺れる、雨漏りが多いなど、耐震性以前のものも多いです。

木造3階建ての耐震診断には、耐震診断の技術の他に、構造計算の技術が必要となってきます。構造計算書を読めなければ、現状がわかりませんし、その建物の特徴もつかめません。それが木造3階建ての耐震診断を行う方が少ない理由だと思います。

一般に、木造耐震診断といえば、耐震診断ソフトに入力すれば、だいたい数値がでてきます。木造3階建ても入力できるのですが、どうも甘すぎる評点になることが多いです。それを信用しない!というわけではないのですが、調査項目、検討項目が少なすぎて、それだけでは信用できません。

だからといって精密診断法のように、解体して調査するのも、どうかと思います。というのは都内の木造3階建ては準耐火建築物で、解体することによって耐火性能を下げてしまう恐れもあります。木造2階建てのように手軽に復旧できないのです。もちろん解体が必要なときもありますが、出来る限り非破壊で調査する必要があります。

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図面上にある筋かいがあるかないかは、サーモグラフィーを併用して探します。天井裏から見られる場合は良いのですが、木造3階建ては天井懐が狭く、調査しにくいです。金物の有無だけは、必ずチェックするようにしています。

基本的に構造計算書、構造図を元にどれくらいの耐震性があるか最初に調査してから、現場調査に入ります。というのは、相談があった建物は、基本的に何らかの欠点があります。それが設計上のことなのか?施工上のことなのか?それとも両方なのか?現場調査前にある程度想定しておく必要があるからです。

構造計算書がない場合で、構造図があるときは、計算ソフトに入れてだいたいの構造強度を算出します。耐震診断ソフトだけでなく、構造計算ソフトを併用します。というのは地震力を出す必要がどうしてもあるからです。地震力は高さと重さでだいたい出ますので、そこに筋かいがあるかないか?は特に関係ありません。地震力を出したら、そこに必要な耐力壁の数を計算し、その建物で耐震性を確保できるかを考えるのです。そこに柱頭柱脚の金物の適否や筋かい金物の有無、基礎の状態、アンカーボルトの数などを勘案して、最終的な耐震性を算出します。

実際は、耐震性を出すより、建物に感じている不満の軽減(交通振動、風に揺れる等)の案を作ることが優先されるので、その原因解明に時間を取られます。それでも地震力はどの場合であっても必要となります。風に関しては、見つけ面積の検討を行います。

以前は制震金物を使う事も多かったのですが、コスト対効果はあまり高くないので、最近は壁補強を優先し、足りないときに制震金物を考えるようにしています。木造3階建ての場合、1階部分の強度で住んでいるときの安心感は決まるような気がします。2,3階を補強出来ない場合も1階だけの補強で、交通振動や風の揺れはかなりおさまると感じるようです。

木造2階建てに比べて、完全に補強出来るケースは稀です。なので予算とお客様の要望に応えられる補強をめざします。もちろん大地震に対してある程度強くないといけませんので、その部分は説明し、できるだけ補強して頂けるように説得します。

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