アタック西本そっくりなチベット族の青年に助けてもらった話3️⃣〜最終話〜
前回の続き
旅先で、トレンディエンジェル斎藤司似の中国人社長から鬼電攻撃を受けたわたし。
斎藤さんは宿泊しているホテルのオーナーであり、かつ、ひどく酔っ払っていたため、わたしは自分の部屋に押し入られることを心配する。
そこでわたしは、斎藤さんのドライバーである、ジェラードン西本似の青年に斎藤さんの見張役を頼み、自力で部屋の扉にベッドの「城壁」を築いてなんとか眠りについたのである…。
🐼🎋🐼🎋🐼
四川省アバチャン族・チベット族自治州に朝が来た。
朝になれば、わたしの勝利は決まったも同然だ。
吸血鬼は陽射しの下でひとの血は吸えないのである。
まだ朝6時だけど、成都行きのバスは10時発だけど、雨だけど、行くあてはないけど、とりあえずこのホテルはチェックアウトしよう。
フロントのお姉さん「え…白丸さん…あと一泊ありますけど…」
わたし「いやいや、なんかの間違いですよ。わたし今日、成都行きのバス予約してるんで、ありがとうございました! では、さようなら!」
フロントのお姉さん「あ、ちょっと、待って…!」
💨
小走りでホテルを離れると、トレンディエンジェル斎藤さんからメールがきた。
斎藤さん「おはよう! 味噌子、どこへ行くんだい? 今日もパンダを探しに行くのかな? 今晩の宿代はもちろん無料だよ!」
わたし「10時に成都行きのバスに乗るんで。いろいろありがとうございました!」
斎藤さん「ああ、そのことだけど、バスはキャンセルして一日遅らせといたよ。だって味噌子はまだパンダを見つけてないじゃないか」
わたし「…」
旅行会社の特権をつかって、よくも勝手なことを。
( ◠‿◠ )
わたしがもし明日、共通テスト本番を控えていたらどうするんだ。
危篤の父に会いに行こうとしていたらどうするんだ。
( ◠‿◠ )…ええ?
斎藤さん「サフランのお茶とヤク(野牛)のジャーキーをプレゼントするから、ホテルの部屋へ戻っておいで。もちろん、そこに迎えに行ってもいいよ」
…
よし、決めた。
今すぐ、ASAP、直ちに、この街を出よう。
美しい景色、おいしい料理のことは忘れないよ。
ただ、異国の地における女ひとり旅で、タダ飯につられた、脇が甘かった自分がいけない。
…
とりあえずわたしは、バス以外での脱出方法を調べることにした。
するとその時、アタック西本似のチベット族青年からメールが入った。
西本青年「おはよう、昨日は眠れた?」
わたし「うん、本当にありがとう。今、無事ホテルを出られたよ。ところで、今日一日、あなたのタクシーを貸し切ってもいい? 調べたら、黄龍空港から上海へ飛ぶ便が今夜あって…」
西本青年「黄龍は遠いな…峠を越えないといけない。夕方からは雪になる予報だし」
わたし「…というか、社長にわたしを手助けしてるの知られたら、マズイか」
西本青年「いや、それは心配要らないよ。とりあえず、今迎えに行くから、そこで待っててね」
こうして西本青年にピックアップしてもらったわたしは、150キロ離れた黄龍空港を目指すことにした。
しかし、ここで問題なのが、当時はゼロコロナ政策の真っ只中で、飛行機に乗るには48h以内に受けたPCR検査の陰性証明が必要だっだのだ。
しかも、PCR検査ができる病院は、現在地から60キロ以上離れていたのである。
わたし「寝不足なのに、長丁場になるよ。大丈夫?」
西本青年「問題ないよ。PCRの結果が出るのは午後だから、それまでは仮眠させてもらうね」
わたし「うん、その間は適当にぷらぷらしとく。病院の周りなら、あなたの社長もいないだろうし。それにしても、あなたはどうしてそんなに親切なの?」
西本青年「困っている人に、自分ができるサポートをする、当たり前のことをしているだけだよ」
わたし「…チベット族は、チベット仏教を信仰しているの?」
西本青年「そうだね。ボン教を信仰する人たちもいるけど。あ、ちなみに、チベット族にも、いろいろ名前があるんだよ」
わたし「例えば?」
西本青年「僕らはこの一帯に住む、白馬チベット族、白馬人と呼ばれているんだよ」
わたし「白馬? あの、白馬の王子様の白馬?」
西本青年「そうだね(笑)」
いや…顔、めっちゃジェラードン西本だけど…。
でも、確かに今、わたしにとって白馬の王子様のようにありがたい存在であるのに間違いはない。
その後は、PCRの結果がなかなか出なかったり、山で大雪に見舞われたり、飛行機が飛ばなかったりいろいろあったが、日記が長くなってきたので、早送り⏩⏩
西本青年「味噌子は国籍も年齢も違うのに、なんだか他人とは思えない親しさを感じるよ」
わたし「ありがとう。わたしもあなたにどこかで会ったような気がする…(たぶんYouTubeのジェラードンチャンネル)」
西本青年「記念に一つ、プレゼントをさせてほしい」
わたし「何を? まさかヤク(野牛)のジャーキー?」
西本青年「味噌子に、チベット族としての名前を贈るよ」
わたし「え…あ、ありがとう…」
西本青年「名前は、らも」
こうしてわたしは「酒がごはんでクスリがおかず」の名言をのこした偉大な作家と同じチベット名を手に入れて、チベット族の若者・西本青年と黄龍の地で別れたのであった。
おわり🐼
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