建築士資格の呪縛にとらわれないために

　こんにちは。夏も終わりになるので、ここ数回はいつものスタンスとは異なる視点で記事を書かせて頂いております。今回は建築士資格についてです。

　言うまでも無く建築設計を仕事として行う場合、建築士を取ることが必要です。もちろん設計補助やCADオペレーターなど建築士資格が不要なものもありますが、設計を目指す人にとって夢だったり目標だったりします。

　しかしその呪縛にとらわれた方が多く存在するのも悲しいことです。大学受験のように無限にチャレンジできるがある程度の見えない制約があるもの、と異なり、無限に受け続けることが出来ます。また建築士資格がゴールだと思っている人もいます。それは不幸なことです。以下プライバシーに関わらない程度に、私が出会った建築士、建築士になりたい人、特に二級建築士を持っていて一級建築士にチャレンジし続けている人について、お話したいと思います。あくまで建築士という切り口であり人生を論じるつもりはありません

その１　名刺の一級建築士を消す建築士

　まず私がこの業界にくる前にあった方です。この方は一級建築士になれば仕事ができると信じて、建築系大学を卒業し資格学校で勉強し、早期に一級建築士を取りました。ここまでは問題がないように見えますが、あくまで建築士を取ることに特化したため、仕事がまったく出来ませんでした。当時は今みたいにやさしい時代ではなかったです。建築士を持っているのに仕事ができない・・・それを回りにバカにされて・・・最終的には自分の名刺の「一級建築士」の表記を油性マジックで消していました。たぶん一級建築士と名乗ってバカにされるのが嫌になったのでしょうね。
　悲しいことです。彼はその後も転職を続けたものの、結局仕事が出来ず今はこの業界にいません。マジックで消す位なら自分が資格に見合う仕事力を付ければ良かったのですが、その努力を怠りました。せっかく取得したのにもったいないと感じます。

その２　一流大学出身が裏目に

　私の昔の取引先にいた方です。一流大学の建築学部を卒業しました。しかしやさしい性格で、この業界が合わないので、若い頃精神的に病んでしまいました。そのため自身のポテンシャルも落ちてしまったようです。二級建築士はなんとかとれましたが、一級建築士をとらないと意味がないと思い込むようになりました。そのため実務での技量を磨くことより資格に傾倒しました。しかし１０回以上受験しても受かりませんでした。そんなあいだに５０才突入しました。そして仕事もほとんどできないので、どこに行ってもクビになっていました。
　一級建築士を取らず二級で技量を磨けば、もっと楽しく過ごせたのにな、他の業界にいけばうまくいったかも、と感じます。私はアドバイスとして建築士受験を諦めることを提案しましたが、彼は頑なに固辞しました。今も受験を続けているのでしょうか？一流大学出身ということが彼を苦しめたのでしょうか？プライドが邪魔するといいことがないと感じています。

その３　自分は仕事ができると思っている二級建築士

　私の知り合いの事務所に昔いた方です。二級建築士を持っていることを誇りに思っているタイプの方です。そして仕事ができると自分だけ思っています。しかし惜しい部分までできるのですが、仕事を任せられないタイプのため、評価は低かったのです。いろんな設計事務所を転職し、そこで手に入れた資料を自慢し、その資料毎評価してほしいと思っているタイプでした。しかし雇う側から見たら、今度は自分の事務所の資料を持って行かれると思ってしまいますよね？そのため次第に転職も難しくなりました。せめて謙虚に努力して自分の技量を上げていれば問題なかったのですが、二級建築士を取ったということで自分の能力を過信してしまったようです。二級建築士を取得するために、本当に苦労して勉強したと言っていました。しかしそれをクリアしたから建築士なのであって、周囲の建築士は皆そうなのです。資格を取ったことを誇りに思うのは良いのですが、そこで止まっては駄目ですね。

　はい。長文になってきました（汗）。なのでこの先読みたい方は有料となします。すべて私が見聞きした方々で実際にしゃべったことがある方たちです。プライバシーに配慮して個人を特定できないように書いています。

以下
その４　リベンジの機会を自ら失う二級建築士
その５　自分はできる、場所が悪いだけだと思っている二級建築士
その６　学校で二級建築士を取得したけれど・・・
その７　有名ゼミを辞めたことが尾を引いて・・・
その８　資格を取得する前に飛び出して・・・
その９　資格至上主義が行き着く先
その１０　建築士資格に興味がなく、颯爽と退場
　となります。