#46 (悩み)IKEAのベッドが捨てられない
わたしはモノを捨てるのが好きだ。
住んでいる市のゴミ捨てアプリはいつもこまめにチェックし、月に一回しかない不燃物の日をいまかいまかと楽しみにしている。
大分薄情なことを言うが、もしかすると、遠方にいてたまにしか会えない友人と再会する日より、乾電池が捨てられる日の前日の方が、わたしの胸は高なっているかもしれない。
とにかく、それくらいゴミ捨てをイベントとして楽しんでいるのだ。
そしてわたしは、断捨離に目覚めた多くの人がそうであるように、持ち物が極端に少ない。
中国から本帰国した時に所持していたモノ(=全ての所有物)が、これしかないのだ。
全シーズンの衣類で、スーツケース二つ分。
靴は基本、黒いスニーカー1〜2、黒いサンダル1、黒いパンプス1しか持っていない。
靴がどんな服にでもなじむよう、おぼっちゃまくんのピンクスーツくらい徹底してカラーを黒で統一しているのだ。
ちなみに、履き潰したら新しいものを買いに行き、古いものと入れ替える仕組みである。
と言っても、わたしは(白Tしか着ないという)🍎の創業者をリスペクトしている、渋谷系スタートアップ企業で働くミニマルでイケてるクリエーターではない。
わたしが所謂ミニマリストというやつにならざるを得なくなった理由は、①単に家が狭いのと、②居住地が常に不安定で引越のリスクに晒されてるのと、③面倒くさがりなので片付けの手間を極限まで減らしたいのと、④性格的に、どこに何があるのかを完全に把握していたいからに過ぎない。
モノを買いまくる娘と元夫
しかし、娘・ベビ子とその父(元夫)はわたしの真逆をゆく。
とにかくモノを買いまくり、おまけに捨てない、片付けないのである。
何年か前も、どういう事情だったかは忘れたが、元夫が一人で住んでいた上海のマンションの引越しを代わりにやってくれと頼まれたことがあった。
そして、言われた日時に部屋へ行くと、彼が手配した引越業者も同時にやって来て、さあ、運びましょうかと部屋を開けたら、中は梱包未完了のモノモノモノで溢れた状態だったのだ。
結局、急遽別料金を支払って業者に梱包を手伝ってもらい、
「なんで折り畳み傘が二十本もあるんだよ!」
「ここは帽子屋か!!」
と、作業をしながら終始詰られることになった。
で、こちらも「知らない、この部屋の住人とわたしは無関係!」と言い返してみたのだが、
「じゃあなんでアンタは引越しを手伝ってるんだよ!」
と返されて、それ以上もう何も言えなくてしまった。
(そうだよ…今思えば、なんでわたしが別れた旦那の引越をして、おまけに人から怒られなきゃいけないんだ…🙄)
とにかく、わたしからすれば、彼らはモノを購入・所持する時に、「いつか運び出したり、処分する」という可能性を全く想定していないように見えるのである。
IKEAのベッドとわたしの格闘記・密着450日
その最たる例として、このアパートには、かつてベビ子が使っていた、IKEAのベッドがある。
これは、ベビ子が高校進学に際して日本に帰国した時に、元夫が彼女のために購入して組み立てたものだ。
ロフト式のベッドで、ベッドの下が一面勉強机になっていて、省スペースを意識した作りだ。
しかし、残念なことにこのアパートは採光に問題があり、ベッド下の机スペースは空海が悟りを開いたという室戸岬の洞窟(御蔵洞)なみに暗いため、ベビ子がここで勉強している姿というのは、彼女の高校生活中ついぞ見られなかった。
そしてこのベッドというのが、やたらデカいのである。
(※六畳間に占める割合は、およそ4割)
ベッドの下には前述の使われない机があるため、部屋のXY面だけでなく、XZ面、YZ面も激しく占領されている。
なので、今この部屋を使用しているわたしというのは、実質3.6畳間で生活しているようなものだ。
(※部屋は三室あるが、クーラーの効き具合からこの部屋を使用している)
ベッドを見上げて、わたしは思う。
自分だったら、まずこのベッドを選ばないだろうと。
IKEAのベッドが悪いのではなく、住環境がこのベッドを受け入れるのに適していないのだ。
例えば、いくらペット可のマンションと言われても、まさか六畳のワンルームでチベタンマスティフは飼わないだろう。
飼い主・犬、双方が不幸だ。
それにだ。このベッドを買う時、ベビ子がいつかこの家を出て行くことはわかっていたし、そもそもが借家で、わたしと母もいつまでここにいるかわからない。
わたしは先々の引越しや処分が想定される時、組み立て/解体/運び出しが大変なものというのは、極力買わないようにしているのだ。
と、元夫が選んだベッドに対して不満いっぱいだが、ベビ子は家を出た今も頻繁に帰省するし、もう暫くは残しておいてもいいのかもしれない、とも思った。
しかし、だ。同時にわたしは、この空間で快適に机仕事をするスペースを確保しないといけない。
そこで、すでに一寸の余裕もないと思われるこの部屋に、わたしは強気にも小さなコタツを置いてみたのである。
🐈 🐈 🐈
余剰スペースが皆無なので、コタツに入ると、ベッドのハシゴが背中を押してくる。
童謡の名曲「夕日が背中を押してくる」ではない。
しばらくは瞑想モードでその存在をなきものとしていたが、ある晩ついに沸き起こる怒りを抑えることができず、工具を振り上げてこのハシゴを外してしまった。
また、ハシゴを繋いでいたベッド側の接続パーツがどうにもこうにも取り外せず、先端が鋭利であるため頭を打ったら大変だと思い、ペンチで強引に折り曲げるという凶行に走ったのだ。
こうして、この部屋にはハシゴのないロフトベッドが誕生したのである。
しかし、ロフトベッドにあるべきハシゴがなかろうが、わたしは1ミリも困らなかった。
もともと、天井スレスレで寝る圧迫感に耐えられず、このベッドは使わずに、床に布団を敷いて寝ていたからだ。
そして、ベビ子には、横からよじ登ってベッドに上がってもらえば良いだけ、と考えたのだ。
彼女は小さい頃、木登り好きのお転婆な子どもだったのだから。
ベビ子「母さん、ハシゴなくてベッドに上がれない」
わたし「申年生まれでしょ。気合いだよ気合い」
ベビ子「めちゃめちゃ揺れて無理。やってみ」
わたし「…(試してみる)ウワアアア…(落ちそうになる)」
確かに、ベッドが揺れて無理だった。
誰がこんな雑な仕事をしたのだ。
…。
ベビ子も使えないとなれば、もう完全に用済みだ。
時は来た。ベッドごとぶ⚪︎壊してやる。🔨
…。
いや、パーツが重くてデカくて、しかも構造複雑で、無理。
ベッドが壊れる前にこのボロいアパートが倒壊しかねない。
じゃあ丸ごと運び出す?
部屋の扉の大きさは80cm✖️180cm。
ベッドの大きさは95cm✖️180cm✖️210cm。
…。
カチカチカチ…💻 (解体業者検索中)
業者に頼むと2万円かあ…。
…うん、保留で。
(一応、処分は年内目標とする)
こうして今日もわたしは、捨てられない・使われないIKEAのベッドに部屋を4割占領されて、肩身の狭い生活を強いられて(?)いる。
おわり
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