忘れられない初恋の話

初恋と言えば小学生、中学生、早いと幼稚園ぐらいにする人が多い。


例に漏れずに私も小学生の時にみんなから好かれてた男の子のことを好きだと言っていた。本当かどうかもわからないようなのが初恋なんだと思ってる。


ということは今回書くのはその初恋の話だと思いきやそうではなく、高校生のときにした初恋をふと思い出したので書こうと思う。多分めちゃくちゃ長い上、本当に思い出を書くだけなので、無意味な時間を過ごすはずです。読んだあとで無意味な時間を過ごしたことを後悔します。(時間的な意味で)

人の恋愛興味ある!暇すぎる!きゃっきゃみたいな方は是非読んでいってください。特におもしろくもない普通の女の子の普通に恋した話です。





私の中で初恋という言葉には2種類ある。

ひとつめは世間一般的にいうような初恋。

初恋(はつこい)とは、その人にとって最初の恋の意。 

出典wikipedia

もうひとつが人を好きになるという気持ちがしっかりとわかった上で、初めて人を恋しいと思うこと。


その人に出会ってそう思いたくなった。


出会いは高校最後の夏。私の働いていたバイト先に彼が入ってきた。

年は私よりも6歳上で、本職は本屋さんだった。


ヲタクだった私はそんな時でもなおバイトしていた。大学生になるつもりはなく、就職するつもりもなく、ヲタクを沢山するために卒業したらアルバイトで生きていこうと思っていた。


だから周りが受験生でも特に関係なかった。


塾に通っていたけれど、内心では落ちるからいいやって思ってた。今考えると死ぬほどお金が勿体ないんだけど、親の期待にはこたえないといけなかったから、人形かのように過ごしていた。大学は受けて落ちちゃったからアルバイトで生きるって言えばいいやって思ってた。


そんな時に彼と出会った。


初めて話した印象は頭がおかしい人だなって。

だって「おはようございます」って出勤した直後に「これどこにあるか知ってる?」って聞いてくるような人だったから。

自己紹介したあとに「素敵な名前だね。宝物だね。」って言ってくるような人だったから。


初めて会った知らない人だけど、素敵な名前だねなんて生まれて初めてだった。画数が多くて苦手だった自分の名前が、なんだか少し輝いて見えるようになった。


煙草を吸う人だったから、働いてる時間のうち1回は煙草を吸いに行ってた。

だけどその帰りには絶対に自分の分のコーヒーと一緒にオレンジジュースを買ってきてくれた。ちょっとそこでときめいた。

変な人だけど、優しいなって思った。




彼は本屋さんがあるから絶対に午前中だけのシフトだった。平日も含めて週3回。

私が午前中に入れるのは土日だけ。基本はお昼からラストで入ることの方が多かったから本当にその日は偶然。その偶然被った1回で、なぜだかまたシフトが被らないかなと思ってしまった。


心の中が彼のことでいっぱいになった。

それでもその2週間後にまたシフトが一緒だった。よし!と思いながらも、大人っぽくならなきゃと思ってアイラインをいつもよりも濃くして(これは完全に失敗)、いつもメイクなんてしないのに頑張って背伸びしてバイトに行った。

小さいお店だったから2人になれる時間があったけれど、それも3時間。仕事をしてるわけだからお客さんが来たらお話はできないし、でも少しでも彼のことが知りたくて知りたくて。


初めて聞いた質問は彼の好きな本。

本屋さんだから本を聞くのが一番近づけるんじゃない?と言ってくれた友達の言葉を信じて質問した。


本なんて中学生の時の朝読書以来教科書ぐらいしか読んでなかったから、正直聞いて読めるのかなと不安にもなったけどそれでも何かのきっかけがほしくて聞いてみた。


彼は私に有川浩さんの小説を勧めてくれた。その当時は2009年、映画化もされてなくて本当に本を読む他なかった。


久しぶりに本屋さんで雑誌以外を手にとった。

同じもの読んでるんだって嬉しくなったり、恋愛もの好きなんだってにやにやしたり、会話が欲しかった私は7冊ほど有川浩さんの本を読んだ。次に彼が合わなかったと言っていた村上春樹さんの本も読んだ。合わないものも知りたかった。


彼のことを少しずつ知っていけることが素直に嬉しかった。もっともっと知りたかった。

そんな彼は毎回最初の日と同じように煙草を吸いに行くたびに、私にオレンジジュースを買ってきてくれた。たまにブラックコーヒーを飲んでる彼とオレンジジュースの私で年齢差を感じることの方が多くて胸が痛くなったことには目をつぶったりもしていた。

そんなときに限ってタイミングよく、褒めてくれた名前で呼ばれるから胸が苦しくなった。彼が私の名前を呼ぶだけで本当に宝物になった気がした。

それぐらいに彼が紡ぐ言葉はそのときの私のすべてだった。


とうとう夏休みもすぎて9月。AO試験が始まったり、ラストスパートに入っていく中で少し私の中に変化があった。


彼のことが気になってから、ヲタクなんてそっちのけで本を読んでいた。

あくまで私のこの先の未来は、ヲタクをたくさんするためにアルバイトになること。

だからヲタクじゃないとこの未来は成り立たない。


シフトが被って2人のときにふと彼に聞いてみた。


「大学って楽しかったですか?」


そしたら楽しかったよ!悩んでるなら言った方がいいよ。と言われた。


単純だからそれだけで受験生になろうって思った。大学に行きたいって思ってしまった。


そこからはバイトどころではないのに、週に1回だけ彼に会いたいがために塾の時間ギリギリまでバイトに行って、そこから塾に行って勉強というのを続けた。

その週に1回の時はお昼抜きで夜も23時過ぎに食べるからお腹が空いてしまって仕方なかったんだけど、それでもそんな空腹よりも勉強とバイトが大切だった。


そんなときに寝坊してしまって、朝ごはんが食べられなかった日があった。


それを彼に話したら上がってから仕事に行く前のほんの数分で、スタバに行ってマフィンとドーナツを買って渡しに来てくれた。


嬉しくて嬉しくて。私のためにしてくれる行動が嬉しくて。あのときにもらったマフィンとドーナツ以上に美味しいものに、私はいまも出会えてないかもしれない。

その時にこの人のことが好きだって思った。こんなに感情が動いたのは多分初めてだった。


これがきっと私の初恋なんだって思った。










だけど、私は一つミスを犯していた。







そう、彼女がいるかどうか聞いてなかったのだ。友達にはバカなの?なんて言われたりもしてた。だから絶対に次に会ったときに聞かなきゃって。




その時はもう11月。シフトが被ったときにクリスマスはどうするんですか?彼女とどこ行くんですか?っていう他愛ない会話で探ってみた。


「どこ行こうかなって思ってるんだよね」って望んでなかった返事。

そのあとは彼女どんな人なんですか?とか聞きたくもないこと沢山聞いて、いつも飲んでたオレンジジュースの味が全然わからなかった。


失恋。



そう思ったんだけど、やっぱり好きで好きで好きで。邪魔しないから、好きだなんて伝えないからお願いって思いながら彼を好きなままでいた。


受験があるからと11月を最後にバイトを長期休業することにした。

彼は本職が忙しくなったのを理由に私が長期休業してる間に辞めていた。




勉強は今までにないぐらい頑張った。塾の先生にも、最初からあれぐらい頑張って欲しかったと言われたぐらいに頑張っていた。だけどそんなすぐに合格しました~なんて漫画みたいなこともなく、春からは受かった短大に通うことになった。(そのあと編入したので4年生には行けました)







彼に好きだって言葉は伝えられなかった。

なんなら今も伝えられてない。




私が高校卒業した2年後に彼女と別れたという話を彼から聞き、何回か会ったこともある。

車の助手席に座らせてもらえて、夜の海に連れていってもらえて嬉しくてずっとにやけてた。


そのときも好きは伝えられてない。



だけどそれが一番良かったのかもしれないと最近は思い始めた。

昔みたいに彼に恋い焦がれることはないけれど、あのときの綺麗な思い出のまま彼を見ることができるから。

きっと彼には伝わってなかったけど、伝えられなかったけど、こんなにも私の人生を変えてくれる人に出会えて良かった。


そんな思い出がふと頭をよぎった。

初恋は綺麗なまま、きっと美化しているからそのまま綺麗なままで。


ヘビーローテーション

たった一度忘れられない恋ができたら満足さ

の歌詞が当てはまるなって思ってるぐらいには忘れられない恋でした。














その頃から10年経つ今でも有川浩さんの本は大好きです。

読むとその頃の必死さを思い出せる気がするから。

甘くはなく、酸っぱい夏のレモンのような思い出が蘇るから。




そして私は彼と違って村上春樹さんのアフターダークが大好きです。

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